シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

富士山静岡空港問題 その2


一昨日の続き

防災船「希望」、廃船・解体へ 知事表明 売却交渉を断念
石川嘉延知事は7日の定例会見で、県のテクノスーパーライナー(TSL)防災船「希望」について、「有効活用を模索してきたが、結果的に利用、転用はいずれも結論に至るところまでいかなかった」とした上で、「今後は、廃船・解体を中心に考えざるを得ない。製造した三菱重工業とも廃船・解体に向けて、条件の詰めをすることで合意した」と述べ、廃船、解体に向けた手続きを進めていく方針を示した。
具体的な処分計画を二ヶ月を目途に策定したいとし、廃船・解体の費用については「三菱重工業側からの提示をうのみにすれば、最大で約八億円程度まで掛かる可能性はある。しかし、必ずしもそのまま受け入れられる話ではないので、これから交渉を進めたい」と述べた。
結論を出す時期が延びたことについては「フェリーとして使えないかとの問い合わせが二、三件、国外への転用の照会、引き合いなども二、三件あった」とし、各方面と売却交渉などを精力的に行ってきた経過を説明した。
「希望」は平成八年に東海地震に備えた県の防災船として改造費を含め二十二億円で購入。清水港と下田港を結ぶカーフェリーとしても運行させ、年間経費九億円を費やした。今年三月に役割を負え、現在は横浜港に係留されている。

上は朝日新聞に掲載されていた記事(掲載日時は失念)。防災船「きぼう」って一体なんだったのだろうか、という疑問は、割と県民の多くにあるのでは無いだろうか。しかし、この防災船「きぼう」が静岡空港問題と関係がある、と聞いたらどう思うだろう。


元々、テクノスーパーライナー(TSL)は旧運輸省が高速貨客輸送船として研究開発してきたものだ。強力なエンジンを積み、ウォータージェット方式で浮上状態で航行し、航行スピードは90km/hに達する。しかし、燃料代や運用管理費が嵩みすぎ、実用化には至らなかった。飛行機よりは遅いし、(一般的な)船よりは高すぎた、実に中途半端だったわけだ。余談ながら、国のプロジェクトにはこういうのが実に多い。「シグマ」とか「第五世代」とか「ムーンライト」や「サンシャイン」など、これらの名前を聞くと旧通産省官僚はイヤな顔をするという。


その実験船が「きぼう」の前身であり、計画が終了してどこにも引き取り手の無かった船を静岡県が(有償)で引き取ったわけだ。なぜ、静岡県はTSLを引き取ったのだろうか。建前は防災船として利用するためである。
しかし、これにはおかしな点が幾つもある。まず、TSLはその構造上入港できる港が限られる。浅かったり小さすぎる港には入港できない。もちろん、砂浜に上陸など全く出来ない。さらに搭載量が小さすぎる。物資や人を大量に運ぶことなど出来ない。
また、地震津波が起きた際には海上に大量の流出物が出ることが予想される。しかし、ウォータージェットを利用するTSLはゴミが大量に漂う水域に進入することが出来ないのだ。操船も難しく、余震や津波の名残のある状態では接岸が出来ない。少しでも荒天になると欠航してしまう「きぼう」はおなじみだったと思う。つまり、防災用としてはまったく不向きなのだ。防災用として利用する、というのは口実に過ぎなくて「船を引き取る」事自体に意味があったとしか思えない。その真の目的こそが静岡空港と考えられるのだ。どういう事か。


まず、以下の文を読んで頂こう。

静岡県は躊躇する運輸省を必死に口説き落とし、九十六年七月二六日に空港設置許可を手に入れた。決め手の一つとなったのが、約一ヶ月前に霞ヶ関で開かれた石川知事と運輸省航空局長のトップ会談だ。その場で知事は「未同意の地権者はあとわずか。不退転で決意で挑む(原文ママ)」と詰め寄った。
静岡県は大丈夫か? 水野誠一 野草社(上記文は相川俊英


この一文は運輸省が渋っていた空港設置許可を認可した時の状況説明だ。もともと乗り気でなかった空港認可を出したのは「不退転の決意」だけだっただろうか。


空港認可が下りたのは96年のこと。同じ年に静岡県運輸省からTSLを引き取っている。TSLは運輸省にとってお荷物であったから、静岡県にはそのTSLを引き取ってくれた恩があったわけだ。つまり、空港認可とTSLはバーターされたのではないだろうか。
奇しくも、国土交通省が土地強制収用を認めたのが去年(05年)。同年には静岡県は「きぼう」を防災船としての利用をやめる、と決定。フェリー利用もやめた。あまりにもリンクしすぎているのだ。


防災船「きぼう」に注ぎ込まれた額は100億をゆうに超える。廃船にするならさらに支出が増える。これらはもちろん空港予算としては計算に含まれない。おそらく、このような形の予算の使われ方は多々あるのだろう。どのような使途があるのか知るよしもない。しかし、きちんとした予算利用がされれば、利用価値の高い防災船が手に入っただろうし、空港の設置許可が下りることもなかった。


静岡県は本当に大丈夫だろうか。

静岡県は大丈夫か?―静岡空港は東海地震は浜岡原発は太田川ダムは財政再建は情報公開は

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追記:写真は一昨日の写真の飛行機を下から見たところ