シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

一番怖ろしいのは…。

昔、知人から聞いた話。
団地で育った子供たち。階下に降りることが滅多に無く、外の遊び場も団地内のショボい公園だった。
で、広い原っぱに連れ出した時のこと。駆け回って遊ぶのかと思いきや、かたまって遊んでいる。
子供たちの遊ぶ広さが、普段、部屋や公園で遊ぶサイズと同じ事に気付いて愕然とした…。
この話自体は、他でも聞いたことがある。ある種の都市伝説なのかもしれない。でも、ありそうだな、と感じてしまった。
人は普段嵌められているタガに従って振る舞う。で、その“外”へ踏み出す事に気づきもしないのだ。

立川ビラ配りの3人、有罪確定へ 最高裁が上告棄却

東京都立川市自衛隊官舎で自衛隊イラク派遣に反対するビラを配った3人が住居侵入罪に問われた事件で、最高裁第二小法廷(今井功裁判長)は11日、無罪を主張していた3被告の上告を棄却する判決を言い渡した。有罪とした二審・東京高裁判決が確定する。

http://www.asahi.com/national/update/0411/TKY200804110209.html


自分にとって、記事よりも記事についたブックマークコメントに驚愕した。
法律に従うことは当然、有罪は当然、だって?
私有地に踏み込んだのだから、住民に迷惑を掛けたのだから、だって?
本気かよ?


法律に定められている範囲には解釈の余地があるから、揉め事が起きれば「判例」が示されるわけだし、公と私の区別だって厳密な訳じゃない。私有地だからといって周囲気兼ねなく好き放題出来る訳じゃないし、公の論理だけ押しつける事も出来ない。そのへんは、“自動的に”決定される訳じゃなく、個別に判断されるべき事なわけだ。


で、good2ndさんのエントリーを見れば、


表現の自由を脅かすもの
http://d.hatena.ne.jp/good2nd/20080412/1208011610


(公安)警察が、“恣意的に”狙い撃ちした点を指摘しているのに、“厳密な”解釈したがるってのはどうなんだろ。法律がどうのこうの云う連中には、これをどう見るのか。

白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々


1943年のミュンヘン。“打倒ヒトラー”を呼びかける組織「白バラ」のメンバーであるゾフィーと兄ハンスは、大学構内でビラをまいているところを見つかり、ゲシュタポ将校に連行される。そこで尋問官モーアの取り調べを受けるが、無罪であることを主張。モーアはゾフィーを信じかけるが、証拠が発見される。ゾフィーは自分は信念によって行動したことを認め、密告を拒否した。死刑が宣告され、ゾフィーに最期の時間が迫っていた。(goo映画)

http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD8314/


当時のドイツじゃ、政権批判のビラを蒔くことは法に反することだったし、実際、蒔いた彼らは、有罪、即日処刑だった。
ま、法律に反したのだから当然。法律は確かに問題だが、反しなければいいだけ。とでも云うのかね。
それとも、(立川の方は)有罪とはいえ、死刑にならないんだから文句は言うな、ってところか。
いい加減にしろっての。いちいち、抑圧を無理矢理肯定しようとするんじゃないよ。


これもそう。

アキバのホコ天、無法地帯 大音量ライブ/“ストリップ”/即席の撮影会(産経新聞) - Yahoo!ニュース


電気街とオタクの街の顔を併せ持つ東京・秋葉原で休日に開催される歩行者天国が“無法状態”となっている。大音量で演奏するバンドや下着をあらわにした女性パフォーマーが横行し、警察官からの注意は、当たり前の光景だ。モデルガン発射騒ぎまで起きている。35年前から続く歩行者天国だが、オタクの聖地と呼ばれるようになってからは騒動が絶えない「アキバのホコ天」に変わり、古くからの地元関係者や警察官はまゆをひそめている。(森浩、時吉達也)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080410-00000097-san-soci


オレは、この記事自体は「ま、産経だしな。」くらいに思っていた。どちらかといえば、規制に賛成するはてなブックマークのコメントの方にビックリだ。

yachimon アキバ, オタク 取り締まり強化への第一歩ですょ。あーあ。折角の楽しい場所を自分たちでつぶしちゃいましたね。

http://b.hatena.ne.jp/entry/http%3a//headlines.yahoo.co.jp/hl%3fa=20080410-00000097-san-soci


潰す、のはあくまで警察であって、パフォーマー達じゃない。警察に遠慮してパフォーマー達をバッシング喰らわすなんて、おかしいんじゃないの?

演奏や芸などのパフォーマンスが、聴衆を集めるなどして人の往来の妨げになると、歩行者天国でも道路交通法(無許可道路使用)に抵触する。

なんて元記事には書かれているけど、それが“妨げ”になるかは警察が決めてんだぜ?それが、本当に邪魔なのか邪魔じゃ無いのかは個人差によるだろ。自分が不愉快で「やかましい!」と云うならともかく、不愉快さを決める基準を警察に委ねるなんて、歩行者天国、に相応しい事じゃないと思うぜ。むしろ、やれる事の拡大を進めていくのが本筋だろうに。歩行者天国なんて喧しく猥雑でアナーキーでこそ楽しいと思うんだが。


以前、取り上げた「野宿」もそう。「ロリ禁」もそう。


・野宿、野宿。
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20080304/1204622040


・あえて、ジュビロ磐田の菊地を弁護する
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20070614/1181809757


「法律で禁止」なんてところで思考停止してんじゃないよ。法律のバックボーンこそに意味があるんだわ。人の世は単純に法律に従えば良しとしてきたわけじゃない。その先にいかなる社会のルールが、良き社会を、良き生活を支えるか、まで踏み込んで考え、変えていくことも考慮に入れないとね。


本当に恐ろしいのは抑圧される事ではない。抑圧されている事に気づかない事だ。そして、抑圧されなくても抑制してしまうことだ。抑圧を打破する人を憎むことだ。

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