シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

「格差」の原子力 2 追記

なんか、TBも、コメントも、はてブコメントも、面白いのをもらったので、ちょいと付け加える。
そもそも、

なんだ。ただのビリーバーかぁ。どんな知人からなにを聞かされているのか知らんが。『原発がどんなものか知ってほしい』が出てくるとはがっかり。

とか書かれると、吹き出してしまう。自分の文のどこをどう読んだら、平井氏の文を信じ込んでいるように思えるんだろうか。脚注でわざわざ

これは、別に平井さんの言葉が全て正しい事を意味しない。

まで書いてあるのに。コメントして頂いて申し訳ないが、平井氏の文が正しいかどうかは、エントリーの内容には関係がない。
自分が書きたかったのは、「平井氏の言葉を否定したい連中が持ち出す証拠、とやらも正しいのか?」ということ。別に、平井氏の文を丁寧に読み込んで、自力で反証していくんなら問題は無いが、
「これ、読んでみそ」
とか、「根拠」を挙げても、検証になってはいないだろう、という事だ。極端な話、平井氏の文章が全て間違っていた、としても関係がない。間違いに対する反論は、その根拠を明示した上でなければ意味が無い。その根拠の妥当性は確認したのか、単にそれだけである。


で、自分は「Re:原発がどんなものか知ってほしい」を読んで、その検証を始めたら、「大量のテキスト」といわれていた件の文章を超えるツッコミが出来てしまった。そのほとんどが、「食い違い」に関わる事であり、その食い違いは正社員と原発労働者の立場の差、「格差」に由来すると考えられたので、その中の一部を指摘したわけだ。


平井さんの文章を読めば、その主張が文末に載せた、「原発ジプシー」や「闇に消される原発被曝者」、「原発被曝日記」などと内容が近い、というかそっくりそのまま、と云って良いのに気付く。
可能性としては、
・平井さんが同様の体験をした
・平井さんが、その立場故に「原発労働者」の実状を聞く事が出来た
・平井さんが、上記ルポに目を通す事があった。
があるだろう。下二つは自己の体験を語る、と云う点では問題がある、が、その言葉の中にある「格差」の問題に触れないのは、明らかにアンフェアである。


反・原発反対派の問題点は、原発反対派が「科学知識不足」で、「偏見」と「思いこみ」だけで、反対しており、「核アレルギー」にかぶれている、と考えている事にある。
このへんは、「捕鯨論」ともかぶるのだが、自分も含め多くの科学者が原子力推進には反対しているのだ*1


捕鯨論考
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20060516/1147771687


世界の主要の環境団体も原子力には反対の立場を取っている。決して、被爆国ゆえの「核アレルギー」によるモノではない。
例えば、原子力資料情報室の前代表、故高木仁三郎氏は原子力工学者だった。環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏も京都大学原子核工学科出だ。槌田敦氏も*2小出裕章氏も物理学者である。池内了氏については、既に述べたとおり。


原子力資料情報室
http://cnic.jp/


環境エネルギー政策研究所
http://www.isep.or.jp/


それから、

被曝線量基準云々にしても知らないなら調べろよ。

って、「原子力発電施設等放射能業務従事者に係る疫学的調査に関する質問主意書」を紹介した意味が判らなかったんだろうな。
現在、被曝線量評価では疫学的調査結果が盛り込まれつつも、
・業界や国の恣意的な調査に委ねられており、公正な評価とは云えない
・そもそも「内部被曝」は定量評価が困難
という問題点を抱えている。


α線内部被曝線量の評価方法についてのメモ
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No99/koide041215a.pdf


にも関わらず、「○○mSv以下だから、問題が無い」と述べて片づけてしまう事はおかしくないか?という事。
被曝線量基準自体もおかしいのじゃないか、と云ってる者に対して、「調べろよ」とは、どういうこっちゃ。


以前コメント欄で紹介頂いた「21世紀の科学技術と研究者の社会的責任」で、原発が古臭い事は示せてしまうのだが、一応次回「時代遅れの原子力」をエントリーいたします。

*1:核兵器廃絶に留まる場合もあるが

*2:氏は、反原発の立場から、温暖化はウソだ、と主張している。これも問題ではあるが。