シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

自滅する地方 富士市編

ども。ご無沙汰しております。シートンです。
さて、今まで静岡県内の諸市(町村)について、郊外化(=中心市街地衰退)の実態について述べてきました。今回取り上げるのは富士市です。
富士市静岡県浜松市静岡市に次ぐ規模の市です。富士山と駿河湾に挟まれ変化に富んだ地域であると共に、古くから製紙産業で栄え、現在では自動車関連産業も多く存在しています。
つまり、その条件は実に浜松市に似ている、と云って良いでしょう。昨今、減少しがちとはいえ、企業法人税によって税収は豊か、なはずの都市は果たしていかなる地域なのか。その実態が見えると、私が述べてきた懸念というものがハッキリとしてくるでしょう。
まずは、お馴染み「イオンモール」。国道1号線バイパス沿いに広大な駐車場を擁した複合施設です。


もちろん周辺は典型的なロードサイド。このイオンモール、凄いのは目の前の広大な駐車場だけじゃ足りなくて、徒歩5分くらい掛かるところにも駐車場があるのです。さらには、無料バス送迎も。
これもイオンモールが魅力的で品揃え豊富な店舗を入居させているから、だけでしょうか?


富士市静岡県で最も通勤における自家用車利用率が高く、県内一。富士市もこの事態を憂慮し、公共交通機関を使おう、なんて呼びかけてますけど、何が自家用車利用率を引き上げているのかには無頓着です。富士市のこの事態は富士市が豊かな財政を基に郊外化を進めた結果なのですから。


富士市広報 あなたはバスに乗りますか?
http://www.city.fuji.shizuoka.jp/hp/page000013600/hpg000013548.htm


こちらは国道脇の景色。正面に富士山がバッチリ見えます。現在、道を拡幅・延伸中。市内の至るところでこのような風景が見られます。

これと併せて、地域(再)開発、区画整理も活発に行われています。上の写真は富士駅新富士*1富士市役所より2kmほど離れたところにある「ロゼシアター」。左手は公園です。つまり、市の中心部と云っても良い地域です。しかし…、

ここから富士駅へ向かうバスの本数は写真の通り。公共交通機関が衰退した地域にお馴染みのコミュニティバスも走っています。公共文化施設に対するアクセスがこんなもの?ちょっと驚きますね。でも、理由はカンタン。富士市の人はバスに乗らないのです。このロゼシアターの周辺を見れば一目瞭然。

典型的なロードサイドなのです。さすがの静岡県でも公共文化施設がこれほど自動車指向なのは珍しい。このロゼシアターにも歩いてくる事は出来ます。ですが、その道筋は歩くには殺風景としか言いようがない。あの、浜松市でさえも、富士市のこの状況に比べればマシ、というものです。
このロードサイドを東に進むと富士市役所が見えます。富士市役所の前のバス停も写真の通り。

市役所から駅へ向かうバス本数がこれだけ?こうなると市の中心、というものが富士市には無いのかも知れません。従って少しも集約されていない。
市役所前の西友がご覧の通り。

平屋で屋外駐車場を備えた造り。中心市街に付きものの、現在では減少しているとはいえ、デパート、というものが無いのです。

市役所前もこのようなロードサイドが広がっている、という現実。ユニーの店舗もご覧の有様。現在、取り壊し中。


下の写真は富士駅隣にあったイトーヨーカ堂跡地。駅周辺で買い物が出来る場所が無い、という現実は凄いですね。この買い物難民がバスに乗ってイオンへ向かうのです。

駅前のシネコンも取り壊しとなりました。

新富士駅は駅前にいきなり駐車場。全然商業施設らしいものがありません。


このような状況で当然のように商店街も衰退しています。下は吉原商店街。かつての富士・吉原地域の商業中心地です。



商店街を通るバス本数もこんなもの。

テナント募集を掛けてますが

維持しきれず空き地、駐車場になった区画も多数あります。

この地域ではかなり早くから、吉原商業高校の生徒の力を借りたり、若い人に店舗を貸し出したりしてます。


東海道・吉原宿 吉商本舗
http://www.yoshiwara.net/npo/honpo/index.html


テナント料が安いためか韓国料理店も多い。B級グルメとして「つけナポリタン」でも頑張っています。


つけナポリタンWEB
http://www.tuke-napo.net/


でも、商店街の賑わいを盛り返すまでには至らない。商店街衰退に関して商店街の努力欠如に帰する人々が見受けられますが、その人たちが主張するような対処法はとうに行われています。単にそれが問題では無いだけの事です。


上の写真は富士市の大渕街道を登った広見という地域から市内を見渡したところ。富士市は現在でも郊外化を進め、富士宮市との境界近くや、富士山麓の傾斜地まで宅地化しています。広見もその一つ。ここよりもさらに上にも宅地が広がっています。この地域が26万の人口とは信じがたい。あまりに広大な地域に人を分散させすぎています。それに合わせて道路を造り、拡げ、延ばした。結果として自家用車通勤の現実があり、商店街衰退があるのです。

でも、富士市はまだ問題に気づいていない。懲りていないですね。もう一旗挙げようという気満々です。

写真は富士山麓クヌギ林。つまり里山です。しかし、そのすぐ脇は

第二東名建設現場。国道139号線、西富士道路と交差し、富士山麓愛鷹山麓を抜ける地域は第二東名を当て込んでの開発が進んでいるんですね。



この周辺は国道139号線沿いでもロードサイド化が進んでいます。


もっとも駅に近づいても

あまり変わりませんが。


したがって駅前商店街はこんな感じ。地方はどこも同じですが、居酒屋ばかりになってます。酷くなると関東北部のように風俗店が駅前に軒を連ねることになるのでしょうか。


財政状況がどうであろうと、都市計画や再開発事業がどう推移しようと関係ありません。つまり、自治体のコンセプト自体が間違っているのです。これが間違ってはいない、進むべき方向なのだ、というならそれもいいでしょう。でも、それならば「商店街・中心市街地活性化事業」や「公共交通機関支援」などに知恵と予算を費やす状態はおかしいはずです。矛盾する政策を進めている事にいい加減気づくべきです。


追記:

広見には興味深い光景がありました。僅かばかりでしたが頑張っている商店街があったのです。


ここには団地があります。そのためささやかとはいえ商店街が成り立っているらしい。

ここに地域再生の鍵がある、と私は考えています。次回は団地について取り上げます。
では。

*1:JR東海道線身延線富士駅東海道新幹線新富士駅は1.5kmほど離れており、鉄道による接続はありません