シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

くだらないプロパガンダ

中部電力が酷いCMを流しております。
子どもを利用したタイプのは、相変わらず人を舐め切ってるな、というイメージしか受けませんが、もう一つ、中部電力の新入社員を主に据えたタイプのものがあるのです。
私はこれを見て激怒しました。私が何に激怒したのか、ごらんになってお考えください。


中部電力 テレビCM 原子力発電
https://www.chuden.co.jp/corporate/publicity/pub_library/tvcm/cm_nuclear/index.html


以前から取り上げていますが、原発で実際に現場で働くのは電力会社の社員ではなく、下請、孫請けなど多重請負の末端にいる人々です。彼らは、その労働環境ゆえに簡単にその実態が見えなかったりします。過去には、堀江邦夫氏の「原発ジプシー*1」や樋口健二氏の「闇に消される原発被曝者」などが出ていましたが、現在の状況はどうなのか。
「えふいち」は福島第一原発の作業に潜り込んだルポですが、そうではない現場、そして震災前の2000年代はどうだったのか。それに迫ったのが寺尾紗穂氏の「原発労働者」です。
そこには、およそ電力会社が宣伝したがる「安全に注意を払い、誇りをもって働く現場」などはありません。劣悪な労働現場、親請からの無理難題 これは結局電力会社のごり押しということだが 、外国人労働者、被曝問題。
残念ながら、堀江氏や樋口氏のルポの頃と変わるところが無い、むしろ、隠ぺいに走っている分悪くなっているとしか言いようが無い状況です。この間、スリーマイルもチェルノブイリも美方ももんじゅJOCも柏崎もあったにも関わらず、原発の現場というのは安全にも労働環境にも留意しない、むしろその状況の改善ではなく隠ぺいに走るのだ、という事が示されています。


原発現場での多重請負構造は震災直後から話題になっていました。そして、「なぜ直接雇用にしないのか?」という疑問は誰もが持ったと思いますが、寺尾氏のルポから推測できるのは、「直接雇用にしてしまえば、現場の問題点が明るみに出てしまう」事を電力会社も政府も怖れているということです。
多重請負の末端の人々には仕事の理不尽さを受け入れる他ありません。異議申し立ても何も通用しない。その責任問題は多重請負構造に吸収され、誰がそれをさせたのか、が曖昧にされます。電力会社の担当者が直接示唆しなくても、それとなく下請けに匂わせれば、多重構造の中で暗黙の強要は強まるわけです。
原発の隠ぺい体質には、多重請負構造が欠かせない、といえるでしょう。当然、直接雇用など行うはずがありません。「汚いものにはフタ」。暴力団が入りこむのも当たり前でしょう。
ただ、便利な隠ぺい体質維持法も、現実の危機に際しては問題を露呈させます。これも、第二次世界大戦時の軍部上層部の態度や、東京オリンピックにあたっての各種問題と同根に感じますね。


さて、私が中電のCMに怒った理由がお分かりになったでしょうか?
相変わらず、その隠ぺい体質を改善することなく原発再稼働に突っ走る電力会社が、新入社員を出しものにする。それ自体が隠ぺいの最たるものなのです。つまり、電力会社は何も変わっていない。反省の無いところに改善はありません。また、同じ事を繰り返すでしょう。それは、テクノロジーの問題では無いからです。そして、再び「想定外」を繰り返し、誰も責任を取らないでしょうね。
では。

原発労働者 (講談社現代新書)

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福島原発の闇 原発下請け労働者の現実

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原発ジプシー 増補改訂版 ―被曝下請け労働者の記録

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闇に消される原発被曝者

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見捨てられた初期被曝 (岩波科学ライブラリー)

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いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1) (モーニング KC)

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*1:現在は改題されて「原発下請け労働者の現実」