シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

郵政問題で「民業圧迫」とか云っているヤツは真性のバカ

ども。本を出し損なったシートンです。

ちょっと医者に行きまして、待合い室にて雑誌を手に取っておりましたら、凄い見出しが目に付きました。


社会主義化するニッポン経済 AERA-net.jp
http://www.aera-net.jp/summary/100319_001537.html


もう、見出しだけでお腹一杯ですが、中身はさらにクソでした。よりによって竹中平蔵かよ。インタビュー相手くらい選べよ。
それにしても、郵政問題でやたら「民業圧迫」とか云ってるバカが多くて困りますな。
云うに事欠いて「民業圧迫」か。他にセリフは無いのか?


そもそも立ってる土台がミスリードです。「民間企業と郵政公社」は「民vs官」と称されてますけど、くだらないですね。以前説明したとおりです。
郵政事業は「公共物」であり、金融機関は「私企業」です。「公と私」の問題なのです。
郵政の巨額の資金運用が問題だとすれば、それは「民営化」されていないから、などではなく「官僚」や「政治家」に「私物化」されているから、なのであり、民営化(=私企業化)されれば、それが別の者によって「私物化」されるだけのことです。それが「郵政民営化」の本質でした。
だからこそ、「かんぽの宿」のような問題が起きたわけでしょう(拙エントリー 「西川善文を吊し上げろ!」参考のこと)。


もともと銀行などの金融機関だって純粋に私企業として振る舞って良いわけではありません。「経済の血液」とでも云うべき通貨を滞りなく社会に行き渡らせる事が求められているわけです。ですから、金融庁によって監督されるわけですし、潰れる危険性があれば政府による救済だって行われるわけです*1


民間企業(私企業)であっても公の部分は存在するのです。もし、郵政事業の巨額の資金運用が問題だ、というなら、それは運用プロセスが透明性を欠いているからです。そして、本来公器である郵政事業であればこそ意志決定でもプロセス公開でも有権者の意見が反映出来るはずです。出来ないのは公社か民間企業かの問題ではありませんよね。


逆に民間企業(私企業)となってしまえば意志決定にも運用プロセスも我々の意見を反映させる根拠さえ失われてしまいます*2
ですから、郵政問題を取り上げるなら「民業圧迫」などという的外れな言葉は述べるべきではありません。この言葉を使いたがる人には二種類いるでしょう。一方はミスリードを誘いたい人々。やたら「民営化」が好きな人々です。もう一方は騙されやすいボラれ好き。


それでもなお「民営化」すれば効率的だ!と云いたいですか?政府関与は非効率を生む、とか云いたい?
では、次の話ってどう思います?


宮崎正弘の国際ニュース・早読み(オバマの米国は社会主義化)
http://www.melma.com/backnumber_45206_4800621/

冨の分配は弱肉強食という自由主義原理が作用し、替わりに高額所得者の慈善によって弱者が救われた。日本のような老人医療の無料化も手厚い介護保険もない。日本のようなコミュニティ相互扶助という基本概念は成立しない。

 この国のあり方の根幹を変革するわけだから、共和党のような「小さな政府」「規制緩和」「自由競争」を原理とする視座から言えばオバマ改革は「無謀」であり、「非アメリカ化」であり許容できる政策ではない。

 共和党は「これは社会主義だ」と酷評し、「アメリカの恥である」としてあらゆる機会を捉えて反対してきた。
 「米国の赤字を増大させるばかりか納税者は加重な債務を背負い、むしろ医療制度を弱体化させる」(ジョン・ボーナー。オハイオ州選出下院議員)。

 「財政上のフランケンシュタインが出現した」(ポール・リャン。ウィスコンシン州選出下院議員)

 「米国を弱める決定的な第一歩だ」(バージニア・フォックス。ノース・カロライナ州選出下院議員)。

 逆に言えば国内に広く潜在した社会主義者の勝利である。まさにオバマ大統領自らが法案通過直後に吐いた「これで我々(社会主義者)は歴史的な責任を果たせる」


オバマ医療改革 悩める超大国の「変革」
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2010032402000046.html

国民皆保険に道を開く医療改革法案が米下院を通過し、オバマ大統領最大の公約が実現する。払った代償は大きいが、「国のかたち」をも問う歴史的一歩を踏み出した成果を評価したい。

 「これはアメリカ国民にとっての勝利だ」−。医療改革法案の下院可決後、オバマ大統領が述べた言葉に、歴史的達成感がにじむ。

 先進国の中で、国内総生産(GDP)比16%という最高の医療費を費やしながら、国民の六人に一人が無保険者という数字が米国の医療事情を象徴する。医療機関、製薬、保険会社が提供する高価な医療サービスと、その負担に耐えられず無保険化していく低中所得者層、その医療現場の悲惨な実態は、映画などでも紹介され国際的波紋を広げた。

 今回の医療改革法案の軸は、既存の低所得者向け公的医療扶助制度(メディケイド)の適用対象を拡大する一方、低中所得者層を中心に保険加入を可能にする補助金、税額控除を導入する点だ。四千六百万人とされる無保険者の三千二百万人を救済できるとされる。

 国家建設の理念を個人の自由と責任に置く米国では、保守勢力から「社会主義的」と批判されがちな国民皆保険制度は終始不評だった。クリントン元政権時代の挫折は現政権のトラウマでもあった。

 共和党勢力との交渉は熾烈(しれつ)を極めた。当初の目標だった公的保険導入は早々と消え、代わって「保険取引所」を新設し、民間保険会社の競争を通じて安価な保険提供を図る実験的な方法に止(とど)まった。

 四年後の本格実施から十年間で九千四百億ドル(約八十五兆円)とされる財源は、高額保険商品や高額所得者に対する増税、無駄の削減で賄うとされるが、現実的な裏付けが十分とはいえない。

 今後最大の懸念は、土壇場でオバマ氏が自ら演じた力ずくの政治手法だ。「米国の融和」とは裏腹の強引な議会戦術は、共和党との溝を決定的にした。秋の中間選挙を控え残されたしこりは大きい。

 高い代償を払いつつも、オバマ政権は歴代政権が実現できなかった国民皆保険制度の実現に道を開いた。複雑なテーマを平明に語る説明能力と、一貫した高い理念があってこその成果だ。

 国際社会で、黒白が単純に割り切れるテーマは稀(まれ)だ。核軍縮イスラムとの対話もしかりだ。米国が内政で示した変革が、国際社会の変革でも通じるか、真価が問われるのはこれからだ。


大概の人は公的な医療保険制度を「社会主義的」と呼ぶ事に違和感を感じるんじゃないですか?
だから、こうした記事が反響を呼ぶんでしょうし。


アメリカの医療保険制度は最高だ!(ニューズウィーク日本版)
http://newsweekjapan.jp/stories/us/2009/08/post-409.php


日本では当然の国民皆保険制度。私などは「誰でもが医療を受けられる」国で無ければとうの昔にあの世へ行っていたでありましょう。たぶん、二桁年齢にさえなれなかったはずです。ですから、この国の医療保険制度には感謝しておりますし、私が納める保険料が誰かの命を救うのであれば、喜ばしいことであります。
アメリカで成立した保険制度はこれより遙かに医療保険企業に日和ったものでしかありません。ま、そうでなければ法案通過する目途が無かったからですけど。マイケル・ムーアが「シッコ」で取り上げたように、アメリカの医療制度は単に低所得者が不利、というだけではありません。中産階級でさえも治療によって経済的危機に陥る可能性がある、というもの。
その手直し程度でさえも「社会主義」呼ばわりされて、暴力的脅しまで掛けられる、というんですから。


医療であろうと郵政であろうと同じです。単に「公共物、公共サービス」をどう扱うか、の問題なのです。いい加減に的外れな批判のために「社会主義」とかレッテル貼るのってくだらない、と気づいた方が良いですよ。


とりあえず、「AERA」編集部の「山下努」氏には、わたくしから「マッカーシー賞」を差し上げましょう。誰にでも「アカだ!」と叫べば恫喝できると考えたマヌケ野郎の名前がピッタリであります。


最後に


「貧乏を憎み、誰でもまじめに働きさえすれば幸福になれる世の中を願うことがアカだというのならわたしは生まれたときからアカもアカ、目がさめるような真紅です」 山田五十鈴
(新劇俳優・加藤嘉と結婚したのを「アカ<共産主義者>になった」と批判され)


竹中労「芸能人別帳 」(ちくま文庫)より


cf.http://kazokunohiketsu.seesaa.net/article/87342761.html(かぞくのぶろぐ)

シッコ [DVD]

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ジョニーは戦場へ行った [DVD]

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グッドナイト&グッドラック 通常版 [DVD]

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芸能人別帳 (ちくま文庫)

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*1:1929年の世界大恐慌時には銀行の国営化などは行われずアメリカの銀行では取り付け騒ぎが勃発した。事態はルーズベルト大統領の登場によって沈静化した

*2:国が株式の半分超を有する事になっているが、私企業化を進めるような政府に経営過程を透明化する意志があるとは思えない