シートン、反省する
昨日のエントリーですが、若干反省しております。というのも、以下の文を読んだから。昨日は見落としたみたいです。
よもぎねこ
名無しさん 私は女性です。 それから子供の時にイジメを受けた事があります。 貴方の言う「シカト」のイジメです。 しかしクラスの他の人が私と話しをしたくないのは、その人達の自由だと思っていました。
もし先生や貴方達左翼の大好きな国家権力で、同級生に「よもぎねこと毎日格自5分づつ話をしろ」と強制しても、友情が生まれるわけでもありません。 話をしてもらいたかったら、話をしてくれるように努力するしかないのです。
http://d.hatena.ne.jp/vanacoral/20080227#c1204158804
よもぎねこさんは、イジメを受けていたのですね。その行き着いた結論が
「もし先生や貴方達左翼の大好きな国家権力で、同級生に「よもぎねこと毎日格自5分づつ話をしろ」と強制しても、友情が生まれるわけでもありません。 話をしてもらいたかったら、話をしてくれるように努力するしかないのです。」。
ここでも何回か言及した「自己責任」の話です。差別にしろ、イジメにしろ、貧困にしろ、その責任を「自分が悪いんだ」と被ってしまうことは良くある話です。一番、気の滅入る話です。
とりわけ、その状況を脱した人には「自己責任論」を唱える傾向が強いのは、ご存じの通り。
貧困からであれば、ネオリベに行き着きます。サッチャーとか、コンドリーザ・ライスとか、大立者と呼ばれる人にはその傾向が強いですよね。そんなレベルで無くても、自分の母親でも「苦しくたって頑張ればなんとかなる。生活保護なんて単なる甘えだ。」とよく言っています。
幼児虐待も被虐待者に「自分が悪いんだ」と自己否定させ、虐待が連鎖する状況を生みます。
同じ構図は、実は彼女が前のエントリーで述べた部分にも触れてきます。
・黒人のkkk、ユダヤ人のナチ
(略)
チョーセン人の右翼!????
そ、そんなモノ、この世にいるの?????
韓国人の右翼なんて、 黒人のKKK(ク・クラックス・クラン)、ユダヤ人のナチと同じでしょう????
http://yomogineko.iza.ne.jp/blog/entry/495337/
戦前、大日本帝国においては朝鮮人も“日本人”でした。これは、朝鮮半島が日本統治下にあったからですが、建前上は同じ国民であっても、実質は“二等国民”扱いであり、ハッキリとした差別状況がありました。その差別状況に反発する者も多くいたわけですが、「自分たち(の出自)が悪いんだ」と考え、日本人以上に日本人らしくなることで差別から逃れようとした者もいたのです。つまり、建前としての“天皇の赤子”として徹底的に振る舞う事によって、です。たとえば、あるものは軍人としての職務を真っ当しようとする事で、あるものは日本の国技において第一人者に上り詰めようとすることで。前者が朴正煕、後者が力道山です。朴はわかりませんが、力道山は日本のヒーローとして振る舞う事に、誇りとともに葛藤を感じていたようです。同じように、国粋主義においても日本人以上にラジカルな活動家が朝鮮半島出身者にほ多かったのです*1。
もちろん、単純に右翼思想に傾倒していただけでは無いことは確かです。日本の戦後右翼は、とりわけ自民党−アメリカとの反共ラインの尖兵として活動していました。それは同時に暗黒社会との繋がりをも意味していたわけで、犯罪組織としての顔も持ち合わせていたのです。
そして、忘れてならないのは、世界的に見ても犯罪組織というのは被差別状態に置かれたマイノリティーによるものが多い、ということです。マフィアはシチリアの犯罪組織であるのと同時に、イタリア独立運動の担い手でもありました。アメリカにおいては、イタリア移民の被差別状態を利用して広まっています。現在公開中の「アメリカン・ギャングスター」も、新興犯罪組織の担い手がアフリカ系であるところに注目点があります。
被差別状態のものが、差別者の論理にどっぷりと染まって別のものに差別者として振る舞う事も珍しくありません。
イングランドによる侵攻を受け支配下におかれたスコットランドの人々は、大英帝国の植民地獲得や帝国主義の尖兵として無慈悲に他国民に暴虐を働きました。(スコットランド)高地連隊といえば、大英帝国の植民地支配の代名詞みたいなものです。同じく大英帝国に強く抵抗したネパール人は、グルカ兵として名を馳せました。
アメリカの警察官にはスコットランドやアイルランド系が多いですが、彼らはイギリスにおいては差別の対象でした。アメリカ各地の警官が、アフリカ系やアジア系、ヒスパニックに対して差別的な事はよく知られています。
差別は虐待と同じく連鎖するのです。そして、より弱いものが被害を被る。
一番良い例は、あるオーストリア人のエピソードかもしれません。
そのオーストリア人はドイツへ移り住んだのですが、彼の期待する形での成功を収める事は出来ませんでした。そして、ドイツにおいて劣等感に苛まれた彼は、志願して戦争に加わり勇敢にドイツのために戦います。戦争に負けドイツ帝国が崩壊すると、大ドイツ主義を体現する者として政治家を志すのです。
オーストリア人の彼が、ドイツの政治家になり、母国をも併合し、大ドイツ帝国建設に突き進むグロテスクさ。彼、が誰かはもうお判りですよね。
国粋主義はむしろマイノリティーに強く影響を与えるのかもしれません。被差別や貧困からの脱却方法として。
でも、それは結局破滅を生むだけです。正しくもない。
差別された側が悪いなんてことはない。
虐待された方が悪いなんてことはない。
いじめられた方が悪いなんてことはない。何遍だって繰り返します。
闘うべきは、怒りをぶつけるべきは、差別する側であり、虐待する側であり、いじめる側に対してです。逆じゃありません。
よもぎねこさんに対する罵詈雑言は全て撤回し、謝罪します。申し訳ありませんでした。
でも、差別権、については取り消して欲しい。差別についてはもっと考えるべきです。
*1:同じく、沖縄においても皇国思想は徹底され、実際広く行き渡っていた