シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

「ゆとり世代」に花束を

ご無沙汰しております。世代的に「新人類」と呼ばれたシートンです。相変わらず、貧乏ヒマ無し。ブログの更新もすっかり滞ってますし、コメントへの返事も差し上げてなくてすいません。
ちょっと読んでて激怒した記事がありましたので取り上げます。
日経産業新聞の特集記事なのですが、そのあんまりな内容をごらんください。

新人研修は自衛隊入隊
自衛隊体験入隊が企業の間で注目を集めている。いわゆる「ゆとり世代」に当たる新人を即戦力として鍛えたいと考える企業が増えていることが背景にある。今の若いビジネスパーソンに求められている資質やスキルは何なのか。どうしたら身に付けられるのか。自衛隊の入隊研修を実施する企業を取材して探ってみた。

陸上自衛隊朝霞駐屯地(東京・練馬など)。4月18日午前、三菱マテリアル子会社でエンジニアリング業務などを手掛ける三菱マテリアルテクノ(東京・千代田)に入社したての23人が、迷彩色の戦闘服に身を包んで整列。2泊3日の入隊研修が始まった。
この3日間、7〜8人が一組のチームでの団体活動が基本となる。まず初日は、自分たちが寝泊まりするテントの設営から始まる。大型テントを組み立てるにはチームワークが不可欠。息を合わせて2時間ほど掛けて組み立てる。
次に「基本教練」として、敬礼の仕方や歩き方、声の出し方を仕込まれる。一列になって行進するが、なかなか足並みが揃わない。「回れ右!」と号令されてもバラバラ。歩き方も「左足から」というルールがあり、少しでも気が緩むと指導官から「ずれてるぞ!」としかられる。
生活は時間厳守。食事や入浴の時間も分刻みのスケジュール通りでなければならない。集合の点呼に遅れると罰則が科されるため、トイレを我慢することもざらだ。誰かが少しでも遅れると、指導官から「指導が足りない」としてチームの責任者の自衛隊員の班長が腕立て伏せを30回命じられるなど、容赦ない。時間を守るために「常にメンバーで時間を確認しながら行動した」とNさん(23)。そのために「食事は10分以内。入浴も10分で済ませた」。
自衛隊での生活習慣にも様々な決まり事がある。例えば浴場に入る際には「失礼します」、出る際には「お先に失礼します」と声を出す。上官や先輩が入っていることを想定した、上下関係を優先する組織のルールを体で覚える。
翌朝は6時に集合。午前に行われる腕立て伏せなど体力検定に続き、午後には体力的にも最も厳しい担架を使った患者搬送体験が待ち受ける。80キログラムの土嚢を乗せた担架を運び、坂道や足場の悪い道を1キロメートル強歩く。Sさん(24)は「握力が限界に達して手袋も破けたり、怪我をしたり。疲れるどころではなかった」と振り返る。
患者を載せている設定のため、担架の上げ下ろしにも掛け声を掛けるなど、行動を合わせる意識が生まれた。「歩調も合わせないといけないし、チームワークがないとできない」(Nさん)。疲労が限界に達するなか、「大丈夫か」と声を掛け合うなど助け合いの精神が育まれる。
最終日はテントの取り壊し。使った毛布も元通りにきちんと直して返納する。ヘルメットや靴も綺麗に磨く。午後1時、スーツに着替えて自衛隊員に見送られるときには「一皮むけてすっかり見違えるようになっている」と、同社総務部・人材育成センター所長の吉元憲司さんは話す。研修前には、休憩になるとおしゃべるが始まるなどゆるい雰囲気があったが、「わずか3日でがらっと変わり、挨拶の声も大きく、しっかりした」。
体験した新人社員らからは、「体力的にはきつかったが、チームワークの必要性を痛感できた」(Sさん)「学生の時は甘ったれていたとよく判った。これからもこの研修は続けてほしい」(Nさん)などの声が聞かれる。同期同士の結束も強まったという。
三菱マテリアルテクノが入隊研修を始めたのは約10年前からだという。「学生から社会人へと環境が大きく変わる際に、しっかりと意識を切り替えてほしい」(吉元さん)との考えからだ。
同社はこの研修について、新入社員らに現場での責任感やチームワークの重要性を認識して貰える点を評価している。実際の仕事でも「きびきびした責任感のある行動ができるようになる」(吉元さん)という。
ゆとり世代」の最近のビジネスパーソンについては、組織人として行動していくうえでの意思疎通の能力などについて、企業の間で不満を抱く声も出ていた。
自衛隊という組織は団結、規律、士気が基盤になる。「体験入隊ではこの要素をすべて学べる」と吉元さんは評する。さらに「行動するための計画や準備、命令、実行というマネジメントサイクルを肌で感じられる」(吉元さん)。体験入隊では組織行動の基本を学べる点に、企業は注目しているようだ。(高橋里奈

朝霞駐屯地に企業 入隊研修が人気、倍率高く
「年間の問い合わせは100件以上で、年々増加傾向にある」。防衛省陸上幕僚監部の広報担当者は朝霞駐屯地での「入隊研修」についてこう話す。朝霞駐屯地では、通常業務の合間に受け入れているため、実施件数は限定的だ。新人が入社する4月に実施できるのは4〜5社ほどに限られるので、受け入れきれないほどの人気ぶりだという。
朝霞以外の駐屯地でも体験入隊を受け入れている。研修の費用は食事代と戦闘服のクリーニング代程度。内容により違うが、三菱マテリアルテクノの場合、一人当たり約4400円だ。
リンクアンドモチベーションが新入社員に求める素質を経営者に聞いたところ、「コミュニケーション能力」(52.8%)、「主体性」(38.0%)が上位だった。経営者は最近の新人にこうした資質が欠けているとみている。体験入隊の費用負担はそれほど重くないうえ、こうした組織人の基本を学ぶことができるため、新入社員研修として人気を集めているようだ。
ただ「入隊研修」は本来自衛隊への理解を深めてもらうためのもの。特に最近は「パワハラ」と受け止められることを心配し、新人を厳しく教育できない人も多いとされる。ゆとり世代を新人に迎える現在、社内でしっかり教育する基盤を気付く必要がありそうだ。

日経産業新聞 2012,6,12 ビジネススキル)

(文中の一部人名を匿名としました)

まず、最初にいっておけば、私は「ゆとり世代」みたいな、各世代へのレッテル貼りが大嫌いです。各個人ごとの差の大きい中で世代に基づく個人評価に何か意味があるとは思えません。そのうえ、この自衛隊入隊訓練による「新人研修」とやらが、企業における新人育成に寄与するのか、まったくナンセンスなものだと考えます。
この訓練は、徹底して命令に絶対服従する、ことを仕込むものでしかありません*1。ですが、企業側が建前上望んでいるのは次のようなものです。

リンクアンドモチベーションが新入社員に求める素質を経営者に聞いたところ、「コミュニケーション能力」(52.8%)、「主体性」(38.0%)が上位だった。経営者は最近の新人にこうした資質が欠けているとみている。

今の若者にコミュニケーション能力も主体性も欠けているとは思いませんが、それにしても、コミュニケーション能力も主体性もその養生は自衛隊の入隊訓練とかけ離れている、というか、正反対の訓練でしかありません。それにしても、「コミュニケーション能力」と「主体性」が入隊訓練で鍛えられる、と考え、そしてその結果に企業側が満足しているところを見ると、企業経営陣の欲しい「コミュニケーション」とは、いわゆるコミュニケーションではなく、命令を下し、それに異論なく服従させること。「主体性」とは、理不尽な要望でも不満を漏らさず行動する、という事でしか無いようです。
そうとしか取りようが無い。だって、こんな具合ですから。

歩き方も「左足から」というルールがあり、少しでも気が緩むと指導官から「ずれてるぞ!」としかられる。

集合の点呼に遅れると罰則が科されるため、トイレを我慢することもざらだ。

左足から歩かなくてはならない、他人と歩調がずれてはいけない、トイレを我慢する、事に(ビジネスの場において)意味はありませんよね。
一番ムカムカしたのが

誰かが少しでも遅れると、指導官から「指導が足りない」としてチームの責任者の自衛隊員の班長が腕立て伏せを30回命じられるなど、容赦ない。

の部分。自分の行動が他人のペナルティになる。やり口がほとんどカルト教団です。


終いには

研修前には、休憩になるとおしゃべるが始まるなどゆるい雰囲気があったが、「わずか3日でがらっと変わり、挨拶の声も大きく、しっかりした」。

ですよ。休憩に話をするのも許せないアスホールがナローな企業ってどうでしょうね。
企業が相変わらず、命令に服従する「ムシの良い」人材*2を欲しがること、そうした“社畜”の調教に嬉々とすること、を考慮すると、それらを好む企業経営陣、管理職こそが無能でまっとうな企業経営スキルの訓練が必要、としか感じられませんね。


自分達の無能さのツケを、若い連中に擦るのはやめましょう。就活中の皆さんも、自衛隊入隊訓練を研修に使うような“ブラック要素”満載の企業は止めておいた無難です。少なくとも、私が就職担当教官なら「三菱マテリアルテクノ」は止めとけ、と忠告します。


若い人たちの働き口が狭まる中で、このような無理強いも忌避しにくい状況にあります。とりあえず就職した企業で波風は立てたくないでしょうから。そうした心理につけ込むような真似はパワーハラスメントとしか云いようがありません。実際、企業経営陣も判っているのでしょう。

特に最近は「パワハラ」と受け止められることを心配し、新人を厳しく教育できない人も多いとされる。ゆとり世代を新人に迎える現在、社内でしっかり教育する基盤を気付く必要がありそうだ。

パワハラさえもアウトソーシングし、“社畜”に調教してしまえば、パワハラもそうとは感じさせずに済む*3。ゲスにもほどがありますね。
こういう若手でも、自衛隊に突っ込んだからといって、鍛えられるわけじゃありません。突っ込みたくなる気持ちはあるかもしれませんが。


このエントリーを書くために若干調べると、結構前からこうした「入隊訓練」の話は出ていたようですが、あまり否定的に捉えるところは少ないようですね。みんな、本当にそれでいいの?


さて、この他に大飯原発再稼働問題や消費税増税ニコンサロン問題や尖閣諸島問題など憤る話はゴロゴロしてますが、なかなかまとめて書くのがしんどいです。今後の宿題としていきます。では。

参考エントリー

体育会系ってそういう事だろ?博士の憂鬱
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20071226/1198658440


体育会系ってそういうことだろ? その2 博士の帰還
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20071228/1198811329


やはり星野仙一は好きになれない
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20080109/1199867959


日本電産社長を弁護する
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20080502/1209701068


恐怖の自衛隊
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20080618/1213778103


自衛隊脳の恐怖
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20080623/1214212541


日清食品の若手管理職にサバイバル法を教えるよ
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20090820/1250777978

*1:自衛隊に限らず軍隊の訓練とはそうしたものです。

*2:人材、という言葉も嫌い。人はモノではありません

*3:私がさらに懸念するのは、入隊訓練を受けた社員がそれを内面化して次の新入社員に強いる事です。体育会系部活のしごき問題などと同等の構造になる事を怖れます