自滅する文明と自滅した池田信夫
いや、もはやダメでしょ。池田信夫。経済学の事だけ書いてりゃいいのに、地球温暖化論議にも首を突っ込むからバカにしか見えない。
原子炉のモジュール化 - 池田信夫 blog*1
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/a013254078f8acb4311fe5d5cc2c047f
記事にはumikajiさんが詳細な突っ込みを入れてくださっているので、単品の突っ込みを。
ここにもWESな人が・・・
http://d.hatena.ne.jp/umikaji/20080622/1214144235
まず、モジュール化した原発、というのを自慢げに提唱しているが、実は“モジュール化”*2した原発、というのは存在するのである。それは、旧ソビエトの黒鉛炉、つまりチェルノブイリで事故を起こしたタイプこそが“モジュール化”した原子炉であった。以前、NHKスペシャルでチェルノブイリの原子炉が、スリーマイル島原子力発電所事故と対比する形で「安全な新鋭炉」として説明されていた事を紹介した。
アトミック・ランド −東京に原発を−
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20070724/1185267003
黒鉛炉の利点は、運転中に燃料棒取り出しと再装填が可能な点にある。そのために、日本の原子力発電が悩む稼働率において優れ、さらに温排水を暖房用に利用していた。ノビーは旧ソ連を揶揄するために格納容器が無い点を指摘しているが、実は運転中の核燃料入れ替えのために格納容器が無かったのだ。NHKスタッフに安全面で問題は無いのか?と問われた旧ソ連技術者は「絶対安全」を繰り返す。その傲慢さを嘲笑うなら、日本における原子力も同様である事を忘れない方が良い。
さて、この熱取り出しと連続操業が可能なチェルノブイリ型の原子炉を含め、旧ソ連の原子炉は旧東側諸国で現在でも利用されており電力需要を賄っている。旧ソ連の原子力技術は決して低いものではなく、むしろ先進的であった。つまり、原子力事故は旧ソ連の技術が低いために起きたのではない。どこでも起こりうる可能性があるのである。
実際は、エネルギー・資源問題は原子力であろうと無かろうとあまり関係はない。
人類が利用出来るエネルギー資源・原料資源はストック(貯蔵)されたものでは永続性を持たないからだ。永続的=持続的に利用出来るのはフロー(循環)分だけである。
つまり、地球には太陽光がそそぎ、地球における地熱以外の動的現象の駆動源になっている。生態系を駆動するのも、風、波、雨、といった自然現象も同じだ。太陽エネルギーによって低エントロピー状態になり、最終的に高エントロピー状態になるまでのエネルギーや物質の流れ、これがフロー(循環)分である。具体的に言えば、太陽光自体や、風、雨、雨によって生み出された川の流れ、波がそれだ。生態系でいえば光合成によって生み出された有機化合物、それは再び代謝で二酸化炭素や水へ戻されるわけだが、その生成・分解のプロセスにおいて、一部を拝借して利用出来るというわけだ。石油・石炭にせよ、その生成され代謝する中で一部がストックされたものにすぎない。使い切ってしまえば二度と手に入れる事は出来ないのだ*3。これは、原子力燃料であるウランも同じであり、高速増殖炉によるプルトニウム生成を含めても、永続的に利用することは出来ない。
であるなら、現在の段階でフロー分でやりくりする手法を手に入れ、それを基にした産業を含めた社会構造を構築しよう、というのが“サスティナブル(持続可能性)テクノロジー”であり、オルタナティブ(代替的)と呼ばれる所以なのだ。
つまり、自然エネルギーは絵空事でも何でもなく、現在の段階で可能にしなければ永続的文明は不可能なのである。一旦、ストック資源(化石燃料/原料資源)を使い切れば、フロー分(自然エネルギーとバイオマス)で何とかしなくてはならない。ストック資源に頼り切りで手を打っておかなければ、切り替えがスムーズにならない事は予想されるだろう。効率的な自然エネルギーの開発が可能なのは、ストック資源が存在する今のうちだけなのだ。もし、自然エネルギーなりバイオマスを有効利用出来ないうちにストック資源が失われれば、我々の文明は崩壊する。
対称的な例が江戸期の日本とイースター島である。
もともと日本の戦国期までは日本の里山は酷く荒れていた。製鉄、製陶を含む薪炭利用の拡大と開墾が山を荒らした。木を伐り過ぎた結果、表土は流出し、痩せた土壌は実りをもたらさない。当時、特に開発の進んでいた中国山地を中心に赤松の植生が多かったことが知られているが、これは赤松が痩せた土地を好むためである。日本の山は生物的多様性にも乏しい貧弱な山になろうとしていたのである。どういうわけか、江戸時代の各地の為政者は、木が豊かな山の維持に欠かせない事を知っていたらしく、植林と育林、伐採制限を進め、山の荒廃を食い止めた。日本の里山は蘇り、適切な形での食料や薪炭、肥料をもたらした。この知恵は明治維新以降失われ、日本の山は再び危機に立っている。
イースター島でも同じであった。彼らは土地を切り開き、船を造り、モアイを立てた。いずれも木の切り出しが行われ、そして住民達は森の恵みに無頓着だった。森林の減少は山の荒廃を生み、食料の慢性的欠乏を呼ぶ。彼らはそれに対して部族間の抗争で食料を奪い合い、さらに森の減少に拍車を掛けた。イースター島の文明は維持が出来なくなった*4。
イースター島と同じく、すでにストック分が失われ、危機に立っている問題がある。リン鉱石の問題だ。
店頭から国産野菜が消える? 米・中が肥料の輸出を実質禁止
国産の野菜がスーパーの店頭から消える可能性が出てきた。
化学肥料の原料であるリン鉱石の世界最大規模の輸出国である中国が実質的な禁輸措置に踏み切ったのだ。
今年4月、中国は化学肥料の輸出関税を100%と大幅に引き上げ、翌5月にはリン鉱石の関税も100%に引き上げた。
13億人という世界最大の人口を養うべく自国の農業向けにリン鉱石を活用するように方針を変更したためで、実質的には禁輸措置に近い。(略)
(ダイヤモンド・オンライン より引用)
http://diamond.jp/series/inside/06_14_004/
以前に、リン循環の壮大さとストック分が失われる危険性について述べたことがある。
宇宙に棲みたがる人々
人類が農業や工業で利用するリン鉱石は、生態系で長年に渡って蓄積されてきたものだ。それをほんの200年程度で枯渇させようとしている。一旦、拡散したリンを集めて利用する手段は人類には無い。我々は自分たちの力だけで地球に君臨しているつもりになっているが、その力の源泉は生態系が長年に渡って蓄積してきたものだ。化石燃料にしろ、リンにしろ、鉄にしろ、木材資源にしろ、全てそうだ。ストックされた分が失われたら、我々には手の打ちようがない。
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20070404/1175677112
まさか、これほど早く危機になるとは考えなかったが、リンのフロー分とは、動植物に含まれる分であり、とりわけ海産物に含まれる分が重要だ。そして、排泄物からの回収と再利用が欠かせない。
リン単独に限らず、あらゆる資源で同じ事である。フロー分で得られなければ、リサイクルが欠かせない。これは単純な技術だけの話ではなく、社会構造を含めたアプローチがどうしても必要なのだ。
我々はイースター島住民の轍を踏むことなく、日本の先人の知恵に学ぶべきなのである。あらゆる意味で、フロー(自然エネルギー・バイオマス)分でやっていく手法を見出すのは早ければ早いほど巧くいく。そして、それは現在の途上国にとっても有効な手法だ。自分の身の回りでやりくりを付ける事が出来るのだから。エネルギー資源の取り合いも食料の取り合いもいらない。そして、それこそが洗練されたやり方である、と示す事が、温暖化対策で途上国に不満を生まないやり方なのである。
だいぶ最初と脱線した話になってしまったが、ノビーはNHKにいたなら、NHKスペシャル「原子力」くらいは見ていても良いはずなのだが。それにしてもNHK出身者って、なぜかヘンなヤツが多いなぁ。宮崎緑とか、畑恵とか、木村太郎とか、草野仁*5とか。
自滅した池田信夫 追加
前エントリーに加えて、ちょっと追加。
ちょっと前にid:buyobuyoさんがだいぶノビーに目の敵にされていたようだが、ま、ノビーについては放っておいても良いんじゃないかと思う。
池田先生がやってることと報道スクラムで個人追いつめるマスコミと何が違うの?
http://d.hatena.ne.jp/buyobuyo/20080606/p1
ノビーは、大学教授でアルファブロガーの有名人、って事でその与える影響が懸念されているようだけれど、ノビーの言動を見ていけば、大した影響力を持ち得ない事が解る。
というのも、ノビーは
・地球温暖化懐疑論
・従軍慰安婦否定論
・沖縄集団自決否定論
・捕鯨問題
に首を突っ込むトンデモさんであり、この段階でアカデミズムに影響力を及ぼし得ない。地球温暖化論については、最近も米陸軍研究者が温暖化の人為性を否定、なんて記事が出ているが、
米陸軍の主任科学者:地球温暖化の原因は「太陽」
http://wiredvision.jp/news/200806/2008060623.html
米陸軍の科学者、温暖化理論への疑念を解説
http://wiredvision.jp/news/200806/2008061021.html
米科学者はおろか、米軍自体からも厄介者の扱いだ。世界的に見れば、温暖化に関する論議は既に決着済みであり、懐疑論を口にするアカデミズムは存在しない。日本では未だに懐疑論がもっともらしく述べられたりするが、実は、温暖化に関する論文で、懐疑的な立場の論文は一本も存在しないのである。
科学が白黒つけられないことはたくさんある(その2) 藤倉良の「冷静に考える環境問題」WIRED VISION
その『サイエンス』に興味深い報告が2004年に寄せられた。
著者のオレスケス氏は、重要かつ影響力の高い論文を幅広く収集していることで知られるISIデータベースを用いて調査を行った(注1)。1993年から 2003年までに刊行された論文を、「気候変動(climate change)」のキーワードで検索したら928件がヒットした。このうち、75%は人為的温暖化説を支持していた。残り25%は方法論や古代の気象に関する論文であって、人為的温暖化説の可否とは無関係であった。この残り25%の論文の著者が、温暖化が人間活動とは無関係であると考えている可能性は否定できない。しかし、人為的温暖化説に反対した論文は1本もなかった。
オレスケス氏はこう述べている。
「査読付き論文を書いている科学者は、IPCC、米国科学アカデミー(訳注:ブッシュ政権とは違って、アカデミーは温暖化に警告を発している)や、彼らの所属する学会の公式見解に同意していることを、この調査は示している。政治家、経済学者、ジャーナリスト、その他の人たちは、気候科学者たち(の意見)に対して混乱や反対や不一致の印象を持つかもしれない。しかし、その印象は正しくない。」
権威ある学術誌に掲載された論文に温暖化懐疑説はない。温暖化懐疑説を主張する投稿原稿が、「偏見を持った」査読者や編集者によって、「掲載する価値なし」と棄却されてきたのではないかと言う人はいる。しかし、『サイエンス』の編集者は、そのような論文が投稿されてきたことはないと言う(注2)。
世界の学術団体は合同で、人為的温暖化説を支持している。学術の世界では、ほぼ決着のついた話なのである。今でも温暖化懐疑論を主張する人たちはいる。それがいけないというのではない。ただし、数として圧倒的に少数であることは知っておくべきだ。
http://wiredvision.jp/blog/fujikura/200712/200712281200.html
本になるとやたら調子の良い連中は、しかし、厳正な審査のある論文投稿誌に投稿しようとはしない。この点で、温暖化懐疑論はホメオパシーや水伝、常温核融合などと大差ないのである。もちろん、科学者は皆その事を承知している。だから、アカデミズムで温暖化懐疑論が論議の俎上に載ることはもはやない。それを口にし、自分のブログに嬉々として載せる段階で、ノビーは自分がもの知らずであることを大々的に宣伝しているのも同様だ。
もちろん、従軍慰安婦問題、沖縄集団自決問題についても同じ。
慰安婦問題については自慢げに述べていても、世界中で慰安婦問題謝罪決議が行われた。当初は息巻いて「隼速報の伊勢平次郎氏
隼ホームページ
http://falcon.x.cmssquare.com/
にコミットしているが、連中がグダグダになると*1、おくびにも出さなくなった。
沖縄集団自決についてはさらにお笑い種で、誤読していたことを山崎行太郎氏につつかれた挙げ句、知らぬふりを決め込んでいる。
「無名のネット・イナゴ=池田信夫君」の「恥の上塗り」発言
http://d.hatena.ne.jp/dokuhebiniki/20071129
こういうと何だけど、ネオナチにしてUFO研究家、ズンデルさん*2みたいなものでしょう。世界的有名人ではあっても、現実的な影響力は皆無。
ズンデルさん当人のサイト
http://www.zundelsite.org/
Ernst Zundel (wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Ernst_Z%C3%BCndel
私は経済学に興味はないが、こんなスタンスを取るレイシストが、広い視野を必要とする経済論議に的確な対応が出来るとは思えない。
つまり、以前も述べたけど、「正論」だとか「WiLL」御用達の電波系文化?人が関の山である。
ま、ほら、他にもいるでしょう。藤岡信勝とか、東中野とか、渡部昇一*3とか、クライン孝子とか。この程度の連中のシンパなど単なるお馬鹿さんで、大概の人はネタとしか見ない。であるなら、ノビーが息巻いていようと、別に放っておいても害は無いと思いますよ。
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