シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

時代遅れの原子力 1

いままで何回か原子力の持つ構造的な問題点を指摘してきた。
しばらく何回かに分けて、原子力の問題について述べていこう。

さて、原発


・地方への硬軟使い分けた押しつけ
・階層間で意識も情報も隔離された労働状態


これらが無いと維持できない。極めて非合理的で古くさいエネルギープラント、それが原子力である。


現在、「原発ルネッサンス」などという言葉が盛んに飛び交い、「原子力復権」が頻りに喧伝されたりするわけだが、その詳細を見ていくと気づくことがある。
それは、原発推進を行う国々の政治体制だ。
現在、最も原子力を積極的に推進しようとしている国は中国とインドだ。中国は云うまでもなく、一党独裁ファシズム国家だ*1原子力導入で地域住民の意見が正当に反映される可能性は限りなく少ない。日本よりよほど簡単に原発建設は進められるだろう。原発で働かせる労働者にも事欠かない。中国における労働格差は日本の比では無いからだ。彼らが健康を損なったとしても、口封じは容易である。
インドはどうか?一見、民主主義国家としての体裁は取っているが、インドには根強い民族差別と階級差別カースト制)が残っている。インドでも、原発地域の住民意志が反映される可能性は少ない。下手をすれば、中国よりもひどい事になるだろう。建前としての共産主義を掲げる中国では識字率や教育環境だけはインドよりマシだからだ。インドの原発地域では、何が問題なのかさえ知らされない可能性が高い。


もともと原子力を熱心に導入しようとしている国の特徴として
・強圧的な中央集権体制をとっている
・社会的階層で移民のような貧困層が固定されている
・経済成長に熱心で、その負の側面の対策に不熱心
・軍事手段としての核兵器に熱心


という事がある。
最も原子力導入に熱心だったフランスは云うまでもない。イギリスにおいても同じ。アメリカでは中央集権体制ではないが、原子力核兵器産業と密接な関連があり、強圧的に進められた。
労働者もフランスならアフリカからの移民。イギリスならスコットランドウェールズ貧困層や、アフリカ、インドからの移民。アメリカは世界各地からの移民、と被害を受けても社会が無視しうる人々が担う。
実は日本も同じである。原子力が地方に押しつけられた構図は実例を示して解説した。
数多の原発群の中で、最初の原発が建てられた東海村。ここでの状況を説明する文献がある。


[PDF]第 2 章 東海村のまちづくり --- 原子力施設のある村として
http://www.econ.keio.ac.jp/staff/tets/kougi/chiiki/monly/2006/rep06-tkai.pdf


原子力の黎明期。原子力の平和的利用を掲げて推進したはずの、しかし、地域は何一つ知らされる事無く、彼らが成り行きに気づいたときは、すでに手遅れだった。そして、大量の補助金交付金が彼らを分断し、黙らせた。そこで起こる成り行きにも知らぬふりを決め込んだのだ。
それは、「臨界事故」まで続いた。


今までも原子力産業に関連した被害を受けてきた人の声は、顧みられる事がほとんど無かった。
これからは、それが拡大生産されることになるのだ。それを「ルネッサンス」と呼ぶ事は何かの皮肉だろうか。それとも、語義に戻る事になるのか。
ルネッサンスとは「復活」を意味する。「復活」のモデルとされたローマは廃墟の上に平和を築いた。夥しい他民族国家の征服支配の上に繁栄があった。
原発ルネッサンス」は、踏みつけられる人々の上に築かれる。もちろん、自分はそれを看過するつもりなど無い。


原子力前近代的な支配体制にこそ、その可能性がある。
原発を推し進めようとする地域に民主主義を根付かせること。彼らに先行する原発地域の実情を知らせること。それは、原子力の拡大にある程度の歯止めを掛ける事が出来るだろう。

*1:以前にも述べたが、権力集中を行いながら私有財産を認める一方、自由選挙も言論の自由も認めない体制はファシズム以外の何物でもない