シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

貧困に向き合う

先ほど終わったNHKスペシャル「権力の懐に飛び込んだ湯浅誠 100日間の闘い」
相変わらず湯浅氏の頑張りに頭が下がると共に、自らの及ばなさを痛感する。
内容は対貧困活動に邁進し、「派遣村」で一般にも名が知られるようになった湯浅誠氏が、民主党政権に請われる形で貧困対策に取り組む3ヶ月間を追ったもの。


湯浅さんはまず「ワンストップサービス」の実現に邁進する。ワンストップサービスは、はてなでちょっとでも貧困問題に興味のある方なら耳タコであろうが、従来は省庁や自治体による縦割りになっていた就労支援、生活保護、住居問題などを一本化しよう、というもの。しかし、とりわけ自治体は生活保護との組み合わせを殊の外嫌がり、全然進まない。生活保護を受け付けてしまうと財政を圧迫する、という理由だ。ここで、悪名高き「北九州方式」*1を取る北九州市の副市長が映ったのは意識的であろうか。
結局、生活保護申請は外す、という妥協を呑む形でワンストップサービス窓口設置を進めるのだが、ここでも自治体の「突出したくない」の想いが実施を阻む。手を挙げた自治体に失業者が詰めかけるのではないか、と懸念しているのだ。結局、どこも様子見。地方議員のつてを探って、実施してくれる自治体を募る湯浅氏。ようやく、千葉県市川市が了承、続く形で千葉市市原市が続く。全国で204カ所行われたワンストップサービスは、しかし意図的なサボタージュかそれとも無配慮なのか判らないが、広報不足によって相談者が伸びない。
省庁や自治体の縦割りや当事者意識の無さは、結局昨年末から今年にかけて再び行われた「派遣村」でも問題となる。たぶん、再放送があると思うので、見ていない人は見て欲しい。


さて、少し箇条書きで感想を。


自治体の当事者意識の薄さは本当に致命的。毎年、この時期の地方自治体予算案を見てゲンナリするのは、一般会計で約2割が「土木費」である、ということ。このブログでは何回か、地方自治体の「開発したがり」が地方を自滅に導く、と述べているのだが、一般会計で2割、特別会計も含めれば、生活保護など福祉に回せる分は優にあろうに、と思う。地方自治体の予算に対する優先順位付けがおかしいとしか言いようがない。マスコミが云う「地方の声」とは、決して「地方住民」の声などでは無い。


・登場した山野井厚労省政務官はよく頑張っていたと思う。そして、菅副総理の支えが無ければ、この程度でさえ実施できなかった可能性が高い。大マスコミ様の報道では決して菅氏の評価は高くないが、こうした当事者視点を持ちうる政治家がいるかどうかは大きいと思う。逆にいえば、自民党政権が続いていれば、こうした対策でさえ取られなかったであろうし、対策を阻む壁は長年の自民党によって築かれたものだ。自民党は完全に消滅して、クソ連中は残らず「失業」して欲しいと思う。連中の自己責任、というヤツで。


・対策が貫徹するかは、湯浅氏も述べていたが、我々が対策を含めた社会福祉政策というものをどう捉えるか、支持するか、に掛かっている。失業すれば住まいを逐われ、住まいが無ければ職を見つける事も出来ず、職が無ければ住まいを見つけられない。完全なデス・スパイラル状態なのに、「自己責任」「甘え」で済ませよう、というスタンスを一般人がとり続けるなら、それは必ず自分たちにも降り掛かる。情けは人のためならず、だ。

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*1:生活保護申請を極力受理しない。厚生労働省によってモデルとされた