シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

朝日新聞のどこがサヨクなんだよ


本社移し節税“待った” 米、海外企業買収手法に対策
http://www.asahi.com/articles/DA3S11418384.html

 節税を狙って外国企業を買収し、国外に本社を移す手法が広がる米国で、政府が対策に乗り出した。防止策の導入後、米製薬会社が買収案の撤回を発表。対策が奏功した形だが、抜本的な問題解決のめどはみえていない。


この記事、税逃れの企業に対して批判的なのかと思ったら、全然違う!

(略)
進まぬ法人税改革
企業の「国外脱出」がとまらない背景には、主要国で最も高い米国の法人実効税率(州税含め約39%)がある。主要国では、アイルランドや英国など欧州を中心に引き下げが広がったが、米国は高止まりしている。外国で稼いだ所得にも課税する制度も海外移転に影響しているとされる。
 オバマ大統領は連邦政府法人税率を35%から28%に引き下げる改革案を示している。共和党も引き下げには賛成だが、25%までの引き下げを求めるなど、立場の違いを折り合えずにいる。
 米議会の合同税務委員会によると、2024年度までの10年間の法人税収は4.5兆ドルと見込まれているのに対し、節税目的の買収を防ぐことで税収は200億ドル程度増えるという。
 法人実効税率を今の35%から20%台に引き下げる議論が進む日本と違い、米国では法人税改革が進む見通しが立っていない。
 米調査機関ピュー・リサーチ・センターのブルース・ストークス氏は「人口が増え、エネルギー価格が下がっている米国は、魅力的な市場だ。法人税をどうしても下げなければいけない圧力に、まだ直面していないのかもしれない」と話す。
(ワシントン=五十嵐大介

今のところ、先進国においてアメリカ経済だけが好調なわけですが、それは他国が財政問題を楯に緊縮財政を取るために景気が凹んでいるのに対し、(共和党の妨害にもかかわらず)オバマ政権が(比較的)積極財政を行っているためで、法人税引き下げに消極的だけでなく、富裕層への増税も視野に入れていたりするわけです。他国では法人税の引き下げを進め、代わりに間接税増税や支出削減を行い景気が低迷しました。このへん、同じ朝日のポール・クルーグマンのコラムで「正義感が息の根を止める」として批判されているところです。かたやコラムで緊縮財政は間違いだ、と説いているそばで、法人税引き下げを期待するような記事をのっけてしまう、というのはなかなかに凄いことです。


五十嵐記者の認識では法人税引き下げ、は素晴らしいことのように見えているようですが(進まぬ法人税改革、と書いているんですからそうことですよね)、法人税減収の分は間接税で賄えということなのか、それとも支出を抑えろ、ということなのでしょうか。
いずれにせよ、再分配が減れば経済は不調に追い込まれるわけで、クルーグマンが再三指摘しているように“なぜ、毎年毎年、同じ間違いを犯し続けるのか。”わかりません。


ちなみに、この記事には各国の法人税引き下げ状況が載せられているのですが、


(国や地方を合わせた法人実効税率 OECD調べ)
http://www.asahi.com/articles/photo/AS20141024000348.html


各国が法人税ダンピング合戦に“追い込まれている”状況が見えます。それによる税収不足が各国の緊縮財政や公共事業*1社会福祉政策の減退(とそれに伴う景気悪化)を招いている。ダンピング合戦で法人税をしぶしぶ下げたドイツはそれでもイギリスやアイルランドよりは法人税率は高いわけで、法人税を下げれば企業が来て、経済が良くなる、というのがウソであることがわかります。
アメリカでも州によって法人税率が異なりますが、税率の低い州が高い州より財政状態がいい、ということはありませんから。


カンザス州減税 大企業の欲を体現する理屈.
http://www.asahi.com/articles/DA3S11223916.html.


リベラル、を標榜する新聞の記者なら、法人税引き下げ、を改革と捉えるのではなく、世界各国で協調して法人税率を上げよう、税逃れを許すまい、と主張するべきではないですかね。しっかりと法人税や富裕層への課税を増やし、その税収によって公共投資と再配分を行うほうが、結局のところ好調な実体経済を生むことでしょう。


それにしても、こんな新自由主義丸出しの記事を書く記者のいる朝日新聞のどこがサヨクなのか。
また、「耕論」の京都大学教授 小倉紀蔵氏のオピニオンも酷いものなのですが、これは後日批判します。

*1:ここでいう公共事業とは、日本で公共事業の代名詞となっている土木事業だけを指すわけではない。