シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

キャラクター・オリンピックの作り方。

こんばんは。バンクーバーではなく、ヴァンクーバー。ヴァンクーバーといえばマイケル・スレイド。オリンピックがいつ終わったのかも気付かなかったシートンです。


それにしても驚きました。オリンピック。フィギュア女子の視聴率、30%越したんですって?
真っ昼間だったのに、みんな見てる余裕あったんですね。こちとら、しばらく閑無しでしたよ。


浅田真央の演技の瞬間、視聴率46%
http://www.asahi.com/sports/spo/TKY201003010153.html

浅田真央選手が銀メダルをとった2月26日昼のバンクーバー五輪フィギュアスケート女子フリー中継番組(NHK総合)の平均視聴率が、関東地区で36.3%だったことが1日、分かった(ビデオリサーチ調べ。以下同じ)。これまで今大会最高だった開会式の25.4%を超えた。他地区では浅田選手の出身地名古屋地区が最も高く40.0%で、関西地区は33.9%、北部九州地区は30.5%、札幌地区は38.9%だった。

 関東の瞬間最高視聴率は、浅田選手の演技中と得点発表直後に記録した46.2%。浅田選手と金メダルを争った金妍児キム・ヨナ)選手の演技中での最高は45.6%だった。他地区の瞬間最高は名古屋地区が50.6%、関西地区は46.3%、北部九州地区は42.0%、札幌地区は47.7%だった。

一方で相変わらず「日本選手の活躍」が見込めない競技はほとんど扱われないですね。ガックリ。


さて、私、以前のエントリーで国母君の話を持ちだしたところ、日本選手を応援して何が悪いのか、というような意見を幾つも頂きました。全然悪くないッスよ。だって、自分だって応援しますからね。
私、サッカーやりますし、好きですから、当然地元のJチーム、エスパルスジュビロを応援しております。静岡出の選手、中山雅史三浦知良、そしてもちろん長谷部君あたりを思いっきり応援するわけです。むしろ、日本代表など「小野伸二も藤本も前田遼一も使わない代表などつまらん!」と思っているくらいです。日本とかいうデカイ括りより、地元の方が大事なんスよ。
だから、不思議なのはなぜみんながあれほど簡単に「日本選手」という大雑把な括りに入れ込めるか、なんですね。地域じゃなく、日本、という括りを受け入れられるなら、じゃあ、アジアという括りは受け入れるのか、世界はどうよ?と疑問に思ってしまいます。
まぁ、日本代表大好き、でもいいですが、少し引き気味に考える時があってもいいんじゃないですかね。


もちろん、それを受け入れさせる演出ってのはマスメディアでさんざん使われているわけでして、そこで過剰なまでの(日本代表選手の)キャラクター化とドラマ化が成されています。
件の国母君だってそうですよね?朝日新聞の国母擁護記事を見た時呆れてしまいました。「実はイイ奴」だって。馬鹿げてるよ。服装もクソも無いんです。云ってみれば人間のクズみたいなヤツでも関係ないんです。
また、サッカーの話ですけど、サッカーの神、マラドーナはご存じの通り、ロクでも無いヤツです。人格には問題あるし、麻薬には手を出す、自己管理も出来ない。でも、全然関係ありません。W杯86年メキシコ大会を独壇場にした、そこにマラドーナというプレイヤー全てを私は見るのです*1。スポーツとはそういうものであって、それ以上でもそれ以下でもない。ほんの僅かな時間のプレイに全力を出し切るためにプレイヤーは己の全てを注ぎ込むのであって、そのプレイの瞬間さえ良ければそれでいいのです。逆に言えば、私はスポーツ選手が政治家転向だとか芸能人になることには冷笑的です。スポーツに裏打ちされた政治センスだとかタレント性なんてものはまったく評価しない。
でも、マスメディアは過剰なばかりの選手のキャラクター性を追求し、ドラマをそこに求めますよね?その裏返しとしての「こうあって欲しい」理想像の押し付け。朝日の記事は国母を庇っているようで、実は「実はイイ子」を押し付けているに過ぎないのです。


「国母は命を救ってくれた」 スノボ仲間が語る素顔
http://www.asahi.com/sports/update/0217/TKY201002170501.html


もう、日本においてはスポーツ競技は、「キャラクター付けされた選手が、選択的筋書きのあるドラマを演じる場」でしか無いような気がしますね。もちろん、他国だって似たりよったりなのかもしれませんが。
そういう意味で一番酷いのはTBSです。オリンピックに限った話じゃなく、総合格闘技の扱いや、ボクシングの亀田一家、果ては「世界陸上」まで。
自分のエントリーについたコメントでこういうのがあって、手を叩いてしまった。


http://twitter.com/ghid/status/9207627161

思ってたこととほぼ同じことがここにあったけど→「国母の件では、断然やくみつるを支持するね」 実はフラットに競技内容に注目しようとすると織田裕二チックになってしまいそうな件


毎回「世界陸上」を見るたびに、番組の演出と司会織田裕二のちぐはぐさ加減、に違和感がありました。一般には“過剰すぎる感動”の織田裕二として捉えられています。でも、織田裕二の言葉をよく聞いてみると、競技の面白さを伝えようと懸命だったのが判ります。だけど、TBSの演出は選手のキャラクター性とドラマ性を打ち出す方向に向けられていました。「明日にきらめけ」。その齟齬が番組の演出を読めない織田裕二と演出を体現している中井美穂の空気の差を生んでいたように思いますね。段々、織田裕二も競技性について触れるのは“受けない”と悟ってきた感もありますが。


ほりのぶゆきの漫画「天然の馬鹿力」の中で、斜陽のプロ野球チームが、人気回復のためにチームメンバーのキャラを立たせよう、という場面があります。キャラ立ちしたチームというのがどういうものなのか。漫画のバカバカしさは、そのまま現在のスポーツビズの姿でもあります。

江戸パープルズ 究極のラインナップ


・一番センター 市村平太 子どもの頃山に置き去りにされ狼に育てられる 俊足

・二番セカンド 柿丸英三 ひょうきん者でいつもみんなを笑わせる

・三番ショート 秦祐三郎 伊賀の抜け忍 毎試合野球だけではなく刺客とも闘わねばならない

・四番サード 九十九浩太郎 監督兼四番打者 一度引退したがサイボーグとなって奇跡的に現役復帰

・五番ファースト ジョー船橋 日系二世 自分の出生の秘密を知るために日本にやって来た

・六番レフト 高明寺真二 今季トレードでやってきたまだ敵か味方かわからない

・七番ライト 高石梨花 自称チームの紅一点 実は元二丁目のオカマチーム一のパワーの持ち主

・八番キャッチャー 岡倉天心 推定年齢108さい不老長寿の秘伝により気だけは若い

・九番ピッチャー 多門旭 数々の魔球を駆使する 野球をしつつ友のかたきを探す


選手を全力で「キャラ立ち」させ、過剰な「ドラマ」を盛り込む「イベント」。今年のサッカーW杯もそうなるのかと思うと気分が滅入ってきます。試合だけ見せろ。さんまもペナルティも土田も「亀田」も「嵐」もいらん。


外へ出掛けて通りすがりに堤防から見下ろす河川敷グランドの見知らぬガキ共のサッカー試合。テロップもBGMもプレイバックもスロー再生も選手紹介も解説もおちゃらけも無い。連続する一瞬の中でガキ共がボールを懸命に追っかけ回している。ゴールを決めてホイッスルが鳴り、喜んで駆け寄るガキ共と、うつむくガキ共。気付くと10分も見ていた事に気付く。これがスポーツ観戦の醍醐味ってヤツじゃないかな、と思う。

マラドーナ自伝

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ガッザの涙―フットボーラーポール・ガスコイン自伝

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髑髏島の惨劇 (文春文庫)

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*1:セリエAナポリを優勝に導いたりしているが、そちらは見れなかったので判らない