トンデモさんいらっしゃい。本編
前日のエントリーで予告したとおり、「太陽光励起レーザーを用いた新しいエネルギーサイクル」について述べる。
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20060920#1158741191
この計画を簡単に説明すれば、太陽エネルギーでマグネシウムを還元し、そのマグネシウムで水素発生させ、その水素を利用するというものだ。つまり、マグネシウムは正確には燃料ではなく、媒体に過ぎない。太陽エネルギーを水素へ変える手段として、(太陽光励起)レーザーやマグネシウムが登場するわけだ。だから、問題は太陽光エネルギー → 利用エネルギーの効率を比較してやればよい。
まず、レーザーというのが(発振)効率が低い事は押さえる必要がある。レーザーの投入電力に対する発振出力は最大でも数%にすぎない。以前、YAGレーザーを実験で利用していたことがあったが、200v、20A(4kw)で連続発振時の光出力は10wにも達しなかった。効率は0.25%である。半導体レーザーは多少効率が良いが、同じ半導体よりなるLEDの発光効率でさえ現状では10%以下(40lm/w/635lm/w)である。つまり、太陽光のエネルギーのうち、1%以上の効率を得ることはまず出来ない。そのレーザー光で酸化マグネシウム(MgO)を還元するのだが、熱による還元では10%以上の効率を得ることは難しいだろう。最後にMgを水と反応させる時の効率と発生した水素を利用する効率を併せ、全効率を合わせても、0.1%以下、である。
一方、太陽電池の効率は一般に12〜14%、(二次電池による)蓄電効率は10%程度なので利用効率は1%強である。もちろん、直接利用できれば10%以上である。
単純な見積もりでも開発するには問題がありすぎることがわかる。もちろん個別の研究を行う事はまったく問題はない。太陽光によるレーザー励起だろうと、レーザーによるMgOの直接還元だろうと研究としては構わないだろう。
しかし、描いている計画自体は立案段階で意義の薄いものである。なぜ、このような計画が進められているのかまったく理解できない。