シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

温暖化ガス25%(90年度比)削減のポイントを説明するよ

温室ガス25%減、鳩山代表が明言 : 環境 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20090907-OYT1T00586.htm

民主党鳩山代表は7日午後、東京都内で講演し、日本の2020年までの温室効果ガスの削減目標(中期目標)について「1990年比で25%削減を目指す」と述べ、衆院選での同党の政権公約マニフェスト)通りに実行する考えを表明した。鳩山代表が中期目標について衆院選後に明言するのは初めて。民主党の公約の「25%減」には経済界から「省エネの進んだ日本には過大な負担。経済に悪影響を及ぼす」との強い反発が出ており、今後さらに論議を呼びそうだ。鳩山代表は今月下旬の国連の会議で新政権の温暖化対策について表明する方針。


こんばんは。シートンです。
温暖化ガス25%削減の鳩山発言に、「日本オワタ」とか「ミンスいい顔しすぎ」など、すっかり反政府広報が板に付いてきたネトウヨの皆さんが、しきりに「無理!」と叫びたくてしょうがないようですけど、後の損失を考えれば手を打つべきは当然ですし(スターン報告って知ってる?)、今までの日本政府の態度は「化石賞」に輝く?ほどでしたから、こちらとしては漸くかよ、という気分でしかありません。で、私が考える削減のポイントがどこにあるか説明します。
さて、まず温暖化ガス、一応二酸化炭素(CO2)に限定しますけど、排出量の排出割合を見てみましょう。


(3)我が国における温室効果ガスの排出状況(資源エネルギー庁 調べ)
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2004/html/16011213.html

エネルギー起源二酸化炭素排出量について部門別でみると、排出量全体の約40%が産業部門、次いで運輸部門(約23%)、業務その他部門(約17%)、そして家庭部門(約14%)の順となっています(第112-1-7)。


えー、結構古いデータで、資源エネルギー庁のデータですが、一応現在でも割合そのものは大して変わっていません。環境省のサイトにも詳しいデータがありますから、知りたい方はご覧になってください。大雑把には、産業部門が4割、運輸部門が2割強、家庭部門は1割強、(その他が2割弱)という事になります。やたらめったらメディアでは家庭や個人の心がけや努力が唱われますけど、あまり効果が無いんですね。


それでも、家庭部門の排出削減がまったく効果が無いわけでも無いので、削減の余地が無いか見てみましょうか。実に家庭のエネルギー消費の6割までが冷暖房と給湯によるものです。


家庭のエネルギー消費の約6割を占める冷暖房と給湯(NEDO
http://www.nedo.go.jp/shouenepoly/guidebook/topic2_0.html


しかも、そのうち給湯と暖房が3割弱を占め、冷房と厨房用はさほどでもないんですね。つまり、給湯・暖房にかかるエネルギーが削減出来るかが、家庭部門の排出削減の鍵だ、という事です。
手段はあるのか?あるんです。ソーラーシステムがそれです。ソーラーシステムといっても、ガンダムに登場するアレじゃありません。アクティブ(能動的)、パッシブ(受動的)共に、太陽光(熱)利用が効果的です。
太陽熱温水器は、熱利用という点では効率が高く、設備投資も安価でEPBT(エネルギーペイバックタイム)が短くて済む利点を備えています。もちろん、充分な集熱面積を持つことが出来れば、給湯・暖房共に利用可能。季節や天候、地域差にもよりますが家庭のエネルギーの6割までを賄えるわけです。太陽光発電と併用ももちろん可能ですし、太陽光発電用パネルの冷却と併用して予備加熱(プレヒート)に使えば双方に利点があります。
戸建てでないと無理?そんな事はありませんよ。


集合住宅のバルコニーに設置する太陽熱利用給湯システム、東京ガスなど
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20090521/532761/

東京ガス矢崎総業、三協立山アルミ、リンナイガスターと共同で、集合住宅用太陽熱利用給湯システムを開発した。2010年2月の商品化を目指す。矢崎総業が集熱パネル、三協立山アルミが手すり、リンナイガスターが貯湯ユニットをそれぞれ開発し、製造する。東京ガスは、仕様検討・設置施工評価を行う


夏は冬ほど温水は必要ありませんから、屋根に集熱器を備えるより、壁面に備える方が冬場は有効、というわけです。


集めた熱をムダにするのはもったいない、となれば、建物の断熱が重要になります。


断熱材 真空断熱を採用した初のハイブリット構造、アキレス
http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20090318/139752/

冷蔵庫や自動販売機などで使われる真空断熱材を、硬質ウレタンフォーム内に挿入したハイブリッド断熱ボード。真空断熱材の部分は、多孔質芯材をプラスチックのラミネートフィルムで被覆し内部を減圧封止している。住宅用建材のハイブリッド断熱ボードの販売は日本初。


窓は外の光を取り込んでくれるけど断熱が問題、に応えました。


真空ガラス スペーシア 日本板硝子
http://shinku-glass.jp/


このレベルになると、単に省エネ、に限らずエネルギー消費を伴わなくても快適に過ごすことが可能、ということで、ドイツではこのレベルに達した住宅を「ゼロエネルギーハウス」とカテゴライズしています。ゼロエミッションどころじゃないわけです。


こうした対策が住宅政策に盛り込まれれば、家庭部門の排出量は大きく減らせる事が判ります。
では、その他の部門はどうでしょうか。運輸部門について見ていきます。ここについてポイントはやはり自家用車ですよね。排出量の半分までが自家用車によるものです。しかも、その移動は10km以内が多いですから、再三述べているように、「街をコンパクトに纏め、自家用車を減らしていく方向へ誘導する」事が望ましい。


参考:当ブログを 自滅する地方 で検索してみてください


貨物輸送に関しても、鉄道輸送へ転換、モーダルシフトが有効です。大体、トヨタ自体がモーダルシフトを進めているんです。どこかおかしい気がするけど。


トヨタ列車”が大増発 部品輸送を船舶から貨物列車へ カイゼン進めコスト効率も向上(1)
http://www.toyokeizai.net/business/strategy/detail/AC/49670619f13ae47f81236660b0da3c06/


近距離では、クロネコヤマトが面白い取り組みをしてますね。他社も続いています。


リヤカー 都会で復権 エコ、駐車難“追い風”
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/m20090905033.html

先駆者といえるのが、ヤマト運輸(東京都中央区)だ。それまでは台車で配達していたが、長距離を運ぶ際や荷物が多い場合には不向き。そこで、14年に電動アシスト自転車にリヤカーを組み合わせた「新スリーター」を導入した。


さて、こうして見ていけば、家庭・運輸部門で大きな削減が可能である事が判ります。
では、最大の問題、産業部門はどうか?産業界は今回の削減に大きく反対していますね。削減の余地が無い、とか、産業の競争力を損なう、とか。でも、産業部門の詳細を見ると、そんな事は無いのです。


実は、産業部門で大きな排出は発電と鉄鋼、セメント業が占めています。他の産業だって改良の余地はありますけど、大きなところを押さえてしまえば簡単ですからね。
そのうち、鉄鋼とセメントには大きな特徴があります。それは、需要の多くを「公共(土木)事業」が占めている、という事です。


セメント製造業|窯業・土石製品
http://tabisland-industry.fideli.com/industry/m/industry19_5_1.html

国内需要を見ると、バブル経済崩壊後は阪神大震災後の復興需要などで回復した時期もあったものの減少基調。公共工事が全国的に抑制傾向にあるため、その影響を大きく受けている。


【産業天気図・鉄鋼】在庫調整完了で雨足は弱まるが、実需低迷で依然として雨模様は続く
https://www.toyokeizai.net/business/industrial/detail/AC/744594e3351d420e9f98adba69c7dec7/


ハイ、これで「税金の垂れ流し」「環境破壊」「利権構図」に続いて、「公共(土木)事業」をサッサとやめるべき理由が出来ましたね。公共土木事業を止めると、かなり鉄鋼需要とセメント需要が減りますから、温室効果ガス排出も削減出来るわけです。結構な事じゃないですか。


ま、私は別に「小さな政府」支持者じゃ無いんで、「公共事業」自体には反対ではありませんから、土木事業に向けられていた額を、「環境対策」にでも振り向ければ、雇用も産業育成も可能だと考えます。


セメント会社や鉄鋼メーカーが危機に陥る?従業員の雇用が危ない?何を間抜けな事言っているんでしょうね。
それこそ、エネルギー転換(石炭から石油)の時でも、日本の産業転換(繊維から自動車・電機)の時でも、消えゆく産業と解雇に晒される人々は存在したわけです。むしろ、そうした危機を次の産業の足がかりにしていく強さこそが、日本の戦後産業の在り方だったわけでしょう?
トヨタ自動車の母体が、何であったのか知らないとしたらマヌケですよ。
様々なケミカル関連の企業だって、もとは繊維産業が多くを占めています。繊維が斜陽化する中で、生き残りを図った結果なんです。


第一、環境対策自体、すでに目端の利く企業は、自分達の生き残る先だと認識しているわけです。紹介してきた技術はどれも日本企業が手を付けたものなんですから。
温室ガス削減に反対している新日鐵だって同じです。新日鐵太陽電池の原料であるシリコン生産に参入している、なんて事は気の利いた人間ならすでに承知の事です。


新日鉄太陽電池用の多結晶Si事業に参入
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060630/118752/

新日本製鉄は,太陽電池用の多結晶Siの製造と販売に乗り出す。事業会社として,2006年6月30日に「NSソーラーマテリアル」を設立した。 NSソーラーマテリアルは,福岡県北九州市にある新日本製鉄八幡製鉄所内にプラントを建設し,2007年度下期から月産約40トンで生産を開始する。生産した多結晶Siは,日本の太陽電池メーカーへの供給を想定している。

 多結晶Siの製造には製鉄技術を応用した独自手法を用いており,既存の製造方法とは異なるという。既存の方法に比べて,設備コストを半分にできる利点があるとする。多結晶Siの製造技術は以前から開発を続けてきたが,ここ最近の太陽電池需要の高まりを受け,製造会社の設立を決めた。


連中は、片側では「温暖化ガス削減なんか無理」という一方で、片側では次の環境ビジネス市場を虎視眈々と狙っているわけです。そんなところが「潰れる」だなんて、そりゃ、連中をなめすぎですよ。連中のゴネは、単に交渉術の一つでしかない。25%の削減を課せられたとしても、それをバネに、次世代産業の主導権を握る、それが、「産業立国日本」の有り様でしょうが。
経産省や外郭団体がしきりに試算で「無理」と述べてますけど、産業構造のシフトなどは盛り込んでいないわけです。経産省のボンクラ役人共もすっかり気概を失ったようですな。
排ガス規制でも、公害規制でも、乗り切ってきた日本企業を見くびるとは、何という「反日」連中なんでしょうね。まったく。


というわけで、政府は「温暖化ガス削減目標」を野心的に設定すべき。
一方で、有効な社会政策はもちろん必要。「高速道路無料化」のようなクソ政策はとっとと撤回すべし。

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