シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

あー、くだらねぇ

温室効果ガス 30%削減の衝撃】(1)民主案 36万円家計負担増
http://sankei.jp.msn.com/life/environment/090826/env0908260823000-n1.htm

「光熱費払えない」悲鳴

 「こんな負担は納得できない」

 8月5日に東京・霞が関経済産業省で開かれた総合資源エネルギー調査会需給部会。消費者団体の代表として参加した日本消費生活アドバイザーコンサルタント協会の三村光代最高顧問は思わず声を上げた。政府が6月にまとめた二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出削減に伴う家計負担の増加額として「1世帯あたり年間7万7千円」との試算が示されたからだ。

 三村さんは「生活が苦しい家庭にとっては年間1千円、500円の負担増でも軽くはない」と光熱費に温室効果ガスの排出削減対策費用を安易に転嫁しないよう訴えた。


相変わらず、産経はどうしようもねぇな。こんなところまで「ミンス危ない!」かよ。お前らホントどうしようもねぇ、ブクマ付けている連中も真に受けてんじゃねぇよ。


まず、最初に述べておかなくてはならないこと。それは、経済産業省は終始「温暖化対策」に消極的でネグろうとし続けていた、ということ。温暖化対策会議で経産省の態度=日本政府の対応は「化石賞」を贈られるほどに後ろ向きなものだった。連中に温暖化対策を真剣に進める気がないのは最初から明らかで、こんなアジビラみたいな話を持ち出すとは。


で、ググって見ればわかる。思わず声を上げちゃった「日本消費生活アドバイザーコンサルタント協会」ってどういうところなのか。


・社団法人 日本消費生活アドバイザーコンサルタント協会
http://www.nacs.or.jp/hojo/index.html

NACSは経済産業省の許可を受け1988年(昭和63年)に発足した消費生活に関する我が国最大の専門家集団です。

サイトを読めば、「競輪事業」とも繋がりがあるのもわかるわけで、簡単に云ってしまえば、「経産省キャリアの天下り先の一つ」にして「御用シンクタンク」ってところかな?


で、この負担どうのこうのという話に欠けている部分。それは、温暖化対策の事業は決して負担だけではなく、新規産業育成に繋がる、ということ。こうした「家計負担が増える」、「産業競争力が落ちる」、「経済成長の妨げ」という言い掛かりはドイツで同様の例がある。ドイツにおいてはSPD社会民主党)と連立を組んでいた「緑の党」が独政界におけるキャスティングボードを握ったこともあって、先進的な環境政策が多数導入された。自然エネルギー導入のためのフィードインタリフもその一つ。日本が遅れて導入しようとしているレベルよりも遙かに先進的だ。当然ながらドイツ財界、産業界やCDU(キリスト教民主同盟)から批判があったわけだが、結果として自然エネルギー関連産業は現在では自動車産業に迫る規模まで拡大しており、ドイツの太陽電池産業は日本をその座から追い落とすほどに盛況だ。


面白いのは、ドイツではフィードインタリフ制度を利用した「市民の太陽光発電所」が盛んに造られている、ということ。市民が共同出資して太陽光パネルを購入。電力売却による利益を分配するシステムが定着しているのだ。ま、これは送電網と発電所が「規制緩和」によって「分割民営化」されている事による。つまり、市民の側が自分の欲しい「グリーンな」電力を各発電会社から購入出来る事が効いている。
日本では発電と送電は同じ会社が担い、地域独占体制が崩れないよう経産省が「規制」を強いているわけで*1、この件に関してはネオリベな方々も統制を支持したがるのが不思議だ。


つまり、温暖化対策事業は決して家庭の負担や産業力の低下に留まるものではない。新たな産業の萌芽であり、エネルギー安全保障政策の一端でもある。温暖化対策による自然エネルギー開発のありようは、従来の中央集権的にして旧弊的な電力政策を、地域分権的なスマートな電力政策へ変更を迫る。経産省が乗り気でないのも当然ではあるね。


温暖化対策に関しては他も同じ。自分は自動車中心とした交通政策には反対だから、自動車については触れないが*2、高断熱住宅、高効率な交通機関、省エネ家電、産業設備、etc、開発が行われれば、これも新たな産業として成り行く可能性を秘めているわけだ。であれば、単に負担と考えるのではなく、次世代産業投資と考えるべきだろう。
少なくとも、公共事業のありようとして、土木工事に費やすよりはよほど効果的な金の使い方だと思うのだが、いかがだろう。土木事業については知らぬふりで、その抑制は「雇用を減らす」とか反対したがりそうな皆様にも賛成して貰えると思うのだが。


ちなみに、現在環境(温暖化対策を含む)関連の産業助成による公共事業は「グリーン・ニューディール」として各国で盛んに進められているわけだ。
かつて自分も太陽電池を始めとする自然エネルギーへの補助は次代産業になりうる、と主張した。


原子力の不経済学
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20070222/1172133672


他にもゴネネタを探してくるバカ連中を批判してきている。


・なにが「舶来品信仰」だか
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20071213/1197535987


・ヨーロッパは天国じゃない
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20071220/1198139863


・HALTAN イズ アンデッド
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20081023/1224751712


・デッドリー・HALTAN
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20081025/1224923972


・リターン・オブ・HALTAN
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20081024/1224838641


金を使う=負担する、事は、有効需要の創出、になるんじゃないの?負担だ、で思考を停止するのは賢い事とは思えんな。
で、そんなに一人あたりの負担がどうのいうなら、原子力についてはどう考えるんだろうね。ウランは日本では産出しないから、エネルギー安全保障にもならない。ウランの可採掘年数を考えれば、今後の原子力発電の増加はエネルギーコストを増大させる。一方で、廃棄物処分はもちろん、再処理工場さえろくに操業出来ない。こうしたものに、毎年兆を越す支出が為され、電力会社が掛かるコストを上乗せしている事は不問か?ま、産経は原子力好きだものな。


結論を纏めるよ。


1.家庭の負担、ばかりが云われるが、それは次代産業への公共投資でもある。
2.ムダ公共(土木)事業をやる金があるなら、環境対策投資に使えば、需要創出の効果も高く、ムダにもならない。
3.負担どうのこうのいうなら、原子力はどうよ?


以上。


【参考】

永久機関・公共事業
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20081030/1225290486


「財源は?」とか云うヤツはバカ
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20090728/1248703668


直流と交流 エジソンとテスラのリターンマッチ
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20070314/1173860451


環境エネルギー政策研究所
http://www.isep.or.jp/


環境再生と環境教育の場-C.A.T.
http://www.geocities.co.jp/NatureLand/5908/cat.html
http://www.cat.org.uk/index.tmpl?refer=index&init=1



グリーン革命(上)

グリーン革命(上)

グリーン革命(下)

グリーン革命(下)

持続可能な発展の経済学

持続可能な発展の経済学

持続可能な低炭素社会

持続可能な低炭素社会

*1:この仕掛けがないと、原子力発電も不可能

*2:エコカー減税、で売れ行きがどうなったか考えればいい