シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

経済学に興味も知識もない私が定額給付金と政府発行紙幣についてアイデアを述べるよ

しばらく休んでいる間に巷は大騒ぎ、しかし一向に景気のいい話は聞きませんね。
で、その中でめっきり評判の悪い定額給付金政府発行紙幣の話。


定額給付金支給、さっそく2村 青森では村長が手渡し
http://www.asahi.com/politics/update/0305/TKY200903050085.html


経済通な方々によれば、定額給付金政府発行紙幣は効果がある、とか、額が小さいのが問題だ、とか好き放題な言葉が聞けるわけですけど、でも、元々税金なわけで、金は纏まってこそ効果がある、と考えるので簡単には頷けない話であります。それに、「ほれ、苦しゅうない。(卑しい愚民共)カネを恵んでやるぞ。じゃんじゃん使え。」なんて態度がハッキリ見える政府の思惑にそうそう乗れるかよ、とも考えてしまうわけですね。皆、単純に生活費の足しにするだけでしょうし。
「じゃあ、オマエはいい景気対策があるのかよ。」
と云われりゃ、ま、経済学に興味も知識も無いですから、正しい、正しくないの話はさっぱり出来ません。
ですが、社会政策には興味がありますし、歴史には多少の知識もあるものですからね、少しばかり景気回復のアイデアを開陳致しましょう。


それは、「政府発行紙幣の給付」。


捻りが無い?もう少しお待ちを。


・日本在住者に一律に政府発行紙幣△○×円(cf.10万円)分を給付する。


パクリじゃないか、財源はどうするかって?まぁまぁ、肝腎の部分はそこじゃありません。この政府発行紙幣のポイントはこうです。


・この政府発行紙幣は政府の指定した流通開始時より、一定額の価値を減じていく。


・減ずる額は、流通開始時より一週間毎に紙幣の開始額面の0.5ポイント。


・○曜日(cf.日曜日)の日の変わり目(深夜0時)に価値を減ずる、と定める。


・公的機関、および金融機関への納付、預貯金、両替等には利用出来ない。


・この政府発行紙幣の受け取りを拒否したものは、開始額面を罰金として科す。


・この政府発行紙幣は政府の特定した流通開始時より200週以降、政府が開始額面の0.45%で、貨幣と交換する事を保証する。


勘の良い方はお気づきでしょう。これは、以前地下猫さんの取り上げていた、シルビオ・ゲゼルの「減価する貨幣」の応用です。


欲望よ永遠なれ! そして手もとに貨幣が残る
http://d.hatena.ne.jp/tikani_nemuru_M/20081007/1223306193


シルビオ・ゲゼル
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20081007/1223371026


シルビオ・ゲゼル研究室
http://www3.plala.or.jp/mig/gesell/nwo-jp.html


この政府発行紙幣(S.G.円と略)の良いところは何か?それは、皆、間違いなく手放そうとする(=利用する)事です。紙幣の額面は、1000円ぐらいにしておきましょうか?そうすれば、少額のものから高額なものまで利用出来ますからね。週の変わり目、つまり減価する直前などは、おそらくコンビニなどでタバコカートン買いや吉野家で牛丼特盛りギョクみそ汁付きを頼む客が増える事でしょう。実際、個人の減価は大した額にはなりません。1000円につき5円ですからね。一人あたり10万円配ったとしても一週間毎に減る額は500円です。大した額じゃ無い、と冷静に考える事も出来ます。しかし、間違いなく皆手放す事、つまり消費に一生懸命になりますよ。しかも、これは金融機関で使えませんから貯蓄などには使えない。海外持ち出しも出来ない。ドメスティックにお金が廻るわけです。どんどんS.G.円は価値を減らしていきますが、おそらく価値が半分になる頃、2年後くらいにはお金が潤沢に廻る事によって景気が回復すると思われます。


もう一つの良い点。それは、発行原資が当初流通額の0.5%で済む事。最終的にはS.G.円は日本の通貨と交換しなければなりませんから、発行に原資が必要です。しかし、どんどん価値を減ずるのですから、裏付けとなる財源は発行額よりずっと少なくて済みます。例えば、一人10万円分配しようと思えば、総額は12兆円になります。しかし、交換額は500億円程度です。もちろん、国内流通貨幣額に大きな影響を与えるほどに発行額が大きいとインフレを起こす可能性がありますけど、一人10万円程度であれば、減価が大きな影響を与える事は無いでしょう。一人100万円だとちょっときついかもしれません。


これは、シルビオ・ゲゼルの「減価する貨幣」の応用ではありますが、同時にある江戸時代の通貨管理者のアイデアの応用でもあります。


その通貨管理者こそ、幕府の勝手掛、水野出羽守忠成という人物です。あまり知られていないかもしれません。佐藤雅美氏の「大君の通貨」に登場し、彼のアイデアが結果的に幕府崩壊の遠因ともなった事が示されているのですが、それはともかく、水野忠成の考えたアイデア、それは


・幕府が銀貨を回収、改鋳して、発行銀貨を増額する


というもの。
つまり、こういう事です。江戸時代の通貨は「金本位制」ではありますが、基本的に流通していたのは銀貨でした。銀の方が金より量がずっと多かったためです。で、水野忠成は、その銀貨を回収しては改鋳、その時に銀貨に含まれる銀の量を減らしていったのです。これはなかなかに巧い手です。例えば、含まれる銀の量を半分にして、貨幣額面を変えずに流通させましょうか。すると、回収額と同額の貨幣が幕府の手元に残る訳です。それを幕府は予算として利用する。全国で少しずつインフレが起きる訳です。財政が危うくなると、再び回収、改鋳をする。こうして、江戸中期以降の幕府は世界でもまれに見る巧みな財政政策を取って来たのですが、幕末の開国と共に危機が訪れます。それが何なのかは、「大君の通貨」を読んでのお楽しみ。


こうして貨幣について考えますと、シルビオ・ゲゼルも水野忠成も実はリフレ政策と同じであることが判ります。リフレは金利政策で貨幣の価値を下げる。貨幣流通量を増やす事で、相対的に貨幣価値を減ずる訳です。対して、シルビオ・ゲゼルや水野忠成の取った政策は、実際に貨幣価値を下げていく。貨幣流通量を増やす事はインフレを止められなくなる可能性がありますけど、「減価する貨幣」は範囲が決まっています。その点、金利政策より優れているのではないか、と思うんですけどね。


もちろん、このS.G.円が巧くいく、なんて事は保証出来ません。自分には想像がつかないような不具合があるかもしれないです。でも、現在提唱されている定額給付金政府発行紙幣、リフレ政策よりは巧くいくんじゃないか、と思うんですけどね。どう思われます?

大君の通貨―幕末「円ドル」戦争 (文春文庫)

大君の通貨―幕末「円ドル」戦争 (文春文庫)