シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

クサレ左翼、通販生活を読む

通販生活の2013年春号の「沖縄は、日本から独立した方が幸せではないのか」が批判を呼んでいるようです。たしかに、沖縄に負担を押しつけている、という実態を注視せず「独立した方がいいよ」みたいな意見が批判されるのは当然です。
ですが、この特集にも見るべきところがありました。


琉球自治共和国連邦独立宣言」を提唱する松島泰勝龍谷大学教授は、沖縄に米軍基地が押しつけられている状況は差別そのもの、と厳しく指摘します。そして、その差別の構図を理解してもらうために、国連の人権委員会や人種差別撤廃委員会に働きかけ、脱植民地化の正当性を訴えてきています。その結果、国連人種差別撤廃委員会は2010年に、米軍基地の押しつけは人種差別である、として、日本政府に沖縄*1と協議するよう勧告を出しています。皆さん、ご存じでしたか?


通販生活に載せられている勧告文を引用いたします。


「(前略)沖縄の独自性について当然払うべき認識に関する締約国(日本政府のこと)の態度を遺憾に思うと共に、沖縄の人々が被っている根強い差別に懸念を表明する。委員会はさらに、沖縄への軍事基地の不釣り合いな集中が、住民の経済的・社会的・文化的な権利の享受に否定的な影響を与えているという、現代的形態の人種主義に関する特別報告者の分析をここで繰り返す。委員会は締約国に対し、沖縄の人びとの被っている差別を監視し、彼らの権利を推進し適切な保護措置・保護政策を確立することを目的に、沖縄の人々の代表と幅広い協議を行うよう奨励する。(中略)委員会は締約国に対し、義務教育の中で、アイヌ語琉球語を用いた教育、そして両言語についての教育を支援するよう奨励する。」
通販生活2013年春号 より引用 原文は『琉球独立への道』松島泰勝著)


沖縄に米軍基地を置き、それを甘受せよ、と迫る事が明確に差別だ、と指摘され、改善するよう求められているわけです。


大橋巨泉氏らの言葉にも重要な指摘があります。

僕は、その頃*2司会をしていたテレビ番組で「本土並みなんて欺瞞だ」と言ったんです。「本土並みなら、閣僚一人一人の居住地に、沖縄の米軍基地を一つずつ移転してみろ」と。そうしたら「売国奴」呼ばわりされて、10日間くらい僕に警官の護衛がつきました。でも、本土に比較して過重な基地負担を沖縄に強いたことは明らかな事実だし、核持ち込みの密約があったことも後にバレた。

たとえ机上の空論だと批判されようが、僕はこれからも「沖縄の独立」を言い続けます。本土の人間に「オレ達はなんて恥知らずで、情けない人間なんだ」と思ってほしいからです。


伊勢崎賢二氏

でも、沖縄の実態を知ると、自分達*3が今住んでいる東京との「意識の格差」に驚くのです。米軍が駐留することで起こる問題を知り尽くし、沖縄への基地負担の歴史を事前学習している彼らは、同じ日本人なのに「仕方ない」と心を閉ざす本土側の人間の感覚を、明確に「差別」と捉えます。

本土側の意識を覚醒させる意味からも、沖縄の独立論は大いに盛り上げるべきです。


沖縄の米軍基地の問題は、沖縄の問題ではなく、沖縄に負担を押しつけている本土側、の問題です。それを直視しない「独立の唆し」は批判されて当然でしょう。でも、寄稿者は誰もが「日本側」の問題であり、それを直視し改善しないのは「差別」である、と厳しく指摘しています。


もともと、通販生活はその読者のほとんどが「本土」の人間です。「独立のススメ」など書いても、それは実際には沖縄の人々に向けての言葉では無いでしょう。「独立宣言」でも突き付けられなくては問題に気づかない「鈍感」な本土人に向けての言葉であろう、と思います。それも沖縄の人々に批判される点ではありましょうが、実際に本土側の意識は、このレベルにさえなっていないのです。

であれば、本土側の人間にとって目を通す価値はあると思います。

琉球独立への道―植民地主義に抗う琉球ナショナリズム

琉球独立への道―植民地主義に抗う琉球ナショナリズム

*1:松島氏の言葉では、琉球人と書かれている

*2:沖縄の「本土」返還時

*3:東京外国語大学の伊勢崎氏のゼミ受講生