シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

史上最大の詐欺 核融合 1

以下の文章は、2007年頃書いて、その後アップを忘れていたものです。若干、現在の状況と合わない部分もありますが、そのまま載せます。

以下、本文。


地球の生態系のほとんどの駆動源、太陽。その莫大なエネルギーの発生は核融合による。その意味では太陽は天然の「核融合炉」である。
核融合核分裂炉が実用化されるとほぼ同時に研究がスタートした。
核融合は鉄より軽い(周期律表で小さい番号)物質なら起こりうる核反応である。恒星の寿命の中で末期には鉄までの核反応が生じ、宇宙の軽元素供給源となっている。その中で水素が最も核融合を起こしやすく、太陽でも核融合のほとんどは水素核融合である。
軽元素の原子核は衝突してと融合、より重い元素の原子核に変化する。これが「核融合」である。水素の場合、水素原子核(陽子)4つが融合し、ヘリウム原子核を産み出し、陽電子2つとガンマ線(とニュートリノ)を放出する。このエネルギーを利用しよう、というのだが問題がある。
通常原子核は電子を周回させ原子を構成する。原子核同士が接触する事はない。原子核を剥きだしにするには、原子から電子を剥ぎ取る必要がある。そのためには電離するまで高温にする必要があるのだ。そのためには数万℃以上の熱を加えて「プラズマ*1化」する必要がある。ところが、それだけでは済まない。原子核は正電荷を持ち、原子核同士はクーロン力*2によって反発しあうためである。原子核クーロン力を打ち破って衝突するほどの運動エネルギーを原子核に加えてやる必要がある。また、一定の密度以上で無くては衝突確率が下がり、核融合は起きにくくなる。
核融合を起こす*3条件は、「プラズマ温度」×「プラズマ密度」×「プラズマ閉じ込め時間」で決まり、ローソン条件と呼ばれる。その条件を満たす事が核融合実現の第一歩になるのだ。
ところが、太陽はその巨大さにより水素を高温・高密度に保ち続けているが、地上ではその手段がない。どんな物質を利用しても超高温・高密度に保つ手段など無い。
プラズマ閉じ込め手段として考えられたのが大別して二つ。
・磁気閉じ込め
・慣性閉じ込め
である。この両者の違いと問題点は後に述べるとして、この二種を利用しても、水素で核融合を起こす事は将来に渡っても不可能である。クリアすべき条件が高すぎるからだ。
そこで、まず重水素*4三重水素*5を利用した核融合が目指すべき目標となった。重水素同士の核融合はD-D反応、重水素三重水素核融合D-T反応と呼ばれる。水素同士の核融合よりは条件が厳しくなく、特に三重水素が含まれる場合、条件は大きく緩和されるため、現在の核融合研究では重水素三重水素が利用されている。

1950年代、核融合爆弾の実現あたりから、未来のエネルギー源として核融合研究が開始された。当時の研究は全て磁気閉じ込め式であったが、閉じ込め磁気発生の構造によって幾つかの方式があり、ヘリカル式やミラー、トカマクといった方式が考えられ、特に旧ソ連で考案されたトカマク方式は現在でも核融合研究の主方式になっている。しかし、当初の目標を大きくずれ込み、核融合は実用化の目途が立っていない。
自分は60年代の生まれだが、子供時代、核融合の実用化は1980年代頃、と云われていた。つまり、10年もすれば実用化と考えられたのだ。ところが、その80年代には実用化は21世紀初頭に伸びていた。
90年代には21世紀半ばになり、現在では22世紀初頭、と云われている。
つまり、研究の進展と共に実用化までの期間は延びる一方なのである。

投資費用も莫大だ。初期の実験装置は、大学が自前の予算で建設できるレベルだった。日本のトカマク装置「JT60」は、日本の国家規模の予算がなければ建造・運用が不可能だった。今後建造される国際的な核融合研究装置「ITER」は多国間でなければ建設・運用・維持が困難な程になったことの表れである。現在では核融合研究には兆のケタの予算が必要なのである。

これは、核分裂反応の実用化と比較してみるとおかしさに気づく。
ウラン核分裂の発見が1938年。シカゴ大学スタジアム地下に世界最初の原子炉が出来たのが1942年。最初の商業原子炉が1956年。
一方、水素核融合の発見が1920年代。水素核融合爆弾の成功が1952年。現在に至るまで連続運転できる核融合炉は出来ていない。


いつまで経っても実用化の目途が狂いっぱなしで、開発予算も嵩む代物、核融合
研究は未知のものを探り当てる試みだ。核融合研究自体に文句は言うまい。しかし、現在の原子力政策、原子力擁護派に「核分裂炉は核融合炉が実用化するまでの繋ぎ」とか、「核融合炉が実用化すればエネルギー問題は解決」と考えているのは、楽天的に過ぎる、と指摘すべきだろう。


環境問題は今世紀中には今後の人類の進むべき方向を定めなければならない重大事だ。
勝ち目の薄い手札に自分の成り行きを任せるのは賢い態度とは云えない。
核融合に期待するのはやめるべきだろう。
しかも、例え核融合が実用化したとしても、それはエネルギー源として利用できる可能性は無いのである。以下、次回。

*1:物質の固体、液体、気体に続く、第4態と呼ばれる

*2:電荷間に働く力

*3:反応し続ける点火状態や発生するエネルギーが投入エネルギーを上回る状態などによって異なるが

*4:陽子1つ、中性子1つからなる水素の同位体

*5:陽子1つ、中性子2つよりなる水素の放射性同位体