シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

有人宇宙飛行はまったくのムダ

この間から騒がれているのが、宇宙飛行士の野口さん、だそうですが、なぜ相変わらず有人宇宙開発をありがたがるのかさっぱり判りません。


宇宙飛行士の野口聡一さん 子どもたちに宇宙語る
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171117/k10011226291000.html


JAXAがやたら力を入れている「きぼう」なんて、わざわざ宇宙まで人が出かけて行って得た科学的成果などゼロ*1なのですから。生活保護などに対してクレームを付けていた皆様ならば、ぜひ、有人宇宙飛行にも見直しを迫るべきだと思うのですが、何故だか有人宇宙開発には甘いんですよね。宇宙にはロマンがあるだかなんちゃらですか?
さて、以前、アメリカの科学者達は有人宇宙開発に厳しい目を向けていることを紹介しました。

わたしたちはなぜ「科学」にだまされるのか―ニセ科学の本性を暴く

わたしたちはなぜ「科学」にだまされるのか―ニセ科学の本性を暴く

ニセ科学批判の本ですが、同時にビッグサイエンスに対する批判も含まれています。)

もともとISS国際宇宙ステーション)は、ロケット研究開発者を流出させずに囲い込むための手段でしかない事が語られています。現在、アメリカがISSについて冷淡なのも当然で、完成してしまえば囲い込みの効果は無いわけですから、新たな囲い込みの手段が必要になります。それが、火星へ宇宙飛行士を送り込むこと。ロシアも目的に関しては似たようなものでしょう。ソユーズなんて完全に割りきった運用してますもんね。
日本ではどういうわけかこういう事情が語られませんから、“日本人宇宙飛行士”などというくだらないものが喧伝されたりするわけです。


では、他国で価値無しと判断されている有人宇宙開発について、どんな目的が謳われているでしょうか。

他の惑星に移り住むための技術開発

良く言われるのが、他の惑星 ほぼ火星一択ですが に移住するための技術を開発するため、です。しかし、火星に人類が移り住む、というのは果たしてどうなのか?
火星に生物がいる場合といない場合で状況は変わります。
まず、火星に生物がいる場合はそれで終了です。火星への移住は不可能かつ行うべきではない。
火星は火星の生物のものですから、惑星環境改造(テラフォーミング)は環境破壊になります。探査機の到達も最低限で隔離環境を維持したまま観察という程度に留めることになるでしょう。

ちなみに、火星にかつて生物がいた、という証拠が見つかるなら、その場合、火星には現在でも生物は存在するでしょう。なぜなら、火星環境は地球の大部分の生物種が生存可能*2です。過去から環境適応の時間を充分に得てきた火星固有種が生き延びる事は充分に考えられます。ただし、現在生き延びているとしても、その様相は人類の想像を絶したものかもしれません。

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)

環境倫理を無視して火星を惑星改造して無理やり住み着いたとしても、その場合は火星生物による疫病などが起こりえます*3。ですから、火星生物が存在する場合は、火星への移住は不可能です。


火星に生物がいない場合でも、環境倫理的には惑星改造など許されるものではありませんが、それでも無理やり行うことにしましょうか?しかし、遥かに人類に親和的な地球環境でさえ損なおうという人々が、火星の環境をコントロール出来ますか?そんな簡単なもののはずがありません。
二酸化炭素を増やすだの、表面を黒化させるだの、フッ化炭素化合物によって温暖化を促すだの、それ、果たして丁度良いところで止められるの?という代物です。いったん動き出した環境変動は人間の手に負えない、という事が判っていないのかもしれませんね。
それに、もともと火星に移住しないといけない理由が理解できません。
人類が増えすぎるから、環境が破壊されるから、火星に住もう。これは、自分たちの責任を放り出していますよね。人類が増えすぎるなら、定常人口になるような社会設計を行い、環境破壊は食い止める。それこそが取るべき手段であって、火星に移り住むのは無責任極まりない。そんな人々が火星を再び汚染しつくさないとどうして云えますかね。

文明崩壊 上: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)

文明崩壊 上: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)

文明崩壊 下: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)

文明崩壊 下: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)

そして、火星探査自体には人間はまったく必要ありません。いまやロボットによる探査は人間自身が行くよりも安く早く確実な代物です。人間が介在する余地は無いのです。さらにセンシングによる情報をVRによって再現すれば、人間だって異星環境を“体感”することが出来ます。安全かつ安価に。それではダメですか?

宇宙においては画期的な技術開発が進められる可能性がある

宇宙技術といえば、NASA! NASAが開発、というキャッチコピーがステロタイプ的に喧伝されるわけですが、別にNASAが直接技術開発をしたりはしないです。それ以上に、宇宙における技術開発自体に価値が無いのです*4
私の手元にある、未来予想に関する本には、宇宙で開発されるものとして、比重の違う材質による合金、とか、高純度・低欠陥の半導体、高精度な電気泳動分析、などがあったりします。
実は、このへんは未だに取り上げられたりする「未来の技術」でして、実に30年以上も「未来の技術」であったりします。つまり、役立たず、ということです。
比重の違う材質同士の合金など粉末焼結法で可能ですし、実際には比重差が合金組成に効くことはありません。また、宇宙だからといって高純度・低欠陥の半導体にはなりえず、むしろ重力による対流は熱均一性に関わるので、無重力下では半導体は不均一になりやすかったりします。高精度な電気泳動も、現在では構造の改良が著しいため、無重力下でないと出来ない電気泳動分析というのはありません。
また、工業的にどんな高価なプロセスを利用したとしても、宇宙との往復に掛かるコストよりは遥かに安いので、宇宙で何か工業生産を行なうことは考えられないのです。これは、後述する宇宙資源にも関わります。
そして、このどれもが例え有意義なものであったとしても、有人環境下で行う必要のないプロセスです。現在進行中のIoT、インダストリー4.0と呼ばれるものは、工業生産における人間の存在をほぼ不要にします。宇宙で工業生産が可能な状況になった場合に、そのプロセスに人間が関与する必要があるかどうかは明らかだと思うのですが。

宇宙には地球で希少な資源がある

よく小惑星や月には白金族のような重金属やHe3、水が含まれているので資源として有望、みたいな話があったりします。しかし、これは資源についてまるで判っていない人か、セールストークとしてやっているかのいずれかです。
というのも、資源であるかは採算ベースに乗るかどうか、という問題だからです。海洋には金やウランなどが含まれていますが、だからといって「海は金(ウラン)がいっぱい」などという人は(詐欺師以外は)いません。取り出すコストを勘案しなければ資源とは呼べないのです。そして地球外天体に存在するどんな希少な元素であろうとも、その到達・採取法を考えれば地球で得る方が遥かに安価なのです。


結局、有人宇宙開発にはその莫大なコストを掛ける意義がありません。もちろん、「人類が宇宙に出ること自体に意義があるのだ」という意見もありましょうが、であれば、散々科学的意義や産業貢献について嘘をつくのを止めるべきでしょう。正直に、「科学的価値も無いし、産業への波及も無いが、それでも人を宇宙に送り出すのにお金を出して貰えますか?」と訊くのがスジだと思います。「凄いニッポン!」に飛びつきたい人々がこぞって出資してくれるでしょうから、安心して正直に認めちゃってください。
では。

*1:成果として謳われているものも、宇宙での実験が必要ないものと、無人で充分なものしかない

*2:地球の生物種のほとんどは微生物であり、種類といい数といい他の追随をゆるさない。紫外線さえ避けられれば、地球の大多数の微生物種は火星程度の環境下に適応出来る事が知られている

*3:このへんは、地球−火星、ともに「外来種」が問題となるでしょう

*4:JAXANASDAの委託開発成果のスピンオフみたいなものに係わった事がありますが、引き合いはあまり無いようでした