このところ騒ぎになっていたらしい話。緊急医療のトリアージと経営をごっちゃにして正当化する人、に関してはみんなが突っ込んでいるので細かく触れない。
ケーキを売ればいいのに - 福耳コラム
http://d.hatena.ne.jp/fuku33/20080522/1211444127
しかし、トリアージの現場というのは、例えばトリアージ判定員の家族が運ばれてきても「これは処置不可能」「こちらにリソース投入すれば助かる」と判定しなければならない状況もあるわけだ。家族を見捨てても多くを救う、これは“正しい判断”だよ。確かに。だが、同時に“かわいそう”でもある。そのギリギリの選択と覚悟こそがトリアージの本質なのであって、“自動的に”リソース配分の最適化、なんて話とはわけが違う。割り切った行動と割り切れない感情の相克こそが重要なのであり、その違和感を大事にする事が、トリアージを要求しなくてすむかもしれない次を生むのだ。
つまり災害で云えば、罹災者を減らすであるとか、全員に充分に割けるリソースの確保であるとかなわけだ。
トリアージが割り切れない感情の異議申し立てを拒絶するとなれば、改善の動機付けは期待できなくなるだろう。
学生達もトリアージがダメだ、と云っているわけではない*1。“かわいそうだ”と云っているのである。「人権侵害だ」と云っているわけではなく、「人権侵害ではないのか」と問いかけているのだ。学生達はトリアージの本質を理解しているがゆえに、違和感こそを表明し、かつ行為自体を否定してはいない。その違和感こそを大事にしてやるのが教育者の努めだろうに。
ましてやそれを「経営論」にくっつけようなんて。トリアージとくっつければ、免罪できるってか?
で、プロフィールを見ると、
http://d.hatena.ne.jp/fuku33/about
とありますな。
静岡文化芸術大学というのは、浜松にある「公設民営」大学なのだが、実質、「県営大学」であることは地元では有名。県や浜松市が手を引けば潰れるのは確実だ。だって、「文化芸術」だよ。いったい、何を教えているのだ?と疑問に思う人は多かろうが、実際、大学の名に見合うような中味は無い。浜松財界と静岡県知事との取引で出来た大学、との話。ほら、空港やらなにやらに関して不満が募った浜松財界を懐柔するためのな。
その一方で静岡県の財政状況は悪化の一方。各種基金を取り崩し、病院の民営化にさえ踏み切る状況だ。
【参考】
静岡県庁の光と闇 〜よりよき未来のために〜
http://www2.ocn.ne.jp/~sizuoka1/index.html
同じく、資金を出している浜松市も同様。
【参考】
スピード売却不満続出/浜松駅前・フォルテ
http://mytown.asahi.com/shizuoka/news.php?k_id=23000120803180001
だから、大局的に見て静岡文化芸術大学への静岡県と浜松市の支出を止める事を提言した方がいい。
(経営的)トリアージとして。よもや反対はしますまい。
ま、結果として静岡文芸大が潰れるのは必至だろうけど、それは致し方無いでしょう。
「全体や組織から見た最適」で考えれば、静岡文化芸術大学への支出などはお話にならないのだから。
より多くの県民にリソースを割り振るには、文化・芸術などという大学に優先順位などありはしないでしょ?
私は行き場のなくなる学生やクビになる講師陣は「かわいそう」だとは思いますけど、それは「ナイーブ」な意見なんでしょうね。
きっと、fuku33氏は率先して静岡文芸大の職を辞する事でしょう。トリアージとは、自分の不利益さえも被る覚悟だ、というのは上で説明したとおりですから。
経営を医療のトリアージに繋げて話すなんてのは、自分がトリアージで優先される人間だ、とデフォルトで考える傲慢さから来るんですよ。
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*1:fuku33氏に書かれた内容による