いつも拝見させて貰ってる「荻上式BLOG」。『アイ・アム・レジェンド』の原作、「吸血鬼」(地球最後の男)に触れて感想書いているけど、ちょっと違和感が。
『アイ・アム・レジェンド』と『悪魔のいけにえ2』
価値体系が反転し、ファシズムや共産主義的な世界へと塗り替えられる恐怖を描く原作だったのが、「グラウンドゼロ」を露骨に意識したニューヨークで、襲い掛かる怪物たちを倒してアメリカを救う英雄という映画になっている模様。えー。原作の方がいいじゃん!
http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20080207/p2#seemore
マシスンが書きたかったのは、たぶん“価値体系が反転し、ファシズムや共産主義的な世界へと塗り替えられる恐怖”じゃ無かったと思う。
マシスンが原作を書いた時代、似たような侵略テーマSFがゴロゴロしていた。
キャンベルJr. の「影が行く」。これは、「遊星よりの物体X」「遊星からの物体X」の原作となったが、特に「遊星よりの物体X」は、共産主義の侵略に断固立ち向かう軍人、を示したもの*1。原作も共産主義やファシズムに対する嫌悪感がある。キャンベルJr.はSF雑誌「アスタウンディング・サイエンス・フィクション」誌の編集長を務めたが、アシモフが指摘するとおりベトナム戦争擁護発言を行っている。
他にも、ハインラインの「人形つかい」。これは、「盗まれた町」や「光る眼」の元ネタ?で、侵略者がこっそりと忍び寄る、という話。もちろん、この侵略者は共産主義者のメタファ。
冷戦や赤狩りを背景に、「侵略者(共産主義者)はあなたの周りにいる」という時代の空気を示した作品が登場していたのだ。
こうした「赤狩り」さえも擁護するような風潮に対してのあてつけ、がマシスンの「地球最後の男」。主人公は恐怖から吸血鬼化した人々(侵略者)を次々と始末していき、最後には逆に自分が彼らから怖れられる「伝説の怪物」であった事を悟る。つまり、侵略テーマSFや赤狩りをおちょくって見せた訳だ。
最初の映画化は、情けないツラのヴィンセント・プライスが主人公で、原作にも忠実。
が、あの“全米ライフル協会”チャールトン・ヘストンが主人公の「地球最後の男 オメガマン」は、その辺りを逆にヒーロー化するという大技を喰らわしてしまった。なぜ、ヘストン主演で強引なうっちゃりを喰らわしたのかも、もともとの原作の狙いが見えると判ってくるだろう。
それから、
それにしても、『キャリー』のプロムの描かれ方や、『死霊のはらわた』『悪魔のいけにえ』ほかサマーキャンプの描かれ方などを観るにつけ、ホラー映画はモテに対して何か具体的な恨みがあるのではないかと思ってしまう。ヘビメタやロックを騒音で聴く男女に漏れなく立つ死亡フラグ。闇夜でいちゃつこうとするカップルに迫っていく手ブレカメラ。そのくせお気に入りのヒロインのエロティックな描写。「やーねあの人、今時映画なんて撮ってるわよ」「あんなのは放っておいて行こうぜハニー」と学生時代の若かりし監督に冷笑を浴びせたカップルに対する私怨をフィルムにぶつけているかのような。気のせいか。
たぶん、私怨はあると思う。町山氏もそんなこと書いていたし。
ただ、大きな理由は、この手の映画がドライブインシアターで掛かっていた事が大きいと思う。
だって、ぶっ殺される連中って、映画見に来ているカップルそのものだもの。
「殺されんの、オレたち?」っていう方が、ビビらせれるものね。
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