シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

日本企業の技術は別に優れてはいない

 

韓国半導体業界の関係者は4日、日本政府が7月に韓国向けの輸出手続きを厳格化した半導体関連3品目のうち、半導体洗浄に使う「フッ化水素」について、半導体世界大手の韓国のサムスン電子が製造工程の一部で国産品を使い始めたことを明らかにした。
フッ化水素の対韓輸出、日本政府が許可 サムスン注文分
 日本の輸出手続きが強化されて以降、韓国の半導体大手が国産の素材で代替を行うのは初めてとみられる。日本以外の外国製品の使用も始めているという。別の業界関係者によると、半導体大手のSKハイニックスも、日本製以外の製品を工程で使えるかどうか試験を繰り返している。
 韓国貿易協会によると、韓国のフッ化水素の日本製への依存度は4割超に上り、半導体の洗浄に使われる高純度のものはほぼ9割を日本からの輸入に頼る。韓国の政府と企業は、日本の輸出手続き強化を受けて国産化や輸入先の多角化を進めている。「日本離れ」が現実となれば、日本企業にも影響が出るおそれが指摘されている。
 サムスン電子フッ化水素を納入しているステラケミファ(大阪市)は4日、サムスン電子が韓国製品を使い始めたとの情報について「聞いていない」(担当者)とした。今後の業績への影響は「輸出が許可されていない状況なので見通しが立てづらい」(同)としている。(神谷毅=ソウル、大川洋輔)

 

まあ、予想通りの展開ですね。
高純度のフッ化水素は日本の優れた技術が無いと作れない、みたいな与太話を飛ばす連中がいますが、えらい勘違いです。
私、東京応化さんからいろいろ材料買ってたりしますので、彼らの苦境には同情します。クソウヨによって経済的損害を与えられるとは、本当に気の毒。

しかし、フッ化水素に限らないですが、日本企業がシェアを持っているのは日本に優れた技術があるから、などではありません。簡単に云ってしまえば、量の商売だから、です。
実は、現在、日本企業がシェアを持っているのは、こうした“量の商売”となる素材産業ぐらいのものです。こうした素材産業の場合、生産規模と設備稼働率がものを云う。競争相手に対して価格をギリギリまで、場合によっては赤字に踏み込むまで下げることで、シェアを維持する、という、いかにも(デフレの)“日本らしい”商売ゆえなのです。
こういう状況の場合、安定的に入手可能な限り新規参入はなかなか無い。競争しようにも、設備の減価償却が終わっている場合、ギリギリまで価格競争ということになるわけで、新規設備を稼働してまでシェアを取りに行くインセンティブが無いのです。

逆に云えば、そのインセンティブが存在すればどうなるか?新規設備は当然減価償却が終わっているような旧式なものより効率が良い。価格面でも性能でも競争相手となるでしょう。逆に、今まで寡占市場を確保していた側はギリギリまで設備稼働率を上げ、量をさばくことで利益を確保していたのに、設備稼働率が下がることによるダメージを受けることになります。
つまり、それが現在起きようとしていることです。

一旦、内製化なり国内産で賄えるようになれば、よほどのことが無い限り、日本企業から購入することはないでしょう。手のひら返しの可能性を示唆されたわけですから。
半導体産業がほぼ消滅した日本において、半導体用化学試薬類は使い道が極端に減ります。稼働率が高い=大量生産する、ことで成り立っていた化学産業は存亡の危機を迎えるでしょう。

さすが安倍首相。野党の経済政策は支持できない、だから消去法で自民党を支持する、の方々が、この結果をどう捉えるか興味深いところであります。まあ、相変わらず認知的不協和に陥いり、現実否認するのでしょうけど。
では。