シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

自滅する地方 郊外化問題は郊外の問題ではない

さて、地方衰退とその処方箋?について取り上げると、

welldefined 21世紀のポルポトは郊外民を中心街に下放する

みたいな意見が出てきます。つまり、強制力を伴った「中心市街地への移住推進」と捉えられているわけですね。まるでポルポトみたいだと。
が、自分が述べたいのはそんな事ではありません。もっと切実な事態への対応です。
ちょっと以下の写真を見て頂きましょうか。写真が巧くありませんが、道路拡張を撮影したものです。

場所は焼津市藤枝市の市境付近。県道224号線、通称「大富藤枝線」です。道両側に広い歩道のついた二車線道路へ拡張しているところです。一般にはこうした道路事業は、「地域住民に喜ばれる事業」として批判されていません。高速道路のような「ムダ事業」とは違う、という事ですね。ですが、この「大富藤枝線」の先、大富、というところは田園風景の拡がる地域なのですよ。で、以下のような工事も行われています。

224号線の拡張だけではなく、そこへ交差する形でやはり県道が新設・拡張されているのです。

すると、下の写真にある「食事処」や、美しい生け垣の旧家も立ち退く事になります。


田も畑もつぶされ、そのうちに「マクドナルト」や「洋服の青山」、「ガスト」に「すき家」、「餃子の王将」「ミニストップ」「TSUTAYA」「UNIQLO」「ウィンダーランド」「カインズホーム」が進出しては潰れ、とどめに「イオンモール」でも出店することになるでしょう。
道路を拡張するために、ファスト風土化を進めるために、土地や家を持つ人々は立ち退きに応じるよう迫られているわけです。
それだけじゃありません。
以下の写真をご覧ください。これは、藤枝市の水守という地域の交差点風景です。

左に「すき家」、右には「セブン・イレブン」、写真には写ってませんが、手前側には「バーミヤン」と「くら寿司」があります。写真奥には「カーマホームセンター」と「しずてつストア」。何が凄いかって云うと、この写真の右手側には、藤枝市の古くからの商店街、下伝馬商店街、白子商店街、上伝馬商店街(さらに駅前商店街へ続く)があるのですが、この水守地域の道路拡張を含む区画整理事業によって商店街が壊滅的ダメージを受けたからです。この話は以前載せました。


コンパクトシティー
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20070116/1168936602


・道路を広げてはいけない 自滅する地方都市
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20070626/1182849631


焼津市でも駅前を含む商店街は自治体の区画整理事業や再開発事業によって壊滅させられたのですが、藤枝でも(そして旧岡部町でも島田市でも)壊滅させられているわけです。
もう少し、水守地域を見てみましょう。この地域は田園風景が拡がるだけではなく、旧東海道筋でありました。下の二つの写真の上側がかつて街道筋で撮った写真です。


並木が写ってますね。で、下側が現在の様子です。なんと、歴史的遺構である「旧東海道」を潰しているわけです。道筋を変えるだけではなく、拡張も行ってます。下の写真をどうぞ。一番下が古い道です。



旧街道筋は道幅が狭く、くねっているために車通りが少なめでした。おかげで街道両脇の住民は“道を介して”コミュニティを作っていたわけですが、現在行われている“自動車が通りやすくなる”拡張工事が済めば、コミュニティは自然消滅するでしょう。この地域の人々は、道路拡張にも区画整理事業にも長年反対してきました。ですが、結局は行政に押し切られる事になるのです。事は「静岡空港建設」と同じです。


建設是非 地元思い交錯【それぞれの離陸 静岡空港開港】(asahi.com mytown)

誘致合戦の末、87年、島田市榛原町(現・牧之原市)に空港建設が決まった。約550人の地権者をはじめ、地元住民には降ってわいたような話だった。

 「農地をとられる」。テレビで見た成田闘争の光景が大関さんの頭をよぎった。地権者会会長として「反対」を掲げた。相談なしに決められた政治と行政に対する不信は強く、地権者ほぼ全員が用地買収に応じなかった。

 だが、建設計画が進む中、「茶畑の後継者がいない。この際売ろう」という声があがった。県が補償を提示し始めたころには、しだいに買収に気持ちは傾いた。

http://mytown.asahi.com/shizuoka/news.php?k_id=23000200905250001


中心市街地への再集中はポルポト、ですって?何を言ってるんでしょうね。
いいですか?今起きている事。全国で行われている「郊外化」こそが“ポルポト”なんです。地域住民の生活を奪い、多額の予算を注ぎ込み、ファスト風土化を進め、街から人を流出させる。
私が挙げた事例などささいなものでしかない。静岡市でも浜松市でもどこでも行われているのを見てきました。現在でも、いえ現在は“景気回復”と銘打って、これらの事業が「積極的に」進められているわけです。


ですから、自分が言いたいのは都市再生の処方箋「コンパクトシティ」などではありません。そんな事は後でも良い。皆に解決策があるなら、その時に改めて纏めていけばいいのです。そんなことより、今、現在進行している郊外化、をとりあえず止めろ。
これが何より言いたいことなのですよ。


ひとまず「道路拡張」も「道路延伸」も「道路新設」も「区画整理事業」も「市街地活性化事業」も「止める」事。
それから、我々の社会が直面している問題の解決策について話し合ったらいいのです。


もちろん、自分は「コンパクトシティ」が処方箋だと考えていますよ。それはなぜか、といえば「連立方程式」の「解」だから、です。次はその点について説明していきます。