シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

自滅した調査捕鯨

捕鯨問題に関しては、「煮え過ぎちゃって困るの」な連中が涌くんで、しばらく放っておくつもりだったのだが、このところの鯨肉土産事件?(ってよんでよいものか)で、しきりにグリーンピース(以下G.Pと略)を叩きたがる連中がいるので。でも、ウネスくれたら黙ってるかも。


ま、正直G.Pの行為は誉められたモンじゃない。前から言ってるように、自分はプロセスを重視する。だから、非合法でも結果オーライ。とは云えない。その点では、G.Pが西濃運輸に謝罪するのは当然。
が、だ、「G.Pは犯罪集団」で終了して良いか、といえば、それも違う。
沖縄返還密約事件」という良い先例があるからだ。


西山事件wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%B1%B1%E4%BA%8B%E4%BB%B6


調べれば幾らでも判るだろうから詳しくは述べないけど、西山太吉記者がすっぱ抜いた沖縄返還時の日米政府間の密約、日本政府は米政府の返還に際しての返還料を立て替える、という大問題は、西山記者が非合法に情報を入手した外務省の情報提供者と男女の関係にあり、それを利用した、という問題にすり替えられ、西山記者は告訴されたのだった*1最高裁まで争ったが有罪決定。米政府の公文書公開に伴い密約の存在が確かめられた現在でさえも、日本政府は密約の存在を否定、西山記者の名誉は回復されていない。


で、皆は西山氏をどう評価する?「泥棒の真似をしたから有罪」で済ますかい?少なくとも彼が提示した問題に対しては向き合う必要がある、と考えるんじゃないのかな。


鯨肉事件も同じ。G.Pの行為をもって、鯨肉の横流し としかいいようがない を無視しても良いわけではない。そうして考えると、鯨研のコロコロ変わるコメントも、共同船舶との食い違いも、見逃せるような話じゃないだろうに。

・「土産ない」一転「10キロ無料で」 鯨肉疑惑で船会社
日本の調査捕鯨で捕られた鯨肉を乗組員が無断で持ち出したとされる疑惑で、調査船を運航する共同船舶(東京)は15日、「土産」として全乗組員に各10キロを無料で渡す慣行があることを明らかにした。14日までの取材では、無断持ち出しの可能性を否定した上で「土産もない」としていたのを一変させたものの、調査主体の日本鯨類研究所(鯨研)などの説明とはなお食い違いをみせている。

 共同船舶によると、土産はベーコンの原料となるウネスという部位8キロと赤身2キロほど。調査団の乗組員は約250人で、計2.5トンになる計算。さらに「1人あたり約3キロは有償で買える。買わない人の分を別の人が買うこともできる」としている。

 鶴本多次郎常務は「土産は商業捕鯨のころからの慣習。土産分にあたる代金は鯨研に支払っており、問題はない。量も妥当と考えている」と話した。

 だが、土産を渡すのは下船前。本来なら調査船が帰って約2カ月後に水産庁が販売価格を認めて市場に出回るが、それより前に鯨肉が動くことになる。鯨研も、土産分の鯨肉について、共同船舶に販売しているとは説明しておらず、鯨研が1人数キロ程度を渡しているとしてきた。

 調査船で製造部門の責任者を務めていた60代の元乗組員も「土産はもらっていたが、一切れ750グラムの赤身が2〜3切れだった」と語る。

 農林水産省の白須敏朗事務次官は15日の記者会見で「(1人当たり)10キロなら特段の問題はない」と土産の慣行を容認した上で、「きちんとした費用負担なり、明確な形の処理がされていないのであれば、きちっと対応しなければならない」と述べ、調査を徹底していく意向を示した。

http://www.asahi.com/national/update/0515/TKY200805150301.html

・鯨肉持ち出し:調査船会社が「無断」否定 乗組員の土産用
調査捕鯨船の乗組員が鯨肉を持ち出したと環境保護団体「グリーンピース・ジャパン」(GP)が指摘していることを巡り、水産庁から調査捕鯨を委託された「共同船舶」(東京都中央区)は、社内調査の中間報告をまとめた。GPに「証拠品」と訴えられた23.5キロの鯨肉について無断で持ち出したものではないとして、近く水産庁に報告する。

 同社によると、北海道函館市の乗組員(51)が、共同船舶から土産として渡された鯨肉に、同僚3人から譲ってもらった肉を加え2箱に分けて自宅に配送。このうち1箱がGP側に渡ったことを確認した。配送会社は、この1箱について「盗まれた」として被害届を出している。

 共同船舶は乗組員に1人約10キロの鯨肉を土産とするほか、3.2キロまでの購入を認めている。【奥山智己】

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080519k0000e040065000c.html


だいたい、“同僚三人から譲り受けた肉をまとめて段ボール詰めして送っただけ”って、本気でそんな言い訳しようとしているの?それを信じようとしているわけか?
まず、


・鯨肉は鯨研の所有物であって、共同船舶が勝手に土産として渡す事自体問題。土産として認めているにせよ、一人10kg、というなら、総量はトンに及ぶわけだから、キチンと帳簿記載されていなければならない。


・共同船舶には鯨研=水産庁から委託費が出ているわけで、公費も投じられている。であれば、市場に出る前の横流しは問題がある。


これらの問題を“同僚三人から譲り受けた肉をまとめて段ボール詰めして送っただけ”って、すげぇな。譲った三人は10kgもの鯨肉を気前よくくれてしまうんだ。末端価格で100g1900円の代物なのに。しかも、一人に対して。で、貰った人は、そんな大量の鯨肉(40kg超だよ)をどうするつもりなんだ?慣行としての土産なら横流しは論外の筈だが40kgは家族で消費できる量じゃないだろ。もちっと上手な言い訳しろっての。


それにしても、G.Pを叩きたがる連中ってのは、とことん頭が悪い。G.Pをいかに日本国内で犯罪集団呼ばわりしても無意味なのだ。なぜなら、この問題はIWC総会で持ち出されるのは目に見えているからである。G.PはIWC総会にもオブザーバーとして参加し、各国の環境政策に影響力を及ぼすNGOだ。その指摘を総会で受ければ、日本はIWCにおいて立ち往生する事になる。
だからこそ、内心はともかく、政府も問題視しているわけで

・調査捕鯨:鯨肉横領で告発状受理

 調査捕鯨船の乗組員が鯨肉を持ち出したと指摘している環境保護団体「グリーンピース・ジャパン」(GP)は20日会見し、業務上横領容疑で東京地検に提出した告発状が受理されたと発表した。また鯨肉の入った段ボール箱を無断で回収した行為について、西濃運輸岐阜県大垣市)に文書で謝罪したことも明らかにした。

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080521ddm012040172000c.html


横領扱いで取り調べが行われる事になる。


ただでさえ、日本の調査捕鯨は“形を変えた商業捕鯨”と批判されている。この批判はもっともなもので、


・モラトリアム直後から開始し、毎年行い続けている(JARPAからはじまって、現在JAPRA?)
・年々、捕獲頭数が増えており、一般的野生動物調査の常識と異なる(現在はRMS算出値のほぼ半分に達する)
・なぜか、非致死性調査を行わない(他国による非致死性調査の結果は論文誌に掲載)
・調査といいながら、学術的調査がほとんど行われず科学的成果が無い(論文誌に結果が掲載されたことがない)


詳しくはAdarchismさんが丁寧に説明されている。


・F x x K!!!(3500-13-12-2-1)
http://3500131221.blog120.fc2.com/blog-entry-9.html

・スネちゃま捕鯨を語る(3500-13-12-2-1)
http://3500131221.blog120.fc2.com/blog-entry-15.html

告発の行方(3500-13-12-2-1)
http://3500131221.blog120.fc2.com/blog-entry-16.html


この他、ni0615さんが、今回の事件に関して詳細な検証を行っている。


安禅不必須山水
http://ni0615.iza.ne.jp/blog/


今回の事件は、形を変えた商業捕鯨、という指摘を補強するもので、日本の立場はますます悪化するだろう。内向きの話をいくらしても国際的には通用しない、というのは、ウヨの戦争責任(南京事件とか従軍慰安婦)問題に対する態度や、人権問題(死刑制度やマイノリティーの権利)とも重なるものがある。


・国連人権理事会の質疑(村野瀬玲奈の秘書課広報室)
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-717.html

・死刑めぐる鳩山法相の国会答弁、EUが異例の抗議文
鳩山法相が4月の国会答弁で、欧州連合(EU)が死刑制度への持論に理解を示してくれたと説明したことに対し、駐日欧州委員会代表部が「われわれが鳩山法相に伝えたことを国会答弁は反映していない」として、法相に異例の抗議文を送ったことがわかった。法務省は「大臣は実際にあった発言を答弁しただけだ。事実を曲げたようなことはない」と反論している。

 鳩山法相は4月11日の国会答弁で、同月8日にEU27カ国の大使を前に都内で講演した際の質疑に触れ、「冤罪による死刑だけはないようにというのが、彼らから言われた唯一の意見だった」などと発言した。

 この答弁に対し、EU側の5月15日付の抗議文は「EUはいかなる場合の、いかなる状況での死刑にも反対している。大臣答弁の解釈は、先日大臣に伝えた加盟国の死刑に対する立場を反映したものとは言えない」と批判した。

 死刑制度をめぐっては、昨年12月の国連総会決議で、死刑執行停止を求める決議が初めて可決されており、EUは共同提案者となっている。(市川美亜子)

http://www.asahi.com/politics/update/0516/TKY200805160257.html


いったい、どうするつもりなんだ?“オレたちは屈しない”と威張れりゃ満足か?そんなことは、てめぇの部屋に籠もってやれっての。迷惑なんだよ。


クジラを心おきなく食べるなら他国との軋轢を解消する必要がある。そのためには、調査捕鯨を止め、日本近海での観光を兼ねた付加価値つきの捕鯨に留めるべきだ。


追記:そういえば、ノビーが張り切ってるね。クジラの前に、従軍慰安婦問題や沖縄集団自決でどう恥かいたか釈明すりゃいいのに。加えて地球温暖化懐疑論付き、とくれば、単なる電波さんだな。奴さんの本業の方はオレの専門外だが、あまりにデタラメが多すぎる事を考えると、そちらでもダメダメさんじゃないのだろうか。

*1:この時、西山記者を叩きまくったのが週刊新潮、当時から腐ってた