シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

ギリシャ国民よ、緊縮策にNo!を突き付けろ!!

これは、別に私の意見(だけ)というわけではありません。
ノーベル経済学賞受賞者であるジョセフ・スティグリッツ氏が最近のコラムで主張したものを意訳したものです。


Joseph Stiglitz: how I would vote in the Greek referendum
http://www.theguardian.com/business/2015/jun/29/joseph-stiglitz-how-i-would-vote-in-the-greek-referendum


ポール・クルーグマンも緊縮策を押しつけようとするEU首脳に対して異議を唱えるとともに、「ギリシャのデフォルトの影響は大きくない」などと嘯くEU関係者連中を批判しています。1914年*1での影響を予測できたか、と。
もちろん、昨今の経済学界隈で話題のトマ・ピケティも、EU側の対応を批判しています。


That 1914 Feeling
http://www.nytimes.com/2015/06/01/opinion/paul-krugman-that-1914-feeling.html?_r=0


Paul Krugman is urging Greeks to vote “no” in a referendum that could determine their country’s future in the European Union.
http://www.huffingtonpost.com/2015/06/29/krugman-greek-bailout_n_7687960.html


Joseph Stiglitz, Thomas Piketty and Other World-Renowned Economists Demand End to Greek Austerity
http://inthesetimes.com/article/18020/joseph-stiglitz-thomas-piketty-greece-syriza-austerity


しかし、どういうわけか日本では、ギリシャが緊縮策を受け入れないのが悪い、的な論調がほとんどな事に驚きます。
緊縮財政はダメだ、積極的財政(もしくは、リフレ政策)が必要だ、と主張している人たちまで、ギリシャよ緊縮策を呑め、みたい主張なので、どう整合性があるのか考えてしまいますね。
まあ、日本のメディアの多くは、日本においても緊縮財政を褒めそやし、積極的財政やリフレ政策をバラマキと見なしているわけですから、ある意味整合性はあるのでしょう。消費税増税の影響を「大したことはない」と過小評価していたことまで、今回の件とダブります。


さて、今回のギリシャ危機では、なぜ、EU側があれほど緊縮策を押しつけたがるのか、という点が問題です。当初の段階で呑ませた緊縮策がマイナスの効果しか生まなかったことは確実です。
若年層失業者が劇的に増加し、年金減額、付加価値税増税のために消費が激減、経済が萎縮しました。借金を返せ、と歳出削減を迫ったのに、結果的にさらに借金を返せない状況を造り出したのです。この状況でさらに歳出削減を迫ればさらに経済は萎縮、債務返済も遠のきます。
真っ当な債権者なら、債務返済が最も効果的に進むような返済計画と財政プランを立てるべきなのですが、EUのやっていることは意味不明なレベルになっています。
緊縮策を押しつければ、経済にも財政にもかえってマイナスであることは、幾つかの文献でも指摘されています。


経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策


とりわけ、“緊縮王”IMFは、世界のあちこちで債務国に緊縮策を押しつけて経済を破壊、デフォルトに追い込む、という事態を何度となくくり返しています。ロシアしかり、アルゼンチンしかり、タイしかり。逆に、緊縮策を拒否し、さっさと銀行を潰し、国営化して福利厚生維持に努めたアイスランドは、当初の業界アナリストらの予想とは対照的に経済回復に向かいました。
結果が明らかな緊縮策なのですが、なぜか世界の金融エリートらは緊縮、にこだわります。
これは、「小さな政府・大きな政府」に代表される新自由主義イデオロギーの産物なのか、それとも、極めて素朴で道徳的な、「借金は生活を切り詰めても返さなくてはいけない」のような思考によるものなのか。
おそらくは、それらを隠れ蓑とした合法的収奪のためでしょう。ギリシャ国内の公的資産の多くが売却されたそうですから。借金を背負った人の弱みに付け込んで資産を買い叩くのは悪徳金融業者の典型的な手口ではあります。
しかし、それって「ナニワ金融道」か「闇金ウシジマくん」ですよ。まるで。

ナニワ金融道 文庫 全10巻 完結セット (講談社漫画文庫)

ナニワ金融道 文庫 全10巻 完結セット (講談社漫画文庫)

闇金ウシジマくん 1 (ビッグコミックス)

闇金ウシジマくん 1 (ビッグコミックス)

ギリシャは昔からヨーロッパにいいように扱われてきました。
オスマントルコ統治下のギリシャを、「ヨーロッパ文明の発祥地を取り戻せ」と独立運動に駆り立てた歴史があります。実際にはオスマントルコに対する優位性を打ち立て、蚕食するための道具でしかなかったのですが。
また、二次大戦後は東西冷戦の最前線ということもあり、アメリカの強力な援助による庇護下にありました。アメリカは反共軍事独裁政権を支持したため、貧富の差は開き、政治の腐敗も進みました。

チャーリー・ウィルソンズ・ウォー 下 (3) (ハヤカワ文庫 NF 335)

チャーリー・ウィルソンズ・ウォー 下 (3) (ハヤカワ文庫 NF 335)

*2
Z [DVD]

Z [DVD]

*3

オナシス*4のような大富豪もいますが、多くのギリシャ国民は貧しいままにおかれました。
冷戦終結後も腐敗した政治そのままにユーロ加盟後も粉飾決裁を続けた結果が莫大な債務でしたが、本来、その責任を負うべき者たちはサッサと逃げ出しました。多くのギリシャ国民に債務を負わせるのは間違っています。
業界アナリストやEU閣僚らが主張するように、ギリシャがデフォルトしても影響が及ばない、なら、逆に過度の緊縮策を押しつけなくても大丈夫なはずです。それを押し付けようというのがEUの本心ならば、EUの側こそデフォルトの責任を負うべきでしょうね。では。

*1:サラエボでのオーストリア皇太子夫妻暗殺事件のことです

*2:反共政権ゆえにギリシャではCIAの活動が盛んでした。そのギリシャ系CIA工作員の「活躍」が描かれています

*3:ギリシャの反共政権下で野党候補が暗殺されますが、その事件は当然のように軍によって揉み消されようとします。しかし、「空気を読まない」検事によって事件は思わぬ方向へと転がりだします

*4:我々の年代にはお馴染だが、ケネディ大統領の未亡人、ジャクリーン夫人と再婚して話題となった