シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

お酒の失敗じゃない。あなたの失敗です。

北方領土「戦争で取り戻すの賛成か」議員発言に波紋

北方四島国後島へのビザなし交流の訪問団に参加していた日本維新の会丸山穂高衆議院議員が「戦争で島を取り返す」という趣旨の発言をしていたことが明らかになりました。

 ビザなし交流の訪問団に同行した記者が録音した丸山議員の音声です。

 日本維新の会丸山穂高議員:「戦争でこの島を取り戻すのは賛成ですか?反対ですか?」

 元島民・大塚小彌太さん:「戦争で?」

 日本維新の会丸山穂高議員:「ロシアが混乱している時に取り返すのはOKですか?」

 元島民・大塚小彌太さん:「戦争なんて言葉は使いたくないです。使いたくない」

 日本維新の会丸山穂高議員:「でも取り返せないですよね?」

 元島民・大塚小彌太さん:「いや、戦争はすべきではない」

 日本維新の会丸山穂高議員:「戦争しないとどうしようもなくないですか?」

 元島民・大塚小彌太さん:「いや、戦争は必要ないです」

 丸山議員とやり取りをした訪問団の団長で元島民の大塚さんは、抗議の声を上げています。

 元島民・大塚小彌太さん:「私は真っ向から反対致しました。そこについては、戦争で取るとか取らないとかそんなこと私は聞いたこともありませんしね」

 丸山議員はこの発言の前に酒を飲んでいたということです。元島民らはこの発言に抗議しましたが、丸山議員は酒に酔って騒いだことについては謝罪したものの、戦争発言については「賛成か反対かを聞いただけ」としています。

http://news.livedoor.com/article/detail/16452383/

 

酔ったせいにされるのは迷惑ですね。吐いたゲロの始末はちゃんと付けてもらいましょう。

 

鉄道事業者共同でPR「暴力行為防止ポスター『お酒の失敗じゃない。あなたの失敗です。』」12月10日(月曜日)から各事業者の駅構内、列車内に掲出します!

https://www.westjr.co.jp/press/article/2018/11/page_13478.html

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それにしても、松下政経塾とか、維新の会とか、マシな奴が一人もいない(いたら教えてください、マジで)、てのは凄いな。

テンノーショー

こんな呟きを見ました(瀬川深さん経由)。

 

https://twitter.com/fcbliebe1900/status/1123169079357894656

退位する天皇陛下で好きな話は、学生時代に銀座で遊びたくて、お付きの目を巻き、友人と銀座でアップルパイと紅茶を楽しむも、実は友人が事前に侍従と相談してて、銀座の通行人は私服警官だらけ、帰ったら侍従にマジ怒られた話がローマの休日みたいで好き。退位後は皇后様とゆっくり銀ブラして欲しい。

 

これ、いい話風に語られてますが、自分だったら、この友人とやらをぶちのめして絶交ですね。微行(おしのび)といえば、黄門様やら暴れん坊将軍やら唐の玄宗など多々ありますが、自分が自分の意志で行動する=自由を謳歌している、と思ったものが、他人のお情けによる演出だったら、ふざけた話だと思うでしょう。

私はローマの休日みたいとは思いませんでした。思い出したのはジム・キャリーが主人公を演じた「トゥルーマン・ショー」です。詳しい内容は作品を見るかググってみてください。

 

トゥルーマン・ショー (字幕版)
 

 

大雑把に言ってしまえば、自分自身の人生と思っていたものが、自らは知らないまま他人が“演出”したものだとしたら、そして、その事実に気づいたらどうするか、という話です。

私は、ラストでの主人公の行動に共感します。自分でもそうするでしょう。

上記のエピソードを“いい話”と捉えるような人間ではいたくないですね。

では。

コンパクトシティに関する誤解

こんな呟きを見かけました。
 

タクラミックス
@takuramix
「老人を都会に集めれば良い」
限界集落は廃村にしてコンパクトシティ構想で…」
「人手不足なら外国人を受け入れれば…」
といった話に共通して感じるのが、
「人間を簡単に移動交換出来ると思ったら大間違いだよ(-_-;)」
って事です。
人間には意志や感情という「物」には無い面倒なもんがあるんで
16:05 - 2019年4月20日

https://twitter.com/takuramix/status/1119738941601509378
 
 
「老人を都会に集めれば良い」「限界集落は廃村にしてコンパクトシティ構想で…」とかいうけど人間を簡単に移動交換出来ると思ったら大間違い
https://togetter.com/li/1340356

なんで、この手のデマが蔓延るのかサッパリ判りません。

■藻谷浩介×清水義次 地域再生の成功学(5) ■「地方消滅」の大誤解

さらには何をトチ狂ったか、「農山村を潰して、日本全体をコンパクトシティ化していかないと、国際競争に生き残れない」などと言いだす輩まで現れて……。
清水 何ですか、それは(笑)。もう完全に認識が誤っていますね。そもそもコンパクトシティの意味がわかっていないんじゃないかな。
藻谷 そうなんです。1986年、日本で最初にコンパクトシティを提唱した佐々木誠造・前青森市長も、カンカンに怒っていました。「俺が言ったのは、中途半端な郊外地域の拡大を抑えて、農村と都心を活かそうという話なのに、なんで農村を潰すなんて方向が出てくるんだ!」って。
 コンパクトシティというのは、せいぜい500メートル四方の範囲の中にいろいろな都市機能が集積した、賑わいのあるヒューマンスケールの都心を作ろうということですよね。農地も山林もなく、かと言ってお店も出しにくい、個業の営めない都市近郊のスプロール化を止めようという問題意識です。農山村にもそれぞれコンパクトな中心集落はあっていいと思いますが、農村からの撤退などという話とは無関係です。
(デイリー新潮 2016年7月1日掲載)(強調はシートン)

 

私も過去、こんなエントリーを上げています。
 

いい加減、キチンと何が主張されているのか調べてから呟いてはどうでしょうか。
では。
 

 

ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか: 近距離移動が地方都市を活性化する
 

 

 

ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる

ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる

 

 

 

老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路 (講談社現代新書)
 

 

 

縮小都市の挑戦 (岩波新書)

縮小都市の挑戦 (岩波新書)

 

 

なぜ、安倍政権の支持率は維持されているのか?

相変わらず安倍政権の支持が保たれているようで、なかなかにゲンナリする状況です。どうやら、強固な支持層がいるようですが、なぜ、これほどに安倍政権を支持するのか?
経済政策を支持している、という話もありますが、アベノミクスの3本の矢、については当人も言及しなくなりましたし、効果があった(と言われている)のは(金融緩和による)円安誘導くらいのものでしょうか。しかし、円安誘導は建前上否定してますから、

麻生財務大臣のまだ百二十円に行っていない、円安といわれる覚えはないとの発言に関する質問主意書に対する答弁書
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon_pdf_t.nsf/html/shitsumon/pdfT/b193074.pdf/$File/b193074.pdf

アベノミクスとやらについては、何一つ成功したとは到底言えないわけです。というか、成長戦略の悉くの失敗、クールジャパンだとか原発輸出だとか石炭火力輸出促進だとか、何か成功したものってありましたっけ?

「クールジャパン」はこんなにひどいことになっていた(原野 城治) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55359

官邸主導の原発輸出、すべて頓挫 「失敗」認めない政権:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASM1K52KGM1KULFA01C.html

日立だけじゃない、逆境のインフラ輸出で生きる道
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40143760X10C19A1X11000/

加えて、現在の奴隷制度、外国人労働者受入れ制度。強者に阿り弱者に尊大な外交。社会的弱者に対する冷淡さ。大本営に見まがう政権広報。加計・森友をはじめとして政権幹部による公共資産の私物化。何一ついいところがない。

なら、韓国の要求も受け入れれば?
https://dr-seton.hatenablog.com/entry/2019/02/17/223306

毎月勤労統計だけではない、生活保護費引き下げに使われた「消費者物価指数」をめぐるもうひとつの統計疑惑
https://wezz-y.com/archives/64226

14カ月収容され、命の危機にあるクルド人男性。救急搬送を拒否した入国管理局の対応を問う
https://forbesjapan.com/articles/detail/26044

選挙に通れば「国民の代表」か 政治家が自任するなら
https://www.asahi.com/articles/ASM3C3VRXM3CULZU00C.html

「やっと常識が通用した」森友資料、隠した国の意図は?
https://www.asahi.com/articles/ASM3G4K1WM3GPTIL01K.html

菅長官再び「怪文書」認識 加計「総理のご意向」文書
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201903/CK2019030902000290.html

バカの一つ覚えで、「アベノミクスで景気回復!」とかやってますが、統計不正を考慮すると、そもそも景気回復とやらを評価してよいものか判らない。

「GDP600兆円」の大嘘。アベノミクス偽装のからくり<明石順平氏
https://hbol.jp/186420

官僚が勝手にやった、という筋書きで幕引きを図ろうとしてますが、官僚が勝手に統計不正を働いたなら、当然処罰されるべきだし、根本の問題や過去の履歴を調査し、再発防止策が必要です。それにまったく後ろ向き(というか積極的に隠そうとしているが)なのはどういうことでしょうね。自らが関与していなければ、この疑惑究明への不熱心さは説明が付かないものです*1
なのに、政権支持者は統計不正に対しても、「いつまでそんなことをやっているんだ。だから、野党は支持を増やせない」などと言い垂れる始末です*2
もう、故意に問題から目を逸らしている、としか思えません。
で、思い出したのが次のマンガです。
 
松本零士「ザ・コクピット1巻 パイロットハンター」

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いろんないい銃があっても俺には関係ないんだ。この三八式と一四年式が俺にとっては最高の銃だ。
世界一と信じているんだ…
意地でも信じているから、ここで、一人で戦争してるんだ。
もし、あんたらが外国の、もっといい銃や、いい戦車について知ってたんなら…
なんで、そんなのを相手に戦争をおっぱじめたんだ!?
いまごろこんなもんといわれても手遅れだ!!
いいか、これは、この世界でいちばんいい銃だ! いちばんすぐれた小銃なんだ!!
おれには、これしかないんだ! だから、これがいちばんいいんだ!! 

 

こういうのを認知的不協和といいます。
多大な犠牲を払ったものがムダであると認めたくない。現実を否認し、むしろ強固に支持するようになる。
例えば、体罰の被害者が体罰を肯定的に捉えるようになるとか、戦友の死を無駄死にとしたくないための戦争支持とか、大概ロクでも無いことが支持されてしまうケースが目立ちます。つまり、こう書き直せるわけです。

いろんないい政党の政策があっても俺には関係ないんだ。この安倍政権とアベノミクスが俺にとっては最高の組み合わせだ。
世界一と信じているんだ…
意地でも信じているから、ここで、一人で支持してるんだ。
もし、あんたらが他の、もっといい政党や、いい政策について知ってたんなら…
なんで、そんなのを無視して安倍政権をおっぱじめたんだ!?
いまごろこんなもんといわれても手遅れだ!!
いいか、これは、この世界でいちばんいい政権だ! いちばんすぐれた政権なんだ!!
おれには、これしかないんだ! だから、これがいちばんいいんだ!!

 

経済再生!アベノミクス!「日本を取り戻す!」と期待を掛け、6年以上も「そのうち景気は上向く。いいことがある!」と考えていれば、まあ、そういう認知的不協和状態に陥るのも判ります。とりわけ、プライドが高い人ほどそういうことになるでしょう*3

第1章 緩やかな回復が続く日本経済の現状(内閣府
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je17/h01-00.html

我が国経済は、2012年11月を底に緩やかな回復基調が続いている。

 

自らの判断が間違っていた、とは認めたくは無いですからね*4。問題は、それゆえに支持を止めることは無いだろう、ということ。何か理由があって支持しているのでは無く、支持自体が全てで理由は合わせて付けるものだからです。まあ、独裁的手法を取る指導者には大概、この手の支持者が付くようです。トランプとかプーチンとかエルドアンとかドゥテルテとか。
気の毒ではありますが、私としては地獄まで付き合いたくはありません。
では。

*1:ここは、加計・森友問題でも同様で、政権関与を否定する連中は疑惑解明の不熱心さを説明できない

*2:消費税に関しても同様ですね。消費税率アップを進めている政権に矛先を向けるのではなく、「なぜ、野党は消費税率アップに反対しないのか」みたいな意見を見かけます。野党の大半が消費税に反対または税率凍結を打ち出していることを知らないようです

*3:6年も「穏やかに回復」してたら、今頃ウハウハになりそうなもんですけどね。あまりに「穏やか」過ぎでしょ

*4:このへんは、原発支持者にも共通しますし、実際、原発支持層と安倍政権支持層はキレイに重なります

No!ナチスクリニック

ナチス、じゃなかった高須克弥氏がこんなことを呟きました。
当然ながら、多くの批判(と結構な支持)を受けまして、こんな抗議まで受けました。

https://twitter.com/AuschwitzMuseum/status/1106462599540105218

Auschwitz Memorial
アウシュビッツは世界中の人々の心に絶えず忠告する史実です。
ナチス・ドイツによって造られたその強制・絶滅収容所の史跡は、
人類史上最大の悲劇を象徴しています。 

 

で、それに対する高須氏の反論がこれでした。

https://twitter.com/katsuyatakasu/status/1106705504892383232

高須克弥
全ての歴史は検証されるべきだと思います。これが正しい科学者の姿勢だと思います。検証を禁止された段階でその歴史が都合よく歪曲されたものではないかと疑うのが罪ですか?
お答えください。

 

典型的な歴史修正主義者のセリフで、もう少しマジメにやれ、というところです。ほぼそのまま、デヴィッド・アーヴィングをなぞったような振る舞いじゃ芸がありません。なにせアーヴィングは裁判でリップシュタットに返り討ちにあったわけですから。
  
否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い (ハーパーBOOKS)

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ホロコーストを巡る歴史的裁判-『否定と肯定』原作者の歴史学者デボラ・E・リップシュタット氏と憲法学者の木村草太氏が登壇!
′′情報“も吟味する時代へ--
http://cinefil.tokyo/_ct/17128359
 

しかも、言及したのがチクロンB、これって西岡昌紀マルコポーロを廃刊に追い込んだ時の主張そのもの。パートナーの西原理恵子氏(か花田紀凱氏)に聞いてなかったのでしょうか?つまり、高須氏はアウシュビッツを捏造、と断言する割には、そうした否定論に纏わる論議すら承知していないということになります。
検証されるべき、などと言ってますが、こうした知識もないのに歴史学者が行ってきた研究の成果を無視する、というのも随分と傲慢で恥知らずな態度と言えるでしょう。検証を禁止されているのではありません。そもそも、検証に値するだけの何も持たないくせに、“異議申し立てしたい”という動機を見抜かれて批判されているのです。
 

同様に、こうした人たちは都合よく選択的懐疑主義を持ち出します。

https://twitter.com/bacchus41/status/1107110370273968129
Sin Yanagiya.(厨二女子)
アウシュヴィッツを含め
この手の話しを複雑化させるのは
“自称進歩的文化人”なんだよな。
「数字がおかしくないですか?」
に対してゼロサムの極論にして
「事実を否定するのか!」
と恫喝して異論を排除する。
「それは科学者としてどうなの?」
という話しだと思うんですが。

 

例えば、このような輩が「数字がおかしくないですか?」と主張するのは、ホロコースト南京事件従軍慰安婦問題であって、広島・長崎の原爆犠牲者数や文化大革命ポルポト政権の被害者、にそう主張することは無いわけです。
そして、検証(とやら)の基準も変わってきます。例えば、南京事件従軍慰安婦問題で「証言は証拠にならない」と一言で切って捨てますが、チベットウイグル問題ではこのような懐疑的態度を取ることはありません*1。検証事項によって基準を変えるのは到底“それは科学者としてどうなの?”という話だと思うんですが。

それにしても、歴史修正主義者の主張が消されもしないで垂れ流されるというのは、恐ろしいことです。
ツイッター社はこれに対応するべきだと思いますが。
では。

*1:チベットウイグルにおける中国の弾圧の実態は亡命者らの証言によって伝えられています

関西電力やURはそれでいいの?

クソウヨ拡散装置、「netgeek」(URLは載せません)。広告バンバン外されて消滅したのかな、と思ったら、まだ生き延びていやがった。しかも、ちゃんと広告が出ているし。

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まだnetgeekに出稿を認めているところがある、ってのはゲンナリするけど、関西電力とかURはこれでいいの?netgeekに広告を出すってことは、ヘイトに加担するってことだから。

ブラジルが売られる

ブラジル新政権民営化を加速 ボルソナロ大統領
サンパウロ=外山尚之】1月に発足したブラジルのボルソナロ政権が公営部門の民営化を推進する。第1弾として18日、国内12空港の民営化手続きを進めると発表した。事業規模は35億レアル(約1千億円)以上の見通し。ブラジルでは財政難から公営インフラの投資が滞り、劣化が進む。財政支出を抑え、設備、サービスの質を上げられるとして港湾など幅広い分野にも導入する。
ボルソナロ大統領は北東部、中部、南部の地方空港の民営化案を発表した。ブラジルではビーチが近いレシフェ空港、ボリビア国境近くのクイアバ空港など乗降客が多い空港がある一方、乗降客が少なく採算性が悪い空港が比較的近い地域に立地する。国土が広く、飛行機が市民の“足”として定着しているためで、空港運営が難しい理由となっている。
民営化案では、採算性の良い空港と悪い空港を地域別にまとめて運営させ、効率を上げる。受託した企業は乗降客が少ない空港にも設備投資をしやすくなり、インフラの劣化を防ぎやすくなる。
入札日は3月中旬としており、7月以降に契約を結ぶという。ボルソナロ氏は就任間際に素早く民営化手続きを進めることで、改革派をアピールする。1月には自身のツイッターで4つの港湾を民営化することも打ち出している。老朽化が進みつつある高速道路も候補になりそうだ。
ブラジルはこれまでも空港を民営化してきたが、12もの空港を一気に民営化するのは初めて。同国では独フラポートやシンガポールチャンギ空港の運営会社などが空港運営に乗り出しており、これらの企業が入札に参加するかが注目される。港湾、配送電網などで買収攻勢をかけている中国企業の可能性もある。
民営化の旗と振るのは経済学者出身のゲジス経財相だ。ノーベル経済学賞を受賞した米経済学者のミルトン・フリードマン氏の下で学んだ同氏は、国営企業の民営化、年金支給額の抑制による財政再建などを強く主張する。
20日には年金支給開始年齢の引き上げを柱とする年金改革法案が議会に提出された。ボルソナロ大統領、ゲジス経財相の改革は着実に進んでおり、民営化も急速に広まるとみられる。
今後、政権が民営化に本気で取り組むのかどうかをはかる目安となるのが、前テメル政権下で頓挫した案件だ。前政権は2017年8月、中南米最大の国営電力エレトロブラス、ブラジルで2番目に利用客が多いサンパウロコンゴニャス空港などを候補とする民営化案を発表したが、実現しなかった。
公営部門が肥大化したブラジルでは収益性が高い案件は労働組合などをはじめとする既得権益者が多く、民営化に様々な勢力が抵抗する。こうした難しい案件を実行できるかどうかで、企業や投資家の評価は変わりそうだ。

 

財政難 投資は限界 インフラ崩壊に危機感
サンパウロ=外山尚之】 ブラジルでは財政難からインフラ投資が滞り、トラブルが相次いでいる。高速道路の橋ではヒビが見つかり、国立博物館では火災が起きた。きちんとメンテナンスしていれば防げたとみられ、「インフラの崩壊」と嘆く国民も多い。財政難の原因は2016年のリオデジャネイロ五輪の支出、前の左派政権のばらまきなどが指摘され、立て直しが急務だ。
経済協力開発機構OECD)の調査では00年から17年までの平均で、ブラジルの国内総生産GDP)における公共投資額の比率は1.92%と、OECD加盟国平均の3.51%を大きく下回る。数少ない公共事業費はサッカーW杯やリオ五輪の整備に回され、基礎インフラが後回しにされてきた。50歳代からもらえる年金制度など手厚い社会福祉も財政悪化の一因。民間シンクタンク、ジェトリオ・バルガス財団のブラジル経済研究所のマノエル・ピレス氏は「ブラジルの財政は社会福祉により圧迫されており、連邦政府・州政府とも公共投資に十分な予算を振り向けていない」と分析する。
民営化に対するボルソナロ政権の期待は大きい。しかし、民間の資金とノウハウを頼りにして、財政再建を進めないままでは公共財産を切り売りしているだけだとの批判は免れない。年金改革案をはじめ、抜本的な構造改革ができるかどうかがカギと言えるだろう
日経産業新聞 19年2月27日)

 

スゴイですね。日経新聞社、未だに新自由主義ミルトン・フリードマンの亡霊のような主張をダラダラ連ねる特派員を派遣するなんて。しかも、そのひどい主張を記事にするという大惨事。
ボルソナロ大統領といえば「ブラジルのトランプ」と異名を取り 実際にトランプ氏と仲が良いそうで、旧軍事政権下の人権侵害すら無視するどころか称揚するクソのようなヤツですが*1、そうした問題は見事にスルーし、公共財産の売却を進める態度を褒めそやす始末。
どっかでみたような話でしょう?ミルトン・フリードマンは教鞭を取ったシカゴ大学において、極端なほどの古典的自由主義新自由主義)を、特に中南米富裕層の留学生に振りまきました。通称シカゴボーイズ。その名はチリのピノチェト政権における新自由主義の実験で知れ渡りました。
 
ミッシング [DVD]

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戒厳令下チリ潜入記 [VHS]

戒厳令下チリ潜入記 [VHS]

 
民営化(=公共財産の私物化)と緊縮財政は、チリだけでなく、それを真似たイギリス、アメリカを始めとして世界中で流行しましたが、大体、同じような結果を招いています。大失敗だった、ということ。

 

チャヴ 弱者を敵視する社会

チャヴ 弱者を敵視する社会

 
つまり、緊縮財政による経済停滞と、一般市民の窮乏化と一部富裕層の富の膨張、つまり格差の増大です。日本では現在、大っぴらに緊縮財政が素晴らしい、というバカは減りましたが、巧みに隠ぺいしながら進行中の事態を、堤未果さんは「日本が売られる」と喝破しました。

 

日本が売られる (幻冬舎新書)

日本が売られる (幻冬舎新書)

 
ブラジルでは、それが大っぴらに行われているわけですね。
先ごろ話題になった「ファクトフルネス」でもちょっと触れていますが、ブラジルでの富の偏在はひどいものです。

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

このクソのような特派員の記事とは異なり、本当に問題なのはこうした富裕層に適切な課税が出来ないことです。彼らのような富裕層およびそれが保有するコングロマリットこそが真の意味での「既得権益者」なのですが、労働組合を真っ先に既得権益者、に挙げる新聞記者。もう、新聞記者などではなくて、富裕層のケツ舐めでしかありませんね。

 

エスタブリッシュメント 彼らはこうして富と権力を独占する

エスタブリッシュメント 彼らはこうして富と権力を独占する

 

 

今後ブラジル(そして、同様に公共財産が売られる日本)がどうなるかですが、おそらくは経済の縮小は避けられず、中間層が減り、貧困層が増え、人種問題*2も併せて社会不安が募ることになるでしょう。

 

シティ・オブ・ゴッド [Blu-ray]

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その動揺をおそらくは、強圧的に、かつての軍事政権そのままの態度で、抑え込もうとするでしょう。
中南米の特派員というのはどいつもこいつも「シカゴボーイズ」的な態度が気になります。朝日新聞の岡田玄やその前の特派員の田村剛などもひどいものです。
彼らがネグっていることですが、アルゼンチンでは現在、緊縮王IMFに押し付けられた緊縮財政の真っ最中。なのに、政策金利は一時70%、現在でも40%以上、というそら恐ろしい状況です。
 
為替とインフレ率、安定的に推移との見方増える(アルゼンチン)

想像できますか?銀行金利が40%以上で、財政支出が極端に絞られている社会を。おそらく、一般人や中小企業などは資金確保すらままならないでしょう。考えるだけでゾッとします。ですが、そんなアルゼンチンの情報は朝日や日経の紙面には載らないのです。左派政権の時は、さんざん攻撃対象として取り上げていたのに。
ベネズエラもきっとマドゥロ政権*3が倒れ、そして富裕層が推す政権に代われば、ベネズエラ貧困層の話はおくびにも出なくなるでしょうね。今度はボリビアかメキシコあたりが標的になるでしょうか。

 

金で買えるアメリカ民主主義 (角川文庫)

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いい加減、世界中、真っ当な政治を行なうべきなのです。
富裕層から富を取り返して、貧困に苦しむ人々に再分配する。そして、社会福祉や教育、医療に潤沢な予算を付け、安心できる社会を作ること*4。それが今一番必要なことじゃないでしょうか。
では。

*1:銃規制も緩和したそうですし、貧困層への蔑視的態度も酷いものです

*2:ブラジルでは、先住民やアフリカ系、その混血の人々の多くが貧困層です。ヨーロッパ系移民との経済格差は大きいですが、ヨーロッパ系も大半は豊かというほどではありません。よって、今回の選挙に見るような貧困層を突き放すような主張が受けたのです。これは、中南米の各地で見られる構図です

*3:マドゥロ政権を独裁として非難する米トランプ政権ですが、もっと大っぴらに独裁を布いているサウジアラビア等は擁護するわけですから、問題視しているのは独裁でも民衆弾圧でも無い

*4:アメリカではバーニー・サンダースエリザベス・ウォーレン、アレクサンドラ・オカシオ・コルテス、ベト・オルークら、イギリスならジェレミー・コービンら、フランスならメランショに期待しています。日本ではそれを主張しているのが共産党立憲民主党でしょうか