シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

島耕作

黒的九月さんのエントリー。いつも、気付かされる事が多いのだが。

私、昔から少年漫画誌とかにある、さえない男の子に何故かたくさんの美女がちょっかい出してくるお話って嫌いだったのですが*1、島耕作はそんな少年漫画が文字通り児戯に思える。調子がいいなんてもんじゃない。島は一歩も動かないのに出会った女のほぼ全てが露骨なモーションをかけ(ものすごい見え透いたハニートラップにしか見えないのだが、皆本気らしい)、さして頭がよいとも思えないのに(はっきり言うと周りがレベル低すぎ。大企業らしいのに)とんとん拍子で出世。しかもこいつ人としてどうよというレベルの酷薄な性格で、娘が死んでも一話で忘れて次の週から女といちゃいちゃしてます。

watapocoの日記〜ちょっと皆さん島耕作シリーズって読んだことあります?

いってることは正しいのだけども矛先が間違ってるというか。島耕作はおっさん向けのファンタジーというかエロ本というかエロ小説というかそういうオナニー本なので、その内容がひどいといっても仕方ないのです。渡辺淳一の小説がひどいって批判するのと似ています。

strange〜島耕作

 どっちにも頷いてしまうのだが、個人的には島耕作の事件発生&おいしいご都合主義的展開のコンビネーションっぷりは、超兵器がガンガン登場して日本があちこちの戦線で勝ちまくってしまうトンデモ架空戦記に近いもんがあると思う。

(じゃなかったらバブル時の拡大戦略で大穴空けたはずの中沢=島ラインが重役になれるわけないもんなぁ)

ヘマ工作 blackseptemberの日記
http://d.hatena.ne.jp/blackseptember/20070801/1185896081


自分も弘兼のマンガは大嫌いなのだが、さる企業で働いていた頃、そこの先輩に
「『課長 島耕作』は知ってるか? あれは、いいよ。男の夢だよ」
と絡まれた事があった。不愉快だったので覚えている。
同時にそいつが賞賛していたのが、「沈黙の艦隊」だった。当時、人気絶頂。
「『沈黙の艦隊』はいいよ。あれはリアリティーがあって」
どこがじゃ?と、当時の自分は思ったが、先輩なので、適当にヘラヘラと“右から左に受け流し”ていた。


ま、“御都合主義のトンデモ架空戦記に近い”から、共に受けてたんだろうな、と思う。


で、さらに。
今思うに、「あれはサラリーマンの夢だよ」と云われたのが、御都合主義以上に不愉快だったんだ、と気付いた。
「何もしないけど、誰にも肩入れしないけど、女も仕事もホイホイやりまくり」なんていう展開が、“男の夢”と云われると、「待てや、コラ」と云いたくなる。
少なくとも、“男”である自分にとって、島耕作の立場は、別にうらやましい立場じゃない。
そんなみみっちい“夢”を、「どうだ。オマエ等、うらやましいだろ。こうなりたいだろ?」
と、弘兼に欲求を読み取られた、つもり、というのが気に入らない。


自分の夢はそんなもんじゃない。勝手に夢を“擬似再現”してくれるな。
それは、アンタの夢ではあっても、オレの夢じゃないよ。

課長 島耕作 [VHS]

課長 島耕作 [VHS]



沈黙の艦隊(1) (講談社漫画文庫)

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