シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

もちっと物理屋らしい話を

物理屋として、大学に入った当初は「素粒子論やりてぇ」などと思っていた。しかし、自らの数学的才能の無さ、に暗然とし、しかも大学での数学が、実際の物理における応用と絡めて話さないため、後々になって、「あ、あん時のあれが、ここで使うのか」と後悔する事しきり。改めて講義ノートを見返したり、参考書を買ったりして付いていくが、2年くらいで「素粒子論」とか「大統一理論」だとかに進むのは諦めてしまった。
それでも、物理学実験は面白くて、どちらかといえば、実験系の方が面白いな、と、しかも「固体物理」の方が性に合っていた。そんなこんなで固体物理の実験屋になり、今日に至る。
でも、南部先生の唱えた「自発的対称性の破れ」というのは、自分たちの研究分野に関しても大きな意味があって、それが自分の研究テーマの要であったりしたこともある。意外なところで繋がっているものだ。


自分が考えるに、素粒子論など「物質の根源、宇宙の始まり」に迫るような研究というのは、「物事を単純化する営み」である。天上のルールを求め、「調和(コスモス)」に寄り添う学問だ。


対して、固体物理の根本は単純な筈の原子に有りながら、それがマスになることで驚くほどの多様性を持つ。素粒子論に対して「物事を複雑なものとして捉える営み」であり、地上のルールを求め、「混沌(ケイオス)」に寄り添う学問であると思う。


アテネの学堂、という絵がある。


アテネの学堂
http://www.digistats.net/museum/2004/09/raphael1509-10.htm


天を指すプラトンに対し、アリストテレスは地を指し示す。

イデアは天にあり」とするプラトンに対し、「イデアは地に宿す」と応えるアリストテレス


自分は、地に宿す真理を探していこうと思う。森を彷徨い歩き、森に棲む多くの木や花や虫や鳥に獣と石、至る処にあるそれらに興味を向けていこうと思う。