シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

「温暖化」という誤解

先日のエントリー

原子力という幻想
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20100309/1268138091


の続きです。一応、もらったコメントに応えていきましょう。


通行人Nさん

原子力については、次の発電技術が商業ラインに乗るまでのつなぎ、
と割り切ればいいのではないでしょうか。
日本政府も本格的にお金をかけていますし、20年程度はもつでしょう。

というか、原発建設に掛かる費用、期間を考慮して、「つなぎ」程度であっては困るものなのです。
にも関わらず、長期利用が見込めず、莫大な投資と公的関与が必要で、自前で賄えなえず、廃棄物捨て場所さえ確保出来ない原子力に期待するのは、明らかに間違いなのです。

電力政策にしろライフスタイルにしろ、あまり急激な転換を図るのは
むしろ反発を生んで逆効果なのではないかと思います。

あなたはお若いのでご存じないでしょうが、環境団体を含めライフスタイルを見直せ、は70年代半ばには主張されている言葉なんですよ(ローマクラブってご存じ?)。急激どころか、地道すぎるほどユックリなんです。



陰謀論ファンクラブさん

可採年数って石油でも何でもかなりいい加減なものでは?
レアメタルだけに石油ほど広く分布はしていないでしょうけど現状では石油ほどの需要もないので、十分な調査も行われず見た目の可採年数が少ないだけではないのでしょうか

どうやっても一桁は変えられませんよ。つまり、持続性がある、と主張できるほどはもともと無理なんです。


トーリスガールさん

ウラン元素の自然界における存在量はハンダや鉛との合金で一般に広く使われているスズよりも多く、希少でも何でもありません。

そりゃどうも。ちなみに

http://www.shigenshinpou.com/news/bucknumber/2007/3-5.htm


そのスズも枯渇が心配されてるんですよ。スズは程度によってはリサイクルが効きますが、核分裂に使ってしまえば、リサイクルもクソもありませんから。


通行人Kさん

原子力が、火力発電に比べて比較にならないくらいCO2の排出が少ない事を
まったく無視しています、なぜですか?

以前も書きましたが、本質的問題は“CO2”にあるわけでは無いからです。

石油も30年前には、あと30年で無くなるなどと言っていた人もいましたが
無くなりましたか?探査技術向上で可採年数が増えるのは自明の理ですが

別に永続的に利用できるわけではありませんから。
地殻に含まれる炭化水素類など推定以上の手法はありませんが、ウランのような重元素は地殻存在比率から推定出来る以上になるとは思えないですね。


togura04さん

油もウランも最後の一滴、一粒がなくなる「枯渇」が問題なのではなく、ピーク時がエネルギー資源としての危機なのです。

正確に言うとそうですね。ただ、石油もウランも価格上昇が起きれば可採量は増加するでしょう。それがどれほど引き延ばせるかはわかりませんが。もちろん、本当の問題はそんなところには無いのですけどね。


通りすがりさん

家庭用のCO2排出量、大きいですよ。産業用よりずっと。しかも増え方がすごいです。現状認識が間違っていますね。
それに、エネルギー問題は日本にとってはエネルギー安全保障や経済性も環境性と同様に重要な課題です。これらを鼎立するための解決策の一つが原子力なのですよ。排出権取引なんて机上の空論に過ぎません。炭素排出減らせていませんから。

えー、家庭部門の排出量は以前説明したとおり産業部門よりずっと小さいです。どこで、そんなトンチンカンな文献を見たのか知りませんが。


[参考]平成19年版 図で見る環境/循環白書 (3)主体別にみた排出割合
http://www.env.go.jp/council/toshin/t060-h1612/04.pdf

それに、エネルギー問題は日本にとってはエネルギー安全保障や経済性も環境性と同様に重要な課題です。これらを鼎立するための解決策の一つが原子力なのですよ。

ウランはすべて輸入してますよ。それも、捕鯨で揉めがちなオーストラリアが主たる産出国なんですけどね。


sfdxさん

ドイツは原子力重視に向かうという見方が強いようです. 最大の理由はロシアがウクライナへの天然ガス供給を止めた事件です. 原発廃止でロシアの言いなりになる危険があるなら, 原発に頼るほうがましという話です.

原子力重視に向かいたい、というのがドイツ産業界とCDUの思惑でしょうが、これはロシアうんぬんとは関係ありません。その揉め事前から原子力回帰を騒いでましたから。


ななしさん

超新星爆発の際の核種合成の話や地球上での元素の存在比の話や海水中のウラン濃度の話を知っていればこんなアホな発言は出てこないはずだが、ブログ主は本当に理系研究者なのだろうか。

希少元素の意味くらい知った方がいいですよ。
で、核結合エネルギーについて知っていれば、超新星爆発で生成される鉄以上の重元素においてもウランが多量に成り得ない、事は予測が付くんですがね。で、海水中のウランがどうですって?


あらまさん

ウランは海からほぼ無尽蔵でとれますよ!

そりゃよかったですねぇ。お礼に良いことを教えましょう。金もプラチナもほぼ無尽蔵で海から取れますよ!頑張って集めればお金持ちになれますよ!!



原子力非推進派さん

と結んでいるが、その文明を維持・発展させるための経済についての知識が皆無としか思えない。
また、中国を今さら自転車社会に戻すなどという妄想が本気だとしたら、社会心理学や行動心理学も本の一冊でも読むことをお薦めする。

そりゃどうも。先進国ではすでに「自転車回帰」が起きている、事は承知していないわけ?で、経済の原動力とは所詮「これが欲しい」でしかないわけで、別に自転車と自動車を比べてどちらが欲しい、という問題でしか無いんですよ。そのためのインセンティブを率先して(先進国)が持つべきだ、という主張は別におかしなものでは無いです。
あなた、経済学に詳しいらしいですが、宇沢弘文先生の本くらい読んでるんでしょうね?


El-Fireさん

やはり核分裂反応はITERの成功までのつなぎにしかならない。
できるだけ早く融合炉を商業化することが必要か?

後述しますが、核融合は解決策になりません。


つうこうにんさん
サンクスです。仰るとおりですね。


別のつうこうにんさん
基本的には仰るとおりですが、コスト面だけでは需要によっては「割に合う」事もありえます。が、原子力の場合、リスクの多い話になるでしょうね。


gingin1919さん

多分、海水を煮詰めてウランを濃縮しろとでも言い出すんじゃないですか?

研究されている人がいる事も承知してますが、根本的に問題アリアリですね。フリッツ・ハーバーの金探しみたくなるでしょう。たぶん。


さて、アメリカでは温暖化は嘘だ、で盛り上がっているそうです。


地球温暖化論への懐疑 【あめりかノート】ワシントン駐在編集特別委員・古森義久
http://sankei.jp.msn.com/world/america/100302/amr1003020254000-n1.htm


まぁまぁ、「また“恥辱の殿堂”こもりんか」などと云わないでお付き合いを。
こもりん、こんな事を書いてます。


記録的大雪は地球温暖化に疑問を
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/1456400/

今シーズンのワシントン地区の積雪は昨年12月5日からの合計でこの2月10日までについに138センチを記録しました。季節としての新記録です。
これまでの首都地区のシーズン最大の積雪はなんと1898年から99年にかけて、合計136センチでした。それが110年以上経って、ついに破れたわけです。
だからいまのワシントンの雪害は想像を絶しています。
さてここで普通の人間なら考えさせられるのは、地球温暖化はどうなったんだ? という疑問でしょう。
地球は自然にどんどん温かくなり、熱くなる、という「温暖化」はどこへいったのでしょう。
科学的な議論や思考はひとまずおくとして、刻一刻、温かくなっているはずの地球で、なんでこんな110年ぶりの大雪が降るのでしょうか。
温暖化への警告を発し続けてきたアル・ゴア元副大統領、そしてわが日本の鳩山由紀夫首相、教えてほしいです。


大統領でも首相でも無いですが、簡単に答えられる話です。
もともと、「温暖化」という用語自体がミスリードなんですね。現在問題になっているのは「気候変動(climate change)」、つまり、地球における熱収支のシフトによって気候が(高温に)遷移する、その過程において不安定な気候が誘発される事が予想されるわけです。
これは、平たく云えば湯を沸かす事を想像してみましょう。低温から高温へ暖める間に対流による変化が起こります。それが地球規模で起こると考えればよろしい。ただ、ひたすらに暖かくなり続ける訳ではありません。大きな変動の平均として「温暖化」が進むのです。
当然、寒気が大きく張り出す冬もあります。「例年に無い」状況が多発するのが、「気候変動」の特徴であって、むしろ“110年ぶりの大雪”は気候変動の否定には成り得ないのです*1


ま、こもりんやノビー、外気地の米保守層などはどうでもいいです。単なるバカだから。
一番頭の痛い問題は、「温暖化の原因となるCO2を削減すればよい」と考える人の方にあります。
どういう事か?
問題は、CO2“だけ”にあるわけではありません。
既に皆忘れ気味ではありますが、フロンなどハロゲン化合物によるオゾン層破壊が問題になった事がありました。問題提起当初にとりわけ洗浄に具合のよかったハロゲン化合物類の規制に産業界が大反対だった事を思い出しますね。彼らはオゾン層破壊の事実さえ否定してましたし、なかなか改善に取り組もうとはしませんでした*2


それ以前にはヨーロッパの広い範囲で煤塵、硫黄酸化物や窒素酸化物による酸性雨問題、多様な化学物質汚染、日本においても有機水銀カドミウム汚染や六価クロムや鉛汚染などが問題になったわけです。


これらは決して別々の問題ではありません。
人類の活動に伴う排出が、生態系によって回収(=無害化)されないレベルまで増加した、事を意味しているのです。


以前に説明しましたが、人類の得るものは何もかもが“生態系”頼みです。我々が「水に流す」事が可能なのは、薄めた排出物が生態系内で無害化されるためです。それが生態系内での処理が追いつかず蓄積を生む。ハロゲン化物しかり、水銀しかりです。それをレイチェル・カーソンは「沈黙の春」の中で記したのですね。単純な農薬の話に留まる訳ではないのです。
様々な形で排出物が問題になることは、既に人類の活動が生態系の循環作用のもつ処理能力をあらゆる面でオーバーしてしまった結果なのです。


ですから、CO2排出を抑える事は大事ですが、それを原子力のようなストック資源によって置き換えすることは根本的に間違っています。CO2増加は、人類がストック資源としての化石燃料を生態系が炭素固定によって回収するレベルを超えて消費しているためですから、生態系が回収可能な範囲に活動を抑える必要がある、という事であり、生態系によるシグナルなのです。
自然エネルギー(太陽光、風力、バイオマス、水力)はストックされたエネルギー資源に比べれば地球に降り注ぐ太陽エネルギーのお裾分け、という点でマシという程度にすぎません。太陽電池でいたるところを敷き詰めれば環境破壊に繋がりますし、バイオマス用植物のモノカルチャーも植生破壊を招きます。


核融合、自分はそれが実用化されるとは思わないが、でも、宇宙太陽光発電でも、それこそフリーエネルギーだろうと同じ事です。そのエネルギー源によって地球生態系の許容できる範囲を超えて生産・消費活動を行えば、生態系、そして人類自身にダメージが蓄積される事になるでしょう。それは決して持続可能なものにはならない。


温暖化は温暖化だけの問題ではありません。それはCO2削減、というに留まりません。人類の活動があらゆる面で過剰であり、その総量を抑え、質的な向上へ繋げるべき時が来たことを意味するのです。


参考エントリー:

自滅する文明と自滅した池田信夫
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20080626/1214469991


宇宙に棲みたがる人々
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20070404/1175677112


時代遅れの原子力 4
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20071219/1198053457


時代遅れの原子力 その3
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20071211/1197361777


時代遅れの原子力 2
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20071207/1197018397


時代遅れの原子力 1 
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20071203/1196674922


六ヶ所再処理工場の19兆円がとんでもない件
http://d.hatena.ne.jp/IID/20100210/1265735136


喜劇としての珠洲原発選挙
http://www.shinsahara.com/www/ss/friend/suzu.html


もんじゅ>請負3社、福井県知事側からも購入 パーティー券120万円
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20100307ddm041040100000c.html


べったり原子力村 もんじゅ機構、天下りと業務「交換」
http://www.asahi.com/national/update/0306/TKY201003060181.html

高速増殖炉もんじゅ」(福井県敦賀市)を運営する日本原子力研究開発機構の業務を請け負う3社が、同県の西川一誠知事の関連政治団体からパーティー券計120万円分を購入していたことが分かった。うち2社は、敦賀市の河瀬一治市長からも222万円分を購入していたことが既に判明。もんじゅの運転再開は地元了解が必要で、判断の公平性を巡る問題が同県側にも飛び火した格好になった。

 購入したのは高速炉技術サービス(FTEC、敦賀市)、TAS(同市)、NESI(茨城県ひたちなか市)で、いずれも機構OBを役員に受け入れている。政治資金収支報告書によると3社は03年、西川知事を支援する経済関係者らの政治団体「西川一誠政経懇話会」のパーティー券120万円分を購入。同懇話会は同年、パーティー収入4802万円のうち、3600万円を政治団体「西川一誠後援会連合会」に寄付。さらに同連合会は07年、西川知事の資金管理団体に500万円を寄付した。

 3社はこのほか03〜08年に▽敦賀市を含む福井3区選出の高木毅・自民党衆院議員の資金管理団体から294万円▽自民党敦賀市支部から263万円▽政治団体「福井経済産業政治連盟」から66万円――のパーティー券を購入していた。【酒造唯、大久保陽一】

高速増殖炉もんじゅ」などの原子力関連施設が立地する福井県内の首長や国会議員側などに対し、もんじゅを運営する「日本原子力研究開発機構」(茨城県東海村)の業務の請負企業3社が長期間にわたりパーティー券1千万円超を購入してきた実態が明らかになった。同機構OBを役員に迎えた請負企業群が業務を受注。外からは見えにくい「原子力村」を築いてきた。

 食堂の管理や送迎バスの運転、清掃業務、機器の保守・管理の補助――。福井県敦賀市にあるもんじゅなどの施設では、出入りする作業員の多くは、一部の請負企業に固定されているという。

 同機構の2008年の調査によると、パーティー券を購入していた「高速炉技術サービス」(FTEC、敦賀市)は約24億円の売上高の85%が機構からの受注だった。機構による出資はないが、主に随意契約で業務を請け負う。旧核燃機構は財務諸表でFTECを実質的な「子会社」と記載していた。また、「NESI」(東京都台東区)は売上高約30億円の76%、「TAS」(敦賀市)は同約22億円の65%が機構関連だった。07年10月時点で3社の役員17人中11人が機構OBだった。

 さらに、この3社のほか6社が、受注が売上高の半分以上を占め、役員に機構OBを受け入れており、同機構の前身の旧動燃の系列とされる。6社の役員計34人のうち22人も機構OBだった。それらの企業同士も出資などを通じ、密接な関係を築いている。

 同機構とつながりが深い計9社のうちTASを含む4社は、東海村に本拠を置く企業グループの傘下だ。同グループの3社は、勤務実態が無いのに同機構OB3人らに対して報酬や給与を支払っていたとして、07年までの7年間に計約1億円の所得隠しを国税当局から指摘されている。

同機構の請負企業がパーティー券を購入した政治団体には、福井県知事と敦賀市長の関連団体も含まれる。もんじゅの運転再開には安全協定で、知事と市長の同意が必要だ。

 企業側は購入理由について、「依頼があれば原子力への理解の有無や地域貢献の視点から判断する」(FTEC)、「機構以外の取引もあり、原子力だけが理由ではない」(NESI、TAS)などの立場だ。市長の関連団体からパーティー券を購入した企業に勤める機構OBは「敦賀に本社があり、現職市長の応援は当たり前だ」「市長を応援するため、企業献金と思って買った」と話す。

 一方、「政治家とのつきあいは慎重であるべきだ」という同機構OBもいる。機構の元職員の一人は「随意契約の比率も高く、ファミリー優先から抜け切れていない。もんじゅには安全性への不安やカネがかかりすぎるとの批判もあるのに、政治家側にカネを支払うのは誤解を招く」と話す。(西川圭介)

     ◇

 FTECなど同機構の請負企業3社が関連政治団体からパーティー券を購入していたことについて、西川一誠・福井県知事は取材に対し、「経済界の方が代表を務める団体で私の資金管理団体ではなく、具体的な活動はわからない」と書面で回答。パーティー券購入の是非は「政治団体や企業が判断するべきこと」とした。河瀬一治・敦賀市長は「もんじゅの運転再開の判断には影響しない」としたうえで「機構OBが役員の企業は購入を遠慮してもらうことを検討したい。ただ原発産業はすそ野が広く、判別が難しい」という。高木毅・自民党衆院議員の事務所は「法令に従い適正に処理している」と回答した。

*1:もちろん、それだけでは肯定にもなりえない

*2:現在でもフロン回収などはなかなか進んでいない