シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

旅をするとは歩くこと その2

このエントリーは


旅をするとは歩くこと その1
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20090506/1241618888


の続きです。


突っ込まれた土産物屋は日本の土産物屋と大差ありません。商品が過不足無く陳列されています。店内にいた軽薄そうなオッサンが
「どうぞどうぞ。ようこそお越し頂けました。お茶でもいかがです?」
といった具合に席を勧めます。酔っぱらっているせいもあって腰掛けると席の前、横をガッチリ固められます。お前らデート商法かよ。
オッサン、ジャパネット高田の社長の倍速ぐらいのテンポでみやげの紹介をしていきます。品がいかに優れているか、を説明してくれるのですが、正直、脳が煮えているため、さっぱり理解出来ません。適当に相槌打っていたら目の前にサクサクと品が積まれていきます。適当なところで止めておかないとどうなるか見当も付きません。
「ま、そんなもので」
と、韓国海苔、ふりかけ、高麗人参、海苔チョコ、とジャパネット高田が示すのを適当に間引いて交渉していきます。結果、140,000ウォン。やられました。海苔やなんやで1万円越え。しかし、今更抵抗する気にもなれません。泣く泣く払います。Aさんニッコニコ。調子づいたAさん、続いて
「これから、どこ行かれます?そうですか、疲れたならマッサージがオススメですよ。」
もう、大概ホテルに帰って寝たい…。しかし、強引なAさんに、さあさあ、と促されると付いていかないと、という気になってしまう。


ミョンドンの裏道をダラダラ歩くと、至る処に日本語の看板が並びます。客引きまで日本語で話しかけてきますし、聞こえてくる声も日本語。どうやら周辺の通行人の大半は日本人観光客のようです。
その間もAさんと会話します。
「日本人、お酒に弱いですね。」
「…そうですね。オレはあまり強い方じゃないですね。」
「韓国では女性もよく飲みますよ。」
「じゃあ、飲みつぶしてやれ、なんて考えても、返り討ちに遭っちゃうかな。」
「あなたじゃ、勝負にならないですね。」
あっさり、邪な野望を潰されます。
「あと、韓国では食事は一人ではしません。必ず複数でします。一人で食事をすると変わり者扱いです。」
「そ、それはなかなかに居心地悪いですね。」
Aさん、こちらをジロジロ見ると
「あなた一人で食事しますか?」
「まぁ、一人で外食は珍しくないですね。」
「奥さん、いないですか?」
「…まぁ」
「なぜ結婚しないですか?仕事も持っているんでしょ?」
えー、それは“女性”の側に尋ねてください。


「じ、じゃあ、食事をするのには誰か誘うんですか?」
「そうです。誘い合って食事するのが普通ですね。」
ようやく気づいたことがあった。映画「オールドボーイ」の中で主人公オ・デスが海鮮料理店で食事をするシーンがあるのだが、なんか意図がよく読めなかったのだ。あのシーンは、韓国ではオ・デスの孤独さを示すシーンになっていたのだな。


しかし、韓国は独り者には居心地が悪いようだ。一人旅しなくてよかったかも。


しばらく歩くと雑居ビルに到着。上階へ上がると、Aさん、なにやらフロアの店員と話をしています。交渉が終わるとこちらへ向き直る。
「それでは、私は帰ります。」
!…。
「帰りは店が車を出してくれます。ホテルも説明しておきました。それでは、よい御旅行を。」
…そんな。幾ら何でもカモを土産物屋とマッサージに突っ込んだからって、それは無いでしょ。
ちょっとごちゃついた感じの待合室に取り残されます。


狭く入り組んだ部屋割り、趣味の悪いインテリア、人相の悪い店員、フロアに漂うセッケンの香り、…まったくこれじゃ、ソープランドじゃないか。そしたら、「あちらで着替えてください。」と、店員(これは英語)。


財布とパスポートを身に付けたままバスローブみたいなものに着替えると、簡易ベッドに案内されます。どうやらここでマッサージされるらしい。綺麗どころがマッサージしてくれるのかしら、などと期待していたら、その案内してきた人相の悪いニイチャンが、そのままマッサージに取りかかります。


つ、つまんねぇの。


それでも、さすがにマッサージは巧みです。気持ちよさに眠りこけてしまう。揺さぶられて起こされると、手足を何か湯のようなものに浸けられます。白く固まるパラフィンらしい。そのまま袋にくるまれて再び放置。体がホカホカとしてきますけど、考えればそんな事は希望していなかったんですけどね。
パラフィンを取り去ると、「ほら、手足がツルツルになるでしょ」
いや、それもどうでもいいですけど…。


料金は70,000ウォン。まぁ、値段的には高くも安くも無い感じか。でも、これなら日本でマッサージ受けるのと変わらないなぁ。


再び待合室に案内されて帰りの車を待っていると、韓国美女が入ってきます。仕事帰りの人かな、話しかけてみようか、なんて考えていると、やはり待合室の関西弁を喋るオッサン達に話しかけています。


なんだ、同じ観光客のガイドか。でも、どうせならこういう美人ガイドがよかったな、などとつまらない事を考えてしまいました。オッサン達は、ガイドさんに「次は○○に行きたいンやけど…」などと交渉しています。げ、元気だ。携帯で次の予約を取り始めるガイドさん。どうも、こういう光景は苦手だ。その間も続々と日本人観光客が入ってきます。どうやら、ここも定番のお店らしい。


ホテルへ戻ったのは深夜1時頃。疲れからか、そのまま眠りこけてしまいました。
結局、韓国最初の夜は「定番観光コース」を案内されたのでございます。


つづく。

オールド・ボーイ プレミアム・エディション [DVD]

オールド・ボーイ プレミアム・エディション [DVD]