ポニョの舞台・鞆の浦 工事差し止め判決 景観保護優先
http://www.asahi.com/national/update/1001/OSK200910010026.html
江戸期の港と町並みが一体で残り、宮崎駿(はやお)監督のアニメ映画「崖(がけ)の上のポニョ」の舞台として全国的な注目を集めた景勝地「鞆(とも)の浦」(広島県福山市)で県と市が進める埋め立て・架橋計画をめぐり、地元住民らが県を相手取り、知事が埋め立て免許を県と市に交付しないよう求めた訴訟の判決が1日、広島地裁で言い渡された。能勢顕男(あきお)裁判長は住民側の請求を全面的に認め、知事に埋め立て免許の交付をしないよう命じた。
いやー、素晴らしい判決が下りましたね。このような判決を下す判事には、従来報復人事による嫌がらせが行われてきたわけですけど、政権交代がこのような判決を下すことを可能としたならばいいことなのかも知れません。
参考:法服の枷
http://www.ctv.co.jp/realtime/20090529/
もちろん、鞆の浦に関して言えば、自公政権下でも事実上のストップが掛かっていましたから、関係ない可能性もありますけど。
さて、この判決を景観保護を開発に優先させたもの、と捉える事には異論があります。
そもそも、反対派は埋め立て・架橋の代案として山側にトンネルを設ける事を提案していたからなんですね。
鞆の浦埋立架橋問題。(うさたろう日記 はてな版。)
http://d.hatena.ne.jp/usataro/20090212/p1
市や県が主張するような交通問題に関してはトンネルで充分対応できる訳です。なぜ、市や県が埋め立てと架橋に固執したのか?ま、その点については詮索は止めましょう。
ただ、この問題は先日取り上げた「道路整備事業の大罪」でも取り上げられていました。
鞆の浦は面白いことに「自動車交通が不便」であるがゆえに、自動車によって失われた生活が保たれているそうです。
鞆の浦はヒューマンスケールの街並みを維持してきたためなのか、実際の生活も車無しで行えるそうである。確かに、多くの地方ではすでに消滅したような商店が、まだこの街には多く存在している。しかも、バスも15分に一本くらいのペースで走っている。自動車に依存しないから、公共交通のサービスや個人商店が維持できるのだ。街中でも、多くの高齢者や子供が歩いているのを見かけた。自動車に魂を売っていないコミュニティにだけ見られる街の光景が、この鞆の浦では見られる。このかけがえのない空間を自動車に明け渡す必然性はまったく感じられない。鞆の浦は自動車が幅を利かせているほかの地方に比べて、遅れているのではなく、逆に進んでいるのである。
(道路整備事業の大罪 道路は地方を救えない より引用)
(強調はシートン)
都会の人には判らないかも知れませんが、このスケールの街でバスが15分に一本というのは凄いことなんです。自分の地域では地域全体で40万弱ほどの人口がありますが、バス路線はほとんど崩壊しています。1時間に一本あればいい方で、大方は撤退して行政による「自主運行バス」が走ってますが、利用客が少なく、しょっちゅう廃路線の話が出ます。車社会は一見豊かに思えるけど、車が利用出来ない人間にとっては極めて不便なところなのです。
道路が出来る、延ばす、拡げる=自動車交通が増える≒便利になる、豊かになる という発想自体、もう止めませんか?何回も言ってますけど、「道路を拡張して栄えた街など無い」んです。前掲書には過疎対策として道路整備を進めた結果、「ストロー効果」によってさらに過疎化が進んだ事例が載せられています。なぜ、未だに「道路神話」が幅を利かせているのかサッパリ理解出来ません。
鞆の浦の問題は、決して歴史的遺構や景観保存といった問題だけではありません。街を人の手に取り戻せるかどうか、という問題なんです。それ以上に、自動車を便利さの象徴とする発想から転換出来るか、というところでもあります。
埋め立てと架橋が取りやめになった後、鞆の浦の人々はどんな街づくりを目指すのでしょうね。もし、彼らが街の中から車を排除する=車に頼らない街を目指すのなら、それは地方再生の手掛かりとなると思うのです。楽しみです。
参考
鞆の浦 支援の会
http://tomonoura-net.jp/
鞆まちづくり工房
http://www.vesta.dti.ne.jp/~npo-tomo/top/index.html
鞆の浦の世界遺産登録を実現する生活・歴史・景観保全訴訟
http://www.tomo-saiban.net/
- 作者: 服部圭郎
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2009/08/06
- メディア: 新書
- 購入: 1人 クリック: 57回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
人間都市クリチバ―環境・交通・福祉・土地利用を統合したまちづくり
- 作者: 服部圭郎
- 出版社/メーカー: 学芸出版社
- 発売日: 2004/04/30
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 14回
- この商品を含むブログ (13件) を見る
地方を殺すな!―ファスト風土化から“まち”を守れ! (洋泉社MOOK)
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2007/10
- メディア: ムック
- 購入: 4人 クリック: 118回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
- 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
- 発売日: 2009/07/03
- メディア: DVD
- 購入: 16人 クリック: 170回
- この商品を含むブログ (321件) を見る