アホかー!
まだ、この話続いていたのか!
世界は、石油文明からマグネシウム文明へ(1)
http://wiredvision.jp/blog/yamaji/200907/200907031401.html
化石燃料の枯渇が迫っているが、自然エネルギーだけで今の世界経済を支えることはできない。理想のエネルギーと言われる核融合への道もまだ遠い……。だが今、エネルギーや資源の問題を一挙に解決するかもしれない研究が進んでいる。その鍵はマグネシウム。海水に無尽蔵に含まれるマグネシウムを取り出し、エネルギー源として利用。生じた酸化マグネシウムは、太陽光レーザーを使ってマグネシウムに精錬する。この壮大な計画に取り組むのが、東京工業大学の矢部孝教授である。
もう、3年も前に批判しているのに、まだ性懲りもなく生き延びてやがった。
トンデモさんいらっしゃい。本編
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20060921/1158827415
この計画を簡単に説明すれば、太陽エネルギーでマグネシウムを還元し、そのマグネシウムで水素発生させ、その水素を利用するというものだ。つまり、マグネシウムは正確には燃料ではなく、媒体に過ぎない。太陽エネルギーを水素へ変える手段として、(太陽光励起)レーザーやマグネシウムが登場するわけだ。(略)
状況も相変わらず進歩無し。アホな話をまだしてるよ。
とりあえず、本文に若干突っ込みをしておく。
では、なぜマグネシウムが一般的なエネルギー源として使われていないかといえば、マグネシウムを作るのに莫大なエネルギーをかけなければならないからです。触媒を使う今までの技術だと、マグネシウム1トンを作るために石炭が10トンも必要になります。
どういうつもりで書いているのか判らないけど、マグネシウム還元には、一般に「電解精錬法」が使われる。触媒って、何のことだ?
しかも、直接還元の方が遙かに効率悪いわい。
日本のある会社はこれをさらに改良し、2005年には効率が42%のレーザー媒質を作ることに成功しました。太陽光をこのレーザー媒質に当てると、レーザー光線が出ます。
これに関しては実物も論文も見たわけじゃないので何とも云えないが、レーザー(固体レーザー)の原理を考えた場合、効率が42%、ってのがまずありえない。
レーザーの効率ってのは反転分布状態で決まってくるけど、自然放出による損失を考えたら太陽光によるポンピングを利用した固体レーザー、で42%はどうやったって無理だ。
はい。湿度のバランスをうまく調整することで、エネルギーをほとんど使うことなく淡水を作ることができます。
現在の逆浸透膜方式は、装置コストを1とすると、20年使った場合のランニングコストは20。
これに対して、私たちの装置は装置自体のコストも1桁安いですし、エネルギーもほとんど必要としません。スピードも速く、1台当たり1日10トンの淡水を作れます。2Lのペットボトルなら5000本分です。
このへんも、どう考えても怪しい。
現在、逆浸透膜法式より省エネルギーで淡水化(=塩類取り出し)が可能な方式、など無い。
というか、「湿度のバランス」ってのは、それ自体エネルギーを使うはずだが。
霧化して水分を優先的に蒸発させる、という研究を見たことがあるが、それにしたって、再凝結のエネルギーを考えたら逆浸透膜より効率的ではない。
淡水を取ったら、あとには塩(塩化ナトリウム)と、にがり(塩化マグネシウム)が残ります。塩とにがりを分離するのは、エネルギーが不要な昔ながらの方法を使います。
塩化ナトリウムと塩化マグネシウムの混合物に、上から少し水を掛けると、ぽたぽたと液体がしたたってくるのですが、これがほとんど塩化マグネシウムなのです。塩化マグネシウムは塩化ナトリウムより水に溶けやすく、この性質を利用するだけで簡単に塩化マグネシウムだけを取り出せます。
水溶液から再分離するのだってエネルギーは必要だし、大体、海水中に含まれる成分はそれだけじゃないぜ?
というか、このマグネシウムエネルギー話の原理だけ見ていると、何でナトリウムやカリウム、カルシウムの方を使わないのかさっぱりわからない。
まず、レーザー媒質に混ぜるクロムの割合を増やします。理論的には、これだけで変換効率を3倍にできます。
効率はクロムイオン濃度で決まるような単純な話か?普通はレーザー媒体結晶の欠陥とか非発光遷移過程を減らすことじゃないの?
また、太陽光励起レーザーではこういうプラスチックレンズを使っているのですが、この設計を改良します。
──えっ、こんなプラスチックレンズなんですか?
はい、これのサイズを大きくしたものを使っています。金型でどんどん作れますから、大量生産すれば製造コストはタダみたいなものですよ。
プラ金型屋が聞いたら、泣いて怒りそうだな。4平米よりでかいプラのフレネルレンズ、って結構作るのに技術いるぜ?
だからこそ、太陽光励起レーザーの装置をたくさん作るのです。何百台という装置を並べてレーザーを作り、各装置から光ファイバーで精錬所に伝えます。酸化マグネシウムにレーザーが当たると、0コンマ数秒でマグネシウムを精錬できます。
だから、何でわざわざ海水中の「塩化マグネシウム」を酸化する必要がある?塩化物の方がまだ扱い易いはずなのに。しかも、ポイントで超高温になるから大丈夫、っていいながら、それを集めて量を稼ぐなら、やっぱりそれに相応する熱が貯まるはずなんだけどな。
何かもう、さっぱり判らん。本気でやっているのか、単にレーザーの研究費集めのハッタリなのか。
ハッタリレベルの研究は数多く見てきているから、別に驚きもしないけど。
で、ちょっとだけ真面目な話を。
マグネシウムの省エネルギー精錬を考えるなら、酸化マグネシウムまたは塩化マグネシウムを現在より低温、可能なら常温で“溶かす”「非水系イオン液体」を利用する手法を考案する方が効果的だ。このイオン液体って、塩なのに「液体」という面白い物質。
イオン液体
http://www.tuat.ac.jp/~ohno/lab/ionic_liquid/IL.html
この液体中には水溶液中に塩(しお)を溶かすように、塩(えん)を溶かす事が出来る。この液体はLi-イオン電池などにも利用されており、燃料電池の電解質としても期待されている。
もしかしたら、金属塩を室温でイオン液体に溶かして電解精錬、なんて事が可能かもしれない。
参考:
中国工業用水向け「超低圧・低汚染逆浸透膜エレメント」を開発
http://www.nitto.co.jp/dpage/47.html
東レの逆浸透膜、アラビア湾沿岸の海水淡水化プラントで相次いで受注
http://www.toray.co.jp/news/water/nr080918.html
東京化成工業株式会社 イオン液体
http://www.tokyokasei.co.jp/product/synthetic-chem/S019.shtml
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