シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

私はゴア。地球の征服者。

アル・ゴア氏。ノーベル平和賞受賞しましたね。おめでとうございます。
まあ、ノーベル平和賞は、佐藤某だとか、キッシンジャーとか取っているんで、それ自体は自分が評価する事はないのだが、アメリカが環境対策に本腰を入れる契機になるといいな、と思っている。

ノーベル平和賞にゴア氏ら - 社会
ノルウェーノーベル賞委員会は12日、07年のノーベル平和賞を、米国のゴア元副大統領と気候変動に関する政府間パネルIPCC)に授与する、と発表した。地球温暖化に警鐘を鳴らすなどの功績が評価された。

http://www.asahi.com/national/update/1012/TKY200710120261.html

でも、こういう意見もある。

チェコ大統領、ゴア氏のノーベル賞授賞を批判
チェコのクラウス大統領は12日、ゴア前米副大統領のノーベル平和賞受賞決定を、「ゴア氏の活動と世界平和の関係はあいまいだ。ゴア氏が現代文明を築いた基盤に疑問を広げている実態は、決して平和への貢献ではない」と批判する声明を出した。
 経済学者で、右派・市民民主党の創設者でもある同大統領は環境保護活動を、「思想と意思決定の自由に対する規制が目的で、共産主義と同じ手法だ」などと強く批判している。


http://www.asahi.com/international/update/1013/TKY200710130047.html

言葉については論評するようなものでもないが、発展途上国や旧共産圏にとっては「現在の形の」「経済発展」を疑問視するような態度は、気に入らないのだろう。
「オマエ等、さんざん好き勝手やったくせに!」

まあ、一理あるわけだが、その経済発展に対する反省あっての事なんだけど。

さて、町山氏は

イラク戦争なんかしなければ、ゴアが大統領になってさえすれば、アメリカの国民皆健康保険はとっくに実現していたし、環境問題対策も七年は進んでいたし、十万人以上のイラク戦争の犠牲者は死なずにすんだ。

そう考えると、得票数が多かったのにブッシュに勝ちを譲ったゴアにもこの惨状の責任は大いにあるぞ。

http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20071013

と言ってるのだが、ゴア氏の態度を見るにつけ、彼はこちらの(環境問題を説いて廻る)方が、“自分の性に合ってる”と考えているんじゃないかな。
大統領選の時、ゴアとチンプブッシュの討論会で、多くの点で二人の意見は一致していた、と報道されていた。アメリカ大統領選では中道層を取り込まなくてはならないから、民主・共和両党とも(本音はともかくとして)主張は似たり寄ったりになる。日本でも起きている現象ではあるが。
ブッシュは、当選後、その本性を剥き出しにしたわけだが、ゴア氏も大統領選のしがらみから解放されて、自分の主張を自由に出来るようになったわけだ。現在では彼の主張は、00年の大統領選でブッシュ当選に一役かった緑の党ラルフ・ネーダー氏よりリベラルだ。そちらが、彼の本音だとすれば、今更大統領選に出て、日和った態度など取りたくもないだろう。


さて、慰安婦問題でオバカを晒した池田氏が、またやってる。

不都合なノーベル平和賞

ロンボルグがゴアとIPCCノーベル平和賞受賞にコメントしている:

今回、受賞したIPCCは、科学的な分析によってどのような気候変動が起こるかを予測したが、ゴアは事実にもとづかないで、温暖化がいかに恐ろしいものであるかを誇張して宣伝してきた。彼の映画はアカデミー賞を受賞したが、イギリスの裁判所に「一方的で科学的な誤りを含む」と批判された。映画では向こう100年間で海面が20フィートも上昇することになっているが、IPCCは1フィートぐらいと推定している。これは過去150年間に起こった海面上昇と変わらない。

ゴアは、グリーンランドの氷が「加速度的に溶けている」というが、IPCCによれば、これは今世紀中に海面を3インチ上昇させる程度だ。グリーンランドの温度は、1941年以前には今よりも高かった。ゴアは温暖化で死者が増えると強調しているが、凍死者が減ることに言及していない。2050年までに温暖化で40万人が死亡するが、凍死者は180万人へると予測されている。

IPCCは、ゴアが1人で受賞したほうがよかったと(半分皮肉で)コメントしたが、私は受賞しないほうがよかったと思う。彼の受賞は、ただでさえ歪んでいる地球的規模の問題の優先順位を、ますます歪めるからだ。

熱帯の人々が温暖化で死亡するよりも、栄養不良や感染症で死亡するほうがはるかに多い。彼らを救うには、CO2の削減よりも食料・医療援助のほうが5000倍も効果的だ。高価な京都議定書が完全実施されたとしても、マラリアによる死者は毎年1400人減るだけだが、安い蚊帳を配るだけで毎年85万人の命を救うことができる。

どうしてわれわれは100年後の気候変動を心配するのに、いま起こっているもっと深刻な問題を心配しないのだろうか。毎年、栄養不良で400万人が死亡し、エイズで300万人が死亡し、大気汚染で150万人が死亡し、水質汚染で200万人が死亡しているというのに。こうした問題には、温暖化に比べてはるかにわずかな関心しか払われないし、資金も出ない。途上国が貧しいままでは、最大の温暖化ガス排出国である彼らは、その対策も取れない。

IPCCとゴアのアプローチは、対照的だ。IPCCは何よりも厳密な研究で事実を明らかにすることに集中し、政治的な発言は慎んでいる。ゴアのアプローチは、その逆である。

私のコメント:温暖化をめぐるバカ騒ぎに、ゴア以上に責任があるのは、派手な政治的プロパガンダや映画で政策の重要性を判断する、各国の政治家と官僚とメディアだ。「ポスト京都議定書」の議論をする前に、ロンボルグの本ぐらい読んでほしい。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/051f9d261e2fd4450b681fbb5ec69abc


よく、こういうバカな事が書けるものだと感心する。
まず、「「ポスト京都議定書」の議論をする前に、ロンボルグの本ぐらい読んでほしい。」
バカか。なんで気候変動*1の専門家でもないロンボルグの本を読まなきゃならんのだ?
慰安婦問題でもそうだったのだが、池田氏は主流学説、というものを蔑ろにしすぎる。
この部分をこう換えてみよう。

「「慰安婦問題」の議論をする前に、秦郁彦の本ぐらい読んでほしい。」
「「南京事件」の議論をする前に、田中正明の本ぐらい読んでほしい。」
「「沖縄集団自決」の議論をする前に、曾野綾子の本ぐらい読んでほしい。」

IPCCは、世界各国、数千人の科学者が参加している。その議論、もちろん、立場の異なった意見も討議の上で勧告を行う。そのうえで、気候変動は事実であり、対策を盛り込む必要がある、としている。
つまり、ロンボルグ、というか池田氏のユニークな態度は、そのへんの観測も研究も、討議もぶっ飛ばしてしまっているのだ。

さて、ロンボルグのアホぶりも指摘していこう。

彼の映画はアカデミー賞を受賞したが、イギリスの裁判所に「一方的で科学的な誤りを含む」と批判された。

裁判所、というのがミソ。裁判所に科学的判断能力などない。イギリスの学会などが問題視したならともかく。

映画では向こう100年間で海面が20フィートも上昇することになっているが、IPCCは1フィートぐらいと推定している。これは過去150年間に起こった海面上昇と変わらない。

推定は幅のあるもので、報告に盛り込めるのは確実な推定。つまり、人為的影響で30cmの海面上昇が起こる、としているのである。決して、侮れる値じゃない。というのは、一旦上昇した値が、そこで止まる確証は無いからだ。大概の場合、気候変動は正のフィードバックがかかる。つまり、海面上昇(温暖化)は更なる海面上昇を生むのだ。どうみても、故意に脅威を過小評価しているとしか思えない。

ゴアは、グリーンランドの氷が「加速度的に溶けている」というが、IPCCによれば、これは今世紀中に海面を3インチ上昇させる程度だ。グリーンランドの温度は、1941年以前には今よりも高かった。

グリーンランドの氷床が溶け出しているのは現在でも確認できる事態だ。何度も言うが、3インチだから、と過小評価する事は出来ない。グリーンランド氷床で生じる海水冷却は大西洋海流、北極圏にも影響を及ぼし、深層海流の駆動源になっている。海水面上昇で済む話では無いのだ。

熱帯の人々が温暖化で死亡するよりも、栄養不良や感染症で死亡するほうがはるかに多い。彼らを救うには、CO2の削減よりも食料・医療援助のほうが5000倍も効果的だ。高価な京都議定書が完全実施されたとしても、マラリアによる死者は毎年1400人減るだけだが、安い蚊帳を配るだけで毎年85万人の命を救うことができる。

ロンボルグが本気で言ってるのか、故意に誤魔化しているのかはわからないが、栄養不良や感染症が生じる原因の一つが生活環境の悪化である。生活環境の悪化で、都市に流入する人口は年々増大してきており、都市のスラム化と共に、栄養不良や感染症に繋がっている。たとえ、食料・医療援助を行っても、生活環境の改善が無ければ、物乞い同然に生きるだけだ。対症療法ではなく、原因から対応する事の大切さを認識しなければならない。
というか、食料・医療援助も、温暖化(気候変動)対策も、両方必要なのである。なぜ、無理に二者択一にする必要があるのか。それに必要なリソースは充分にある。少なくとも無策によるツケは、対策費より遙かに多額だ。

どうしてわれわれは100年後の気候変動を心配するのに、いま起こっているもっと深刻な問題を心配しないのだろうか。毎年、栄養不良で400万人が死亡し、エイズで300万人が死亡し、大気汚染で150万人が死亡し、水質汚染で200万人が死亡しているというのに。こうした問題には、温暖化に比べてはるかにわずかな関心しか払われないし、資金も出ない。途上国が貧しいままでは、最大の温暖化ガス排出国である彼らは、その対策も取れない。

上で述べたとおり。栄養不良もHIVも、大気汚染も、水質汚染も、全て環境問題と直結している。その場における対策はもちろん必要だが、原因を取り除く必要は当然生じるのである。
それに、最大の温暖化ガス排出国は、発展途上国、などではなく、アメリカ、である。彼等は対策費を出せないほどに貧しいだろうか?その対策に必要な「持続可能な技術」や「社会構造」は発展途上国には取り入れられないものだろうか?


ロンボルグは著書で気候変動を些末な事として扱ってきた。現在でもそのスタンスは伺えるものの、かつてに比べると主張は後退している。世界各国の専門家が、確定的、とした人為原因による気候変動を真っ向から否定できなくなったのだ。


ゴア氏の主張が扇動的というのは、そのとおり。それは本人も充分に意識してやっているだろう。
だから、かつて自分は「(ゴア氏の)プレゼンテーションに興味がある」と記したのだ。
IPCCの主張を正確に示しても、アメリカ市民が気候変動問題に関心を向ける可能性は少なかっただろう。
ブッシュ政権はあくまでも、気候変動問題を無視したがる。その状況を打破するのに、扇動的なプレゼンテーションは役に立った。批判があってもいい。だが、その価値は科学的妥当性とは異なる地平にあることを承知する必要がある。


さて、悪いんだが、池田氏のようなデマゴーグは、「スレッド」にでも行ってやってくれないか?
慰安婦問題や労働問題、温暖化問題の顛末から考えると、放送問題や著作権問題なども、もしかしておかしな主張をしているのだろうか。そのへんはオーソリティーでは無いので判らないが。

スレッド 3 (晋遊舎ムック)

スレッド 3 (晋遊舎ムック)

*1:IPCCの表現でわかるように、本来、温暖化ではなく、気候変動(climate change)と呼ぶべき