シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

美味しい地ビールを飲もう!

その日、私は自らの限界に挑もうとしていた。
朝8時に出立。若干冷え込む中、国道1号線をひたすら東進する。甲斐あって9時前後には静岡市内まで到達。そこから二つのコース選択がある。一つは北街道をひた走り、瀬名から静清バイパス側道に乗り換え、再び国1へ合流するコース。もう一つは国1をそのまま走り続け、清水駅近くから旧東海道へ乗り換えて旧国1へ進むコース。距離が短いのは前者だが、バイパス脇の道は走って楽しい道ではない。一方、国1を走るのも楽しくは無い。ただ、アップダウンが少ないのが利点だ。で、普段は速く走ることが目的では無いので、適当な裏道を抜けたりしていたのだが、その日は距離と時間を稼ぐ必要があった。そのために、どちらかの選択が必要だったのだ。選んだのは後者。
若干、賭けに負けたかな、と思ったのは意外なほど信号に引っ掛かったこと。ある程度スピードが出ても、信号に掛かるたびに台無し。自動車も同じだろう。街中を走る時の一番の障害は信号であるのだな。巴川に差し掛かったところで、旧東海道に合流すべく右折。しかし、道を間違えてしまい、若干のロス。このへんで小用を足したくなってきた。時間は10時。なかなかのペースだ。興津近くの公園で用を足すと、ペースを上げ始める。普段、あまり通らないバイパスの側道へ向かう。なんと、大人の一輪車のレース?をやっていた。たしかに自動車などの障害が無いから便利なんだろう。自分と同じサイクリング姿の自転車も見掛ける。いよいよ、自転車派増えているんだなぁ。本屋でも自転車雑誌が平積みになっている。その昔、Bicycle ClubかCycle sports、funrideくらいしか書店に置いて無くて背表紙しか見えない状態だった事を考えると、世の中変わったな、と感じる。
なんとか11時中には富士川を越えたいものだと頑張る。由比の港を駆け抜け、旧東海道をひた走り、蒲原の日軽金の近くで道を間違え、11時頃に富士川橋に到達。なかなかのペースだが、風が弱かったのが幸いしている。空気も暖かく富士市内の製紙工場から立ち上る煙も上へ伸びている。
富士川を渡り、「道の駅 富士」で暫時休憩。なんとか12時までには沼津市内へ入りたい。国1をさらに東進。新しくできたイオンモールには客が押しかけている。なんとバイパスが渋滞するほどだ。イオンから1kmほど離れた旭化成に臨時の駐車場が出来て、イオンまで徒歩10分、とか出ている。アホらしい。わざわざ10分も歩いてショッピングモールかよ。めでてぇな。その一方で富士吉原商店街を守ろう、とか云ってんだから。
田子の浦港を抜け、吉原駅を過ぎ、千本松原をひた走る。何とか12時までに沼津市へ入る。自分にとっては結構なハイペースだ。千本松原沿いは景観はキレイだが、単調な上に車が危険。焦りすぎていたのかハンガーノックの前兆が出る。少しペースを落としつつ糖分を補給。千本松原から沼津港の方へ向かう。
その目的地は、沼津港の近くにある、と載っていた。港の周りを捜そうか、と見上げたら、なんとそこがお目当ての店、「ベアードビール」だった。


「ベアードビール タップルーム
http://www.bairdbeer.com/j/


本当に港の真ん前。目の前には船の案内まで出ている場所。そこにベアードビールはあった。
ベアードビールはベアードさんが始めた、ごく少量のこぢんまりとした醸造所。定番の7種類と季節限定のビールがある。そのベアードビールが飲めるパブがタップルームである。何と一回の仕込量は30リットル。本当に少量なのだ。平日は夕方から深夜まで、土日祝日は昼から店を開いている。自分のような“人間のクズ”にはピッタリだ。
タップルームは建物の二階にあり、中は港に面したガラス窓が爽快で、かつカウンターとテーブル、そしてボックス席の小さな作りだ。本場のパブのように、注文の都度、お会計。
定番の7種
・ウィートキングエール
ライジングサンペールエール
・レッドローズアンバーエール
・帝国IPA
・アングリーボーイブラウンエール
・黒船ポーター
・島国スタウト
も興味深いし、季節限定メニューも試してみたい。が、なにせ自転車である。飲んで帰るわけにはいかない。泣く泣く、昼食だけとって帰ることにした。食事はメニューにあった「娼婦風スパゲティー」。あの、億泰が食べてたヤツ。パブはテキパキと働くお姉さんが一人で込み入った店内を切り回していたため、多少出てくるのに時間が掛かったが、実に美味かった。アンチョビとトマトがソースのコクを高め、ややモッチリとした太めのパスタとマッチする。ニンニクのアクセントも絶妙。充分に満足して店を出る。


後日の事だが、ビールを飲みにわざわざ出かけてきた。定番も季節限定もどれも、かなり度数が高め。なるほど、ビールだって醸造酒だから度数の限界はワインや日本酒と大差無いはずだ。我々が普段飲むビールは度数が低めのうちに発酵を止めて出荷してるわけだね。度数が高めがいいのか、低めが良いのかは人によるのだろうけど、ビールはどれもコクがあってまろやかで、美味いね。廻りも早いのが難だが、Taster(小振りのカップ)で少量ずつ試し呑みするのがオススメ。


店にはいつでも常連らしい人がいる。店内は禁煙だし、居心地の良さったらない。沼津じゃ、そうそう出てくるわけにはいかないけど、もし近所にあったら毎週のように入り浸るだろうなぁ。こんな店がある沼津が少し嫉ましい。


さて、タップルームで食事を済ますと、時間は既に14時近く。行きにかかった時間を考えても、ノンビリはしてられない。港の近くから千本松原の堤防に乗り、田子の浦港まで疾走する。千本松原堤防は、猫とカラス、そして散歩する人の多いところだ。でも、ところどころ廃墟やこんもりとした茂みなどがあって、「死体とかあったらやだな、」なんて浮かんできた。後日、近くで殺人事件被害者の死体が発見されたりして、複雑な気がしたのだった。
堤防の上は走りやすい上に、信号も車もいない。最大の敵は「向かい風」。この日は幸い追い風だったこともあって、順調に距離を稼ぐ。15時前に田子の浦を通過、富士川を16時前に渡ってしまう。なんとか日暮れまでに興津川を渡りたい、と考えていたが、見事に目標達成。帰りは静清バイパスの側道を走る。しかし、巴川と交差するところで巴川堤防沿いにコースを変更。そのまま国1に出ると、再び国道沿いに。17時のチャイムを聞いたのは古庄の近くだった。段々と気温が下がる中、駆け抜け、19時前には帰宅したのだった。
走行距離:約170km 走行時間:10時間強 

◆ベアードビールタップルーム
静岡県沼津市千本港町19-4
055-963-2628
平日:17:00〜24:00 土日祝:12:00〜24:00 火曜:休み