シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

原子力は蘇らず

昨今、気候変動対策やウクライナ情勢によるエネルギー安全保障問題で、再び原子力に寄せる期待が大きくなっている、というメディア記事が増えました。
すると、どうでしょう。再生可能エネルギーについてはネガティブな情報以外飛びつかない方々、自称冷静で中立的で科学的な立場の人々、原子力ゾンビが元気になってきております。ゾンビとゴキブリは早めの駆除が良いですから、このへんで、原子力の復活は無いよ、という話をいたします。

 

間に合わない

まず、大事なことですが、そもそも今から原子力を拡大させても気候変動対策やウクライナ情勢に端を発するエネルギー資源不足には到底間に合いません。
原発は計画から送電開始まで最低でも20年は掛かります。現在の規制状況に適応させた新設となれば、30年経っても完成に至るか判りません。なぜなら、安全基準に対応した新型原発、というものは日本では計画さえされていないからです。新たに設計し製造を始めるにしても、そもそも原発メーカー自体が消滅しかかっています。SMR(小型モジュール炉)については、この後、説明しますが、これも安全基準を満たせるのかすら明らかではないものです。

既存の原発の再稼動に関して言えば、これは最低限の安全基準さえ満たすことが出来ないために再稼動出来ないのであって、それを無理に急がせようとするなら「安全が最優先」というお題目が嘘である、ということになってしまいますね。まあ、実際に嘘だと思ってますが。
今から想定される需要に対応出来るのは、再生可能エネルギーの拡大だけです。

 

造るところがない

すでに、原発メーカーは世界的に成り立たなくなっています。日本の東芝や日立、三菱重工などがどういう状況かはご存知でしょう。もっといえば、その下請けではとうに原子力に見切りを付けた企業も多く存在します。部材調達等すらままなりません。原子力技術自体失われつつあります。それらを復活させるにしても、喫緊のエネルギー問題には対応できないのは、すでに述べた通りです。日本だけでなく、イギリス国内にはメーカーがありませんし、フランスのアレボも潰れかかっています。アメリカでも同じです。
原発復権に熱心なのは、アメリカ、イギリス、フランス、そして中国、ロシア、インドというわけで、つまりは、核兵器のための原子力技術維持なのです。そんなものに付き合う義理は無いと思うのですが。

 

新技術、に期待を持ちすぎ

また、勘違いが過ぎるのが、新型炉の話です。例えば、SMRなどが期待を寄せられて、日本政府だけでなく、企業からも投資対象となっているようです。さすがにポンコツの日本企業だけのことはあります。
というのも、SMRの方式は新しくもなんともない、極めて古い代物なのです。
もともと、原子力黎明期には様々な方式が試されました。熔融塩の利用や液体金属を冷媒にした高速炉も試作されています。
ですが、現在世界で利用されている原子炉の方式は、ほとんどが軽水炉です。簡単にいえば、他は軽水炉に遥かに及ばなかった、のです。
アメリカ海軍のリッコーバー提督は海軍艦艇の動力として原子力を強力に推進しました。特に潜水艦動力への搭載に力を入れ、開発を進め、結果として採用されたのが軽水炉だったのです。後の発電所にもこの時の研究開発の知見が生かされています。
ちなみに、リッコーバー提督は、その原子力偏愛ぶりによって、TVドラマ原潜シービュー号のネルソン提督のモデルとなりました。私の幼少期には、「宇宙大作戦*1」と並んで「原潜シービュー号海底科学作戦」という番組があり、原潜シービュー号が活躍する、という話でしたが、そこでの原子炉の扱いは、今見たら卒倒するほどの雑さ加減です。それでも、制御棒が抜けたら危険、等の描写はありました。

 


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閑話休題


つまり、軽水炉は、最も経済的で安全、な原子炉として普及が進んだのです。そして、初期には10万kW程度だった出力も、どんどん大型化して100万kWを超えるようになりました。
大型で高出力でないと、経済的に割に合わなくなったからです。それですら、現在では割には合わない。民間企業では成り立たなくなっているのです。
では、なぜ、SMRに期待が寄せられているのか?それが、「型式」にあります。原子炉は一品ものとして特注生産になるため、どうしてもコストが上がってしまう。それに対して、「製品」として「型式」を認めてもらってモジュール化(≒大量生産)する。そして、それぞれの「製品」の安全試験を免除してもらう。これが、SMRの低コスト化のロジックです。しかし、大量生産といっても、それほどの需要があるかは判りません。コストダウンに繋がるほどの生産規模を持てるかは疑問ですし、そうして作られた部材を各々の安全審査無しに原発に組み上げる、ことを許容出来るでしょうか?大量生産品は不確定な要素で不良が生じます。それを許容範囲に置くのが生産管理、品質管理です。原子力のような危険性のあるものまで、その基準を当て嵌めて良いか。私は到底許容できません。

 

人がいない

このへんは以前も述べました。
原子力工学に通じた人材も、すでに10年以上前から不足していますし、建設や運転、維持管理に携わる人も尽きています。新たに立ち上げるにも人材が不足しているので、まず、そこから手当てする必要があります。
それ以上に、人手不足の折、人が集まりますか?高額賃金を払えば良い?前にも述べた通り、原子力は、その労働環境ゆえに多重請負構造でないと維持できません。よって、末端に届く賃金はどうしても少なくなり、コストアップになるのです。また、その請負により働く人の身元も明らかではない。先日、新潟や島根で入場管理のような問題が持ち上がりましたが、多重請負で手配した人員が働く環境である以上、厳密なチェックは不可能なのです。テロリストだ!スリーパーセルだ!みたいなことをいう人なら、原発には反対した方が良いですよ。中からの破壊工作は、内部構造の複雑さも含めて、貴方が思っているより容易なのです。

 

安全保障上の脅威となる

上の話も含め、安全保障上の問題が多くあります。労働者の問題もありますが、攻撃対象になった場合、防ぐ方法はありません。
そして、自分も気づかなかったのですが、発電所外壁は厚く頑丈に造られており航空機の衝突にも耐えられる(そう)ですが、天井部はそうではない。格納容器の燃料交換用にクレーンが付けられており、頑強な天井を造ることはできなかった。
福島第一原発の水素爆発時の映像を見れば、天井部は極めて弱いことが見てとれます。また、使用済み核燃料格納プール等のことを考えれば、上部からの航空攻撃に脆弱です。
日本が突如攻められる!防衛力強化が必要だ!みたいな人は、原発に反対しないといけませんね。
例え、原発施設の防備を固めてもムダです。
送電線を破壊されても原発は停止させなくてはならない。ここは以前説明した通り。巨大電源である原子力の構造的欠陥というべきでしょう。


政府が責任を取らない

 

【解説】原発事故で国の責任認めず 最高裁の判断は

福島第一原子力発電所の事故で各地に避難した人などが、国と東京電力に損害賠償を求めた4件の集団訴訟で、最高裁判所は「実際の津波は想定より規模が大きく、仮に国が東京電力に必要な措置を命じていたとしても事故は避けられなかった可能性が高い」と判断し、国に責任はなかったとする判決を言い渡しました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220617/k10013676431000.html


この判決は、日本政府に原子力を扱う能力がない(責任を取れないのだから)ということを認めてしまったものです。
今後にあたっても、責任を取れない輩に重大ごとを預けることは出来ないでしょう。


というわけで、いかに「原子力復権」を印象付けようとも、実際には原子力の拡大など進めようがありません。上記の問題を一つ一つクリアしようとする間に、再生可能エネルギーは低コスト化が進み、拡大必至です。それを無理しても原子力に拘るような真似を行なえば、温暖化対策も中途半端となり、世界の産業構造変革に置いてきぼりを喰う事になるでしょうね。

まあ、以前に、

再生可能エネルギーに力を入れないと、世界的趨勢についていけなくなるよ
・(再生可能エネルギーで)優位性のある技術でも、競争力を失ってしまうよ

と忠告した通りになってしまったので、今回もそうなるでしょうけど。
さすが、世界に冠たる衰退国家ニッポンですね。
では。

*1:star trek の邦題

そこは「サブスク労働特区」でしょ

眼光紙背 マスク氏のリストラは大英断か


 米ツイッター最高経営責任者(CEO)に就任したイーロン・マスク氏の言動に注目が集まっている。従業員を大規模解雇で3分の1に削減した上に、残った従業員には週40時間以上の出社か、嫌なら退社を求めた。このマスク氏の言動について「英断だ。うらやましい」と思う人たちがいる。
 先週、スタートアップの経営者が集う交流会に参加したら「うちも解雇ができて、週に100時間働く環境がほしい」「会社立ち上げの時には寝食を忘れて働いたから、社員にもそれくらいの覚悟がほしい」といった声が相次いだ。
 ネット通販系の社長は「大量解雇も今より容易にできて、なおかつ労働時間の制約がない特区ができたら、そこの自治体に本社を移転する。税金も自治体に落ちるからウィンウィンになる」と持論を披露した。別の経営者は「大賛成。やり過ぎないと成長はおぼつかない」と返した。従業員の迅速な解雇とハードワークのススメは経営者の本音なのだろう。
 会は盛り上がり、特区の名前はどうするかに話は移った。「ブラック特区はイメージが悪すぎる」「労働無法特区も駄目だな」。なかなかいい案が浮かばなかった。そこに年配の経営者が「従業員を3分の1に減らしてもツイッターは運営できている。会社は水ぶくれ体質だっただけではないか」とポツリ。交流会はお開きとなり、ある社長は「英断でもないね」と会場を後にした。
日経産業新聞 2022.12.2) 

 なんか、全方位的にヒドイ話です。イーロン・マスクツイッター社買収後のゴタゴタ、従業員解雇どころか集団離職状態でシステム管理状態ボロボロ、ドナルド・トランプ以下ヘイトスピーチ垂れ流しアカウントの凍結解除と自身の陰謀論垂れ流し、それに伴うスポンサーの離反、などの状況が伝えられていますが、スタートアップの経営者とやらにはそんなことも見えていないようです。
 従業員をヒト扱いしないことを褒めそやしていますが、こんな「本音」を従業員に披露出来るんでしょうか?いくら隠しても「本音」は態度・体質に現れます。どう考えてもロクな企業とは思えません。少なくとも、ネット通販系のスタートアップ、とやらでは働かない方が良さそうです。
 むしろ、日本経済が低成長なのは充分な賃金がなく需要が喚起されないからで、再分配が重要だ、とは(本音はともあれ)やることなすことダメダメな岸田首相でも言っていることです。
まあ、こんな遅れた認識が日本のスタートアップ経営者、なら、日本の低成長も頷けるところです。

風呂なし物件、若者捉える シンプルライフ築く礎に


昭和の時代をほうふつさせる「風呂なし」賃貸物件が、令和の若者の間で再び脚光を浴びている。銭湯、シャワー付きスポーツジムなどの施設があり、不自由しない。物を持たないシンプルな暮らしや地域住民とのふれあいを求め、銭湯を好む人も多い。家賃が安いというメリットにとどまらない魅力が人気を呼んでいる。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB085HC0Y2A201C2000000/


職場がホワイトすぎて辞めたい 若手、成長できず失望


「職場がホワイトすぎて辞めたい」と仕事の「ゆるさ」に失望し、離職する若手社会人が増えている。長時間労働やハラスメントへの対策を講じる企業が増えたほか、新型コロナウイルス禍で若手に課される仕事の負荷が低下。転職も視野に入れる彼らには成長の機会が奪われていると感じられ、貴重な人材に「配慮」してきた企業との間で食い違いが起きている。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD2865W0Y2A121C2000000/


私なら、こんな”働かせホーダイ!”の特区は「(労働)サブスク」「帝愛」「ラーゲリ」「CSA」とか「竹中平蔵記念特区」など思い付きますが。大阪なら手を挙げそうで怖いですね。淡路島は実質、そんな感じになりつつあるようですが。
 さらに、従業員が3分の1に減らしても運営できてる、という認識、日本のメーカーの高品質・安全安心みたいな話が、単なる「神話」にすぎないことを如実に示していてステキです。
では。

アメリカとは今のうちに手を切るべき

実を言うとアメリカはもうだめです。
突然こんなこと言ってごめんね。
でも本当です。

中間選挙後にものすごくゲスい共和党の扇動が起こります。

それが終わりの合図です。
程なくトランプの「I'll be back!」が来るので気をつけて。
それがやんだら、少しだけ間をおいて終わりがきます。

 

ロシアのウクライナ侵攻という酷い話がずっと続いているわけですが、この先どうなるんでしょうね。長期戦になるにせよ、ロシア側をウクライナ国境外に撤退させる、では済みそうも無い感じで気分が暗くなります。正直なところ、プーチンウクライナ侵攻を行うとは思いませんでした。どうみても得なことにはならないから、さすがに武力行使はないだろうと思っておりました。実際、東欧・北欧、中央アジア諸国の反応を見てもマイナスの影響しかありません。しかし、独裁者というのは都合のよい情報しか受け取りませんし、(当人が)合理的と思う行動、というのはこうしたものなのかもしれません。

さて、ウクライナ侵攻に便乗する形で、日本の極右勢力が盛んに防衛力増強!を叫んでおります。もちろん、このへんは国粋主義的に振舞いつつも、アメリカの番犬的役割(三下ともいう)を進んで努める、という倒錯的な態度ではあるのですが。台湾問題なんちゃら、がそれを物語ってますね。
ニュースでも、二言目には「アメリカといっそう緊密に連携し~ 」みたいな感じで、どんだけ緊密になれば気が済むんだよ、何ならアメリカの一部にして貰えば?ぐらいにうっとうしい。
クソウヨ連中の自画自賛「スゴイ日本!」も、結局のところはアメリカに従属していることに対するアンビバレントな感情が呼び起こすものなのではないか、と思っています。
それくらいアメリカにべったりな日本ですが、私は今のうちにアメリカとは手を切るべきだろう、と思います。

現在、アメリカは猛烈なインフレとそれを抑制するための利上げが進む状況にあります。完全にスタグフレーションな日本よりマシとはいえますが、アメリカ国民がどう取るかは別の問題です。
おそらくは、今秋の中間選挙共和党は大勝し、下院を押さえることになるでしょう。
そうなると、現在でさえ上院でどうにもならないのに、下院まで押さえられたらバイデン政権はまったく身動きが取れなくなります。ヘタをすれば弾劾もありえます。弾劾の名目は怪しげなものでしょうが、共和党というかトランプ支持者にとっては、あまり中味はどうでもいい。弾劾による政権運営妨害自体が目的になるからです。
さらに各州では、マイノリティの権利制限が進むことになるでしょう。共和党の押さえる州では既に、女性の中絶権利が奪われたりしていますが、投票権利に対しても妨害が進んでいます。これは、人口だけでいえば共和党支持者、保守的白人層は少数だからですが、このような妨害行為に異論を唱えようにも、連邦最高裁自体が保守の牙城と化しているので、彼らは躊躇うことがありません。特に狙われるのがスイングステートでしょう。そうなると、24年の大統領選挙でトランプ復活、がほぼ確実です。その時点でアメリカ合衆国、は終わり。

神聖トランプ王国*1になるか、第二南北戦争(The 2nd Civil War)が始まるか、しかありません。
トランプ自身はもしかしたら、ホワイトハウスで執務を取らないかもしれませんね。フロリダは保守派の多い土地ですし、今の居住地が気に入っているようです。ワシントンDCに来れば抗議が活発になるのが目に見えていますから、フロリダに首都移転すらしかねません。
また、トランプはプーチンにシンパシーを感じているようですから、ウクライナ侵攻に対してアメリカ(神聖トランプ王国)が掌返しをする可能性は多分にあります。そうなったら、日本はどうします?
今までアメリカ(バイデン政権)に追従する形で進めてきたことを、トランプ政権になったらコロッと変えますか?番犬、三下としてはそれで構わないんでしょうけど、国際社会、から見たら信頼の置けない国家、となるでしょう。
それ以上に、神聖トランプ王国、だろうと、第二南北戦争になろうと、アメリカの衰退と国際的影響力、の低下は避けられないでしょうね。番犬、三下として振舞っても庇護を受けられなくなる可能性は高い。

そうなる前に、アメリカとは距離をおくべきではないでしょうか。
まあ、一番いいのは、今のうちにアメリカをUSAとCSA(≒神聖トランプ王国)に分離することですが。
では。

*1:これは、半分ギャグ、半分本気で云っています。大統領選に勝てば、前回の反省に立って閣僚を身内で固めるでしょう。つまり、「王国化」することになります。そして、支持者はそれすら肯定し「神聖化」して受け入れるでしょう。

安倍晋三は「自業自得」

安倍晋三の暗殺事件ですが、とても残念です。ヤツは殺されるべきではなく、キッチリと、しでかした事をゲロってからムショに入って、自身の罪を反省し償うべきでした。
当初、メディアが選挙妨害だ、民主主義の危機だ、みたいな的外れなことを云ってましたが、安倍を司法の場で裁くことが出来ず、殺されてしまったことが民主主義の危機といえるでしょう。


さて、安倍に限らず、統一協会自民党を主とする政治家の関係が炙り出されてきましたが、安倍が死ぬまで放っておかれた、ということが問題なわけです。


容疑者が母親の問題を解決するに当たって、本来であれば警察を始めとする行政が力になれたはずです。しかし、それが機能しなかった。代々の自民党政権がズブズブだったからですね。


安倍政権が問題が起こるたびに、権力を濫用して誤魔化したことは周知の事実です。
モリカケサクラアベノマスク…。


公正で正当な手続きによってものごとが解決されないとすれば、被害者が真っ当ではない手段に訴えたとして、それを一概に責められるものでしょうか。その場合、暴力的手段に訴えるな、とは、泣き寝入りしろ、ということに他ならないからです。


いじめ問題でもありますよね。言葉や扱い方など非物理的手段で散々いじめて、いじめ被害を訴えても教師も見ないふりをする。その挙句に被害者が暴力に及んだら、「どんな理由があろうと、暴力はいけない!」などとしたり顔で語る輩をどう思うか?その前にいじめ問題にキチンと目を向けるべきであった、というのが、妥当な意見でしょう。


民主主義社会においては、暴力的な手段は問題解決方法としては認められていない、それは、権力を持つ側が公正で透明な手続きで対応し、説明責任を持っているからです。それを蔑ろにするようであれば、そもそも民主主義とは云えないのです。
自民党政権専制的な振舞いは看過しつつ、容疑者の行動を非難する、それは片手落ちというものでしょう。
安倍晋三の暗殺とは、自ら破壊した民主主義、そのツケを自身の命で払うことになったということです。その意味では「自業自得」と云えるでしょう。
では。

それでも日本人は「足して2で割る」を選んだ

先日の衆議院選挙に関して、興味深いコラムを読みました。

衆院選>それでも日本人は新自由主義を選んだ(現代ニホン主義の精神史的状況 藤崎剛人)
https://www.newsweekjapan.jp/fujisaki/2021/11/post-24.php

北守さんこと藤崎剛人氏が書かれたものです。選挙の結果は維新・国民民主の勝利であり、人々が「新自由主義」を選んだ、という話でした。話自体に異論は無かったのですが、果たして人々は「新自由主義」を選んだ、のだろうか。そもそも、維新を新自由主義政党と認識していたのだろうか、と感想を持ちました。なぜなら最近、こんなことを体験したからです。

 コロナ禍もなりを潜め始め、落ち着いてきたかなという頃、少人数ですが一席設ける機会がありました。久々の宴席ということもあり話題も尽きなかったのですが、その中で、知人の教員が歴史談義を行なっている、という話が出たのです。そこで一人が「それって偏ってない?」と持ち出しました。話した当人は「特に偏っていないと思うよ。バランスは取れていると思う」と述べたのです。
 私は驚きました。「偏ってない?」と尋ねた人も「偏ってない」と返した人も、どちらも別に歴史に詳しい人物ではなかったからです。どうやって、偏っている、偏っていない、というのを判断するのだろう。そもそも、ここにおける偏っている、偏っていない、というのは何を指すのか、“偏っていた”らどうだというのか。まったく判らないことだらけでした。
私にとって、歴史を含め、学問と云うのは正しいかどうか、そしてどのようなプロセスを経たものなのか、ということには興味がありますが、偏っている、偏っていない、というのは意味が判りません。正しいかどうか、は実証作業や文献精読によって知ることが出来ますが、偏り、はそんな簡単な事では無いのです。
なぜなら、偏っている、偏っていない、というのは、その判断基準が明確でないと判断出来ません。判断基準を明確にするには、その全貌について広範囲な知識と判断力が必要で、それだけの知識も判断力も無い者が偏っている、偏っていない、と決めるのは随分大胆な真似をするものだな、と感じたわけです。

私もまあまあの期間、ここに駄文を書き連ねていますが、正しいかどうかについては判断、断定したことがありますが、偏っている、偏っていないを述べたことはありません。
 以前、エントリーにもしましたが、偏っている、偏っていないを判断する、というのは本当は非常に難しいことなのです。

 

東浩紀の終焉
https://dr-seton.hatenablog.com/entry/20090113/1231856152

 

 つまり、偏っていないポジション=「中庸」を尊ぶつもりなのでしょうが、大概は単なるどっちつかずでしかなく、そして、中庸に相応しいほど深く掘り下げたものでもない。せいぜい「足して2で割る」に過ぎず、中庸とは程遠いのです。ただ、過去エントリーで書いたように、日本の政治家は自分は中庸にいる、と“バランスの取れた(つもりの)”ポジションに拘泥します。同様に“普通の日本人”も自分を真ん中のポジションだと思いたがる。そう、思いたがっているだけ。

 右でも左でもない日本が好きなだけの普通の日本人、というプロフィールに見覚えがありませんか?もしくは、アナタがそう紹介しているか。でも、そんなプロフィールの人は、大半が歴史修正主義権威主義的でとりわけ社会的弱者の人権を蔑ろにする与党支持者だったりします。自分が“中道”“普通”*1と考えている人は多そうですが、自分がどうやってそう判断しているのか、少しは省みても良いのではないでしょうか。

 さて、自分が“中道”“普通”と考える人々はその行動誘導が容易です。選択肢を3つ用意しておけば、真ん中を選びたがるからです。

 つまり、“中道”“普通”とは、両端を設定することで生まれるわけで、かなり恣意的に誘導できるのです。

 こうして、今回の衆院選を振り返ると、維新(または国民民主)は一貫して、真ん中として見せ掛けようとしていたことが判ります。自民を右(正確に云えば保守的に)に、立憲と共産をくっつけて立憲共産と呼ぶことで左に位置づけ、維新・国民はそれらと“一線を画す”存在としてアピールしていました。これは、維新・国民自身だけでなく、メディアもそういう方向に誘導しています。
「立憲共産党」というのは選挙期間に何度となく聞かれたフレーズですが、一体化して扱うことで左端に位置づけよう、ということだったのでしょう。

 

衆院選麻生太郎氏が痛烈「あちらは立憲共産党」応援演説で野党共闘批判
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202110220001103.html

 

そして、維新は大躍進。もちろん関西地区では全国状況とは違いますが、選択した有権者が「新自由主義」を選んだ、というより、“真ん中を選んだ”“足して2で割った”つもりなのだと思います。政党の政策や実績、それらを勘案して検討したら、果たしてこのような結果が出たかどうか。何よりポジションを気にする日本社会らしい結果ともいえます。

 

維新と国民、第三極の存在感 立民、共産に「オールド野党」攻撃 立民は党再建急務
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/830118/

 

ただ、この傾向は日本社会特有とは云えないかもしれません。いまやその正体が明らかであるトランプ前大統領ですが、彼が躍進した2016年の大統領選時には、民主党でも共和党でもない*2“第三の候補”的扱いでした。そして、政権の座に就いてからはご存知の通り。
 偏らない、真ん中、を欲するのは世界共通かもしれません。皆、自分が真ん中、普通、バランスの取れた、存在だと思いこもうとするし、そうした人(と思われる人)を支持する。付和雷同意識の強い日本では顕著なだけかもしれないですね。

 中道を目指すのは悪いことではありません。でも、もしそうしたいのなら手間を惜しまず情報収集し学んで、“偏り”を判断できるだけの蓄積を得てからにしましょう。
 まあ、私はそんな能力も知識も無いので、事実を述べているかどうかとビジョンで判断しますが。では。

*1:そもそも、普通というのが私には判らない。何をどう「普通」と称するのか?そしてどうやって自分が「普通」であると判断するのか?

*2:トランプは共和党から出馬しているが主流派ではなかった

かみかわ陽子を落選させなくてはならないシンプルな理由 静岡1区の皆さまへ

昨日、衆議院議員選が公示となりました。コロナ禍での短期戦となりますが、あなたの命を左右する大事な選挙となるでしょう。
ここで静岡市民、静岡1区の有権者へ呼び掛けたいことがあります。

それは、現職のかみかわ陽子(上川陽子)を落選させてほしい、ということです。

 

自由民主党 衆議院議員 かみかわ陽子オフィシャルサイト
http://www.kamikawayoko.net/

 

上川陽子は、先日まで菅政権の法務大臣でした*1。そして、法務省管轄の入国管理局で起きたおぞましい人権侵害の数々に対して責任を負う立場でした。

特にスリランカ女性、ウィシュマ さんの死亡事件*2に対して極めて酷い態度でした。ウィシュマさんの事件は、支援者の積極的な活動があって、その一部が表に出てきましたが、全貌解明にはほど遠いものです。事件の詳細に関しては、以下のサイトをご覧ください。


名古屋入管死亡事件弁護団
名古屋入管で2021年3月6日に発生したスリランカ人女性の死亡事件の弁護団です
https://wishmalawyers.wordpress.com/


上川陽子の行動は、事件の全貌解明、入管の改善、職員の処分、遺族への対応、どれを取っても酷いものです。結局、何一つ積極的対応をすることなく、菅内閣の終焉と共に去りました。遺族が情報公開(収監時のビデオ等)を求めている最中にも関わらず、そして、世界中から厳しい目が日本の入管制度に注がれているにも関わらず、辞任時の法務省へ向けたコメントはこんなものでした。


令和3年10月1日 法務大臣 上川陽子 法務省職員向けメッセージ
http://www.kamikawayoko.net/archives/4606

 

○ 法務大臣上川陽子です。
皆さんも既に御承知のとおり、来週、新内閣が発足する見込みとなりました。
本日は、一つの節目として、私から皆さんに直接メッセージをお伝えする機会をいただくこととしました。

○ 私は、昨年(令和2年)9月に、図らずも3度目の法務大臣職を拝命し、再び皆さんと一緒に仕事をする機会を得ました。
  この1年間は、最初に法務大臣職を拝命した平成26年以来、7年間にわたる法務行政への関わりの集大成とする覚悟を持って、全力で職務に取り組んできました。

〔「法の支配」と「誰一人取り残さない」社会の実現の意義〕
○ 御存知のとおり、私は、過去2度の法務大臣在任時から一貫して、

●法の支配の貫徹された社会の実現
と、SDGs(持続可能な開発目標)に掲げられた

●「誰一人取り残さない」社会の実現
を大きな目標として掲げてきました。

○ 法務省の仕事は、国民一人一人が、生き生きと活躍する基盤としての安全・安心を、法の支配を貫徹することにより実現していくという重要な役割を担っています。

○ 法務行政に携わる職員の皆さん一人一人にも、それぞれの業務に取り組むに当たり、この揺るぎない大きな目標を、常に念頭に置き、共有していただきたいと考えてきました。

〔一筆書きキャラバン〕
○ 法務省では、約5万5000人の職員が、多様な地域の各官署・施設等で、様々な業務に従事しています。
 私は、以前の法務大臣在任時の経験からも、各地の法務行政の現場は、国民の生命・暮らし、さらには地域・国家の安全・安心を守る、いわば「砦」であると実感してきました。
  本省だけでなく、法務行政の最前線で働く職員の皆さんにもこうした考え方を共有していただき、オール法務省として、一つ一つの業務・課題に取り組んでいただきたい、そうした思いから、昨年来、田所副大臣、小野田政務官の助けを得て、各法務省官署・施設等の職員と率直に意見交換をする「一筆書きキャラバン」の取組を行ってきました。

○ この取組を通じて、私は、最前線で働く職員の皆さんが、様々な困難を抱える方々の「声なき声」を汲み上げ、しっかりと寄り添っていくという姿勢で一つ一つの業務に取り組んでいることを改めて実感し、感銘を受けました。

〔法務行政の取組〕
○ その上で、様々に変化し、移り変わる時代の中にあっては、法務行政の在り方についても、現場に身を置く職員の一人一人が、見直すべきところがないか、常に自らに問いかけ、イノベーションを生み出していかなければなりません。
  時には、組織・意識の大きな改革・変革が必要となることもあるでしょう。

○ 法務行政が国民の皆さまの御理解、御協力の上に成り立っていることを強く意識し、丁寧な広報・コミュニケーションに努めるとともに、

●関係機関、地域、民間の方々などのマルチステークホルダーと連携して多層的な取組を促進する視点
●将来を担う若者や子どもなど、施策の届け先となる様々な方々の立場に立った課題解決の視点
●中・長期的なビジョンを意識した政策立案の視点
●PDCAサイクルを回して不断の改善を図る視点

を忘れることなく、一つ一つの課題に取り組んでいくことが重要です。

〔結び〕
○ 法務省職員の皆さんには、何事にも真摯に向き合う誠実さが備わっています。
 これからも、その誠実さを失うことなく、常に時代の変化を見極め、また、幅広い視点を持ちつつ、約5万5000人の職員がワンチームとなって職務に精励されることで、一層の飛躍を遂げられると確信しています。
○ 結びに、この一年間、皆さまと共に仕事をし、皆様と共に結果を残してきたことを誇りに思い、改めて感謝を申し上げます。
 皆さん、ありがとう!
 そして、これからも共に前を向いて歩んでまいりましょう!

 

ウィシュマさんや入管収容施設の収容者のことには一言も触れていません。あまりの人権感覚の無さに驚愕します。おそらくは、ウィシュマさんを始めとする収監された「外国人」のことなどどうでもいいのでしょう。それを堂々と自身のHPに載せる感覚にも呆れます。

もし、こんな人権感覚の法務大臣経験者が、また当選するなら、それは静岡市有権者外国人差別者である、と示すことになるのです。

静岡市にも他地域と同じく、外国人労働者(留学生や技能実習生ら)が多く住んでいます。外国人の命を平気で奪い、そのことを気にすら掛けない選良とその支持者をどう見るかは明らかではないでしょうか。多様性だ、共生社会だ、というのであれば、せめて上川陽子を落選させるくらいはしないと、静岡市民は外国人差別者として世界から扱われることになるのです。

それとも、在留外国人がどう思おうが構いませんか?

ですが、静岡市では毎年大道芸ワールドカップが開催され、静岡市を象徴するイベントとなっています。*3
海外からも多くの大道芸人が参加しますし、大勢の外国人旅行客も訪れます。彼らも静岡を「差別者の住む地方都市」と見なすでしょう。到底望ましい状況にならないことは確実です。
しかし、上川陽子を落とせれば、静岡市民は外国人差別にノーという態度を示すことが出来るのです。

私は静岡市民ではありませんので、直接投票で意思を示すことはできません。このブログを読んでくれている人がどの程度いるか判りませんが、あなたが静岡1区の住民であるなら考えて行動してください。そして、静岡市民に知り合いがいたら、上川陽子には決して投票しないよう促してください。お願いたします。
では。

*1:安倍政権でも努めている

*2:これを「死亡」というのは躊躇いがある。実際には「殺人」事件といってよい。掲載サイト参考のこと

*3:昨年と今年はコロナ禍で中止

地には平和を

カッコに入る言葉を選択しなさい(初級編)

 

( A )年、( B )は( C )を懸念し、( D )へ干渉し傀儡政権を樹立した。これに反発した( D )国民は( E )等で抵抗した。この抵抗運動を抑え込むため各地域に戦闘部隊を派遣したが、村落住民殺害のような残虐行為が一層の住民反発を生み、( B )と傀儡政権の支配は点と線に留まり、国内の大半は抵抗勢力側が支配を強めることになった。さらに抵抗勢力は攻勢を強め、長期の干渉にも関わらず一向に状況は改善しないため、( B )は( F )によって撤退を決めた。その結果、( G )年、傀儡政権の首都( H )が陥落、国外退避を望む人々の混乱が拡がった。この後、新政権によって旧政権関係者の粛清が行われ、多くの人々が職や住まいを遂われたり、処刑されたりした。( B )の帰還兵も現地での経験によるPTSDに長く苦しむこととなった。

 

A:1.1937 2.1963 3.1978 4.1979 5.2001 
B:1.日本 2.アメリカ合衆国 3.ソビエト連邦 4.南アフリカ共和国 
C:1.抗日活動 2.共産化 3.イスラム勢力の増大 4.テロ組織の活動 5.反アパルトヘイト 
D:1.中国 2.ベトナム 3.アフガニスタン 4.ニカラグア 5.アンゴラ 
E:1.八路軍 2.ベトナム解放戦線 3.ムジャヒディン 4.ターリバーン 5.サンディニスタ民族解放戦線 6.アンゴラ解放戦線 
F:1.日本敗北 2.ニクソン大統領 3.ゴルバチョフ書記長 4.カーター大統領 5.トランプ大統領 6.経済制裁
G:1.1945 2.1975 3.1980 4.1989 5.2021
H:1.南京 2.サイゴン 3.マナグア 4.ルアンダ 5.カブール

 

だいぶザックリと記したので正確とは云いがたいですが、これらの紛争は大体こんな構造のものです。だから多少ニュアンスは違うにしても、この選択肢以外にはまる事例はたくさんあります。人は学ばないな、という話でした。
では。