シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

やばいぞ産経 トンデモウォーズ 電力危機招く「原発推進」

産経のバカ記事が出ていた。原発への異様なまでのコミットは、文藝春秋とか、正論とか、諸君とか、WiLLの広報記事などを見ても、ネトウヨと親和性がいい。
たぶん、反・反原発連中は、十中八九、「従軍慰安婦はウソだ」とか「南京事件中共プロパガンダ」とか「嫌韓」とか云ってる連中だろう。
で、そんな連中の「心の友」
産経新聞、飛ばしっぷりは「古森義久」氏や「阿比留瑠比」氏などのトップランナーに負けていません。

やばいぞ日本】第2部 資源ウオーズ(5)電力危機招く「反原発
伝統狩猟マタギの里で知られる過疎の山村、秋田県上小阿仁(かみこあに)村が、ハチの巣をつついたような騒動に見舞われたのは、ついひと月ほど前の7月だった。

 「高レベル放射性廃棄物の最終処分地についても誘致の可能性を検討していきたい」

 初当選したばかりの小林宏晨(ひろあき)村長(70)のこのひと言がきっかけだった。

 新聞・テレビがセンセーショナルに報道した。真っ先に反応したのが寺田典城知事。「あまりに短絡的」と不快感をあらわにすれば、呼応して村議会も全会一致で「断固反対」を決議した。村役場には社民党などの関係者が押しかけた。抗議電話は全国から殺到し、村の業務は一時停止状態に追い込まれた。

 結局、1週間後に村長が自らが緊急会見して白紙撤回を表明、誘致話はあっけなくついえた。

 「村の再建には村民一丸が不可欠。断念はやむを得なかった。だが処分地はいずれどこかに必要だ。時間さえあれば、村中を回って、村民である前に県民、国民であることも説明したかった」


いきなり凄い。“村役場には社民党などの関係者が押しかけた”悪意さえ感じますな。田舎の議会じゃ、主流は自民党でしょうが。“全会一致”で否決されたなら、駆けつけたのは“自民党関係者”だっていたはず、というか多かったでしょうに。

原子力に反対するヤツはアカかサヨ”っていう印象操作ですかね。保守主義に立った環境保護だって海外じゃ当たり前なんですがね。そのうちに書きますけど。


それにしても、この“学長村長”ってのはどういう方なんでしょう?
「村の再建には村民一丸が不可欠。断念はやむを得なかった。だが処分地はいずれどこかに必要だ。時間さえあれば、村中を回って、村民である前に県民、国民であることも説明したかった」
って、実際の話、義侠心から手を挙げたわけじゃ無いでしょうが。

それゆえ、誘致した自治体には国が長期にわたり毎年10億円程度の交付金を支給、電力事業者団体も有形無形の経済支援を約束している。

からでしょうに。別に、偉そうな(偉いとは少しも思わんが)態度取っても正当化出来るわけじゃ無かろうに。

 ところが、日本では安全性や必要性の議論以前に感情的な反発が先行しがちだ。経済支援についても「カネで危険を押し付ける」との批判がつきまとう。自治体が候補地として名乗りを上げることすらままならないのが日本の実情だ。

じゃあ、なんで“調査に名乗りを挙げる”だけで優遇措置があるんでしょうね。誰もが勘ぐるのは当然でしょうに。なぜ、東京に誘致しないの。

 これは最終処分地に限らない。原子力発電の議論全般についていえることだ。資源小国のエネルギー問題をどう解決するのか、冷静な国民的議論は忘れられがちだ。

そうですね。ウランは日本では採掘出来ず、資源小国のエネルギー問題解決手段としては有望とは云えない、という当然の考えは、“冷静でない”原子力推進派からは伝わってきませんが。

 上の図は日本の原子力発電所の所在位置を示している。現在運転中が55基、ほかに計13基が建設中もしくは着工準備中。共通するのは、用地選びから建設まで、いずれも20、30年を要していることだ。地元の理解を得るための調整に膨大な時間とコストがかかることが最大の理由である。

まあ、「時代遅れの原子力」で述べるつもりですが、それほど時間もコストも掛けてまで、何で原子力固執するのかさっぱり理解できませんね。

 唯一の被爆国ゆえの核アレルギー。さらに地震大国としての不安。諸外国に比べても根深い日本の反原発感情をそこに求める見方がある。同時に、日本原子力文化振興財団の理事長、秋元勇巳氏は「問題の根源は原子力政策における政治の不在」と指摘する。

前にも述べましたが、根深い反原発意見は、海外では当然のものなんですよ。だから、

スリーマイル島旧ソ連チェルノブイリと大事故が相次いだ結果、世界の原子力発電所建設は1980年代以降、停滞が続いてきた。

なんでしょう? 実に、TMIやチェルノブイリが起きても、ひたすら原子力に邁進し続けたのは、むしろ「原子力政策における政治の介在」と指摘できます。
世界的に原子力が不人気だったのは、反原発感情に加えて、民間企業運営が多い世界の電力産業では、原発のコストとリスクを負いきれなかったからです。日本では、積極的に国が介入して原子力を邁進してきたのですから、何を指して「政治の不在」というのかわかりません。


産経的には、「ゴリ押ししてしまえ」というのが「責任ある政治の有り様」なのかもしれませんが*1。一応、この国は民主主義国家なんですよ。

 処分場の確保にせよ、多くは民間任せ。国が責任を負う姿勢はなかなか見えてこない。政治家も票にならないから腰が引ける。2、3年で担当が代わる官僚は長期的視点に立った責任ある政策は先送りしがちだ。

民間、って、アホですか?民間などどこにもいないよ。多くは独立行政法人とか、事業団とか、国の下請けではないの。

いずれ事業者が原発事業に嫌気をさし始めたら、日本は原子力先進国どころか後進国になりかねない。秋元氏はそう警鐘を鳴らす。

いいんじゃない?後進国でも。原子力に拘らなきゃならない理由なんて、ミジンコの糞ほどもないです。

異常に低い原発稼働率

 「問題は政治の不在」という秋元氏の懸念は、日本の原子力研究者の多くの思いも代弁する。一昨年夏、経産相の諮問により、国への提言「原子力立国計画」を座長役としてまとめた東大大学院の田中知教授も危機感を共有する。

 田中氏によれば、日本は、基数、出力ともに米国、フランスに次ぐ原発先進国。世界の主要原子炉メーカー5社のうち3社は東芝日立製作所三菱重工業の日本勢である。

 ところが、その日本の原発設備の稼働率は70%前後だ。90%台の欧米諸国に対して異常に低い。問題が生じる度、長期の運転停止を余儀なくされるからだ。7月の新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原発の運転停止も長期化する見通しで、酷暑の今夏の電力供給は綱渡りを強いられている。

 だが、日本人の危機感は乏しい。ウランの燃焼効率を現在の約60倍にする高速増殖炉開発も停滞気味だ。

“だが、”の繋がりがおかしいように感じられるのだが。何が“だが”なの?
最大の問題は、地震の巣に集中して原発を建ててしまった「リスク回避思想」の不在でしょうが。
稼働率を上げろ」とか「高速増殖炉を認めろ」なんてのは、本筋じゃない。


ちなみに、太陽電池の生産トップも日本企業が上位を占めている。にも関わらず、日本政府は太陽電池の研究開発および普及にまったく後ろ向き。その事は以前解説しました。


原子力の不経済学
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20070222/1172133672


その逆がドイツ。もともと大したメーカーが無かったが、この数年でトップの仲間入り。ヨーロッパにおける太陽電池生産は1GWにも達するという。これは、ドイツ政府が「自然エネルギー」に熱心で、しかも明確なビジョンと目標設定を持っているから。日本でもキチンと目標設定を行い、積極的にコミットすれば、太陽電池普及は進むはずなのに*2
もちろん、燃料電池バイオマス、風力などについても同じ。

 いずれも、日本の原子力政策が長年にわたってブレ続けてきた結果だ。提言はそれを正すのが最大の狙いで、具体的には高速増殖炉を中心とする核燃料サイクルの達成、それを支える技術者の育成、国民向けの科学的見地からの啓蒙(けいもう)など、国の責任で取り組むことが重要だと田中氏は言う。

いや、ブレちゃいないんです。そこが問題。ぶれていれば、TMIやチェルノブイリの後に原発を倍増させるようなマネは出来なかったでしょう。
TMI発生時に日本の商業原発は18基。チェルノブイリ時には33基だ。周囲が立ち止まって、妥当性を判断する時でさえ盲目的に突き進んだ結果がこれ。
自分たちの進んだ方向が違っているのかも、という視点が無さ過ぎ。ヤバイ。この人。

 中国では、現在10基800万キロワットの原子力発電を2030年までに15倍から20倍に拡大する計画が進む。100万キロワット級の原発が今後20年間で百数十基もできる計算だ。インドも電力を原発に求めようとしている。

えー。産経的には「中国が100基や200基の原発保有する」状況は、許容出来るんですかね。
さんざん、中国脅威論を説き続ける連中のセリフとは思えん。
中国製品の品質の悪さを宣伝し、中国人のモラルの悪さを嘆く産経にとってどうなの?
自分としては、中国が200基以上の原発を稼働させる状況は、アブナイとしか思えないんですけど。


 米国はスリーマイル島事故以来凍結されていた新規建設を、30基規模で再開すると表明。英国も建設再開を決定した。ドイツも脱原発宣言の見直しに動き始めた。原発の新規着工は世界規模で加速しそうだ。

なぜか無視したがるけど、ブッシュ政権補助金や免税などで原発建設を働きかけています。よくあるブッシュの利権(軍事利権、穀物利権、食肉利権など)の一つでしかない。


肥満増加の裏にある米国の農業政策と階級格差
http://macska.org/article/196


上記の話は環境配慮に見せ掛けて、実はバイオエタノール政策は穀物メジャーのためだった、というくだり。
だから、次期大統領の態度次第で、この原子力政策がひっくり返る可能性は高い*3
これは、英国も同じ。イギリスでは原発と再処理工場の運営のずさんさもあって、反原発の声は高い。
現ブラウン首相も、保守党も、選挙に臨んで取り消す可能性は高いでしょう。。
ドイツは政策の見直しは行っていない。メルケル政権発足時にそういう観測が流れたが、大連立状態のドイツでは、そんな政策変更は行われる可能性がない*4

 中国、インドなどで急増するエネルギー需要。その中で強まる中東諸国やロシアの資源支配。原油の安定需給に対する世界的懸念が高まっていることが背景だ。地球温暖化対策から発電で二酸化炭素を出さないクリーンエネルギー性が見直されていることも大きい。

注意しないといけないのは、原発建設に熱心な国は地球温暖化対策には消極的、ということ。もともと、原子力は「電力」しか担えない。物質消費やその他のエネルギー消費対策を同時に、構造的に行わなければ意味が無い。そして、結局のところ、原子力は温暖化対策には有効ではない。

 だが、この原発の先行きにも新たな不安材料が出てきた。左上図が示すようなウラン価格の異常ともいえる高騰ぶりだ。調達先や資源埋蔵量は不安なしとみられてきたが、この7年間で実に20倍近くも上昇している。

“だが”、の使い方が相変わらずヘンテコ。当然の事ですよ。ウランは石油以上に希少な物質だし。

 日本も手をこまぬいているわけではない。世界第2の埋蔵量を誇るカザフスタンに懸命の資源外交攻勢をかけ始めたのも対策のひとつだ。それでも、同じエネルギー資源小国として原子力発電に力を注ぐフランスが、早くから各地の産地で採掘権を確保するなど安定供給体制を固めてきたことに比べれば、出遅れ感は否めない。

 すでに世界のウラン鉱山では、中国などの活発な買い付け工作も報じられている。日本がここでも後手に回るなら、安定供給の先行きは危うい。

いや、だから、原子力固執するべきじゃないと思いますよ。他の手段を考慮した方がいいでしょう。

 「日本はかつてエネルギーで戦争を起こし、エネルギーで負けた。それを教訓としなければならない」。秋元氏は危機感を深めている。(五十嵐徹)

ええっ!それでOKなの?この意見。産経的にはこういう意見は「反日的」だと思ってましたよ。
“アジアの解放”が戦争目的じゃないのかな。産経的には。
で、この教訓はおかしくない?エネルギー資源を争うはめにならないようにするのが、戦略なり政略なんじゃないですかね。同じ土俵に上がって「先手を取る」事に固執すれば、前と同じになると思いますが。


参考: (本文)
http://www.sankei.co.jp/keizai/sangyo/070823/sng070823001.htm


いや、産経はどこをとっても凄い。


追記:D_Amonさんのはてブコメントで反省いたしました。確かに原発推進ネトウヨを結びつけるのは、予断が多すぎだと思います。よって、冒頭の部分は取り消しいたしますが、自戒のため線を引く事に留めます。(8/26)

*1:安倍晋三に対するヨイショで、強行採決連発の国会運営を成果、と褒め称えていたことを考えると、当たっているかも

*2:東京都は環境対策に関しては熱心で、太陽電池普及に関しても先端を行っている

*3:アル・ゴア原子力を検討に値しない、としている

*4:環境相は、社民党のガブリエル氏